債権譲渡と弁済・相殺
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
根拠は民法 466 条(債権の譲渡性)、466 条の 5、467 条(対抗要件)、468 条(抗弁)、
473 条(弁済)、474 条(第三者の弁済)、478 条(受領権者としての外観を有する者への弁済)、
484 条(弁済の場所)、494 条(供託)、499 条・501 条(弁済による代位)、
505 条(相殺)、508 条、509 条。2026-08-01 に e-Gov の条文原文と突合済み。
0. どういう制度か
債権も財産なので売り買いできる。ただし債務者からすれば、
知らない間に払う相手が変わるのは危ない。だから対抗要件が置かれている。
対抗要件は「誰に対して主張したいか」で 2 段階になっている。
| 誰に主張するか | 必要なもの |
|---|---|
| 債務者に | 譲渡人からの通知、または債務者の承諾 |
| 債務者以外の第三者(二重譲受人など)に | 確定日付のある証書による通知・承諾 |
二重譲渡になったときは、確定日付のある通知が債務者に先に到達したほうが勝つ
(確定日付の日付の先後ではない)。
引っかけの分かれ目は次の 3 つ。
- 通知は譲渡人がする(譲受人が勝手にしても効力がない)
- 譲渡制限の意思表示があっても、譲渡そのものは有効
- 相殺は、受働債権の弁済期が来ていなくてもできる(自働債権の弁済期は必要)
1. 債権譲渡
根拠: 民法 466 条 1 項〜3 項、466 条の 5、467 条 1 項・2 項、468 条 1 項
譲渡を自由にしたのは、債権を資金調達に使えるようにするためである。
そのぶん債務者の保護は「誰に払えばよいか分かること」に絞られている。
譲渡制限の意思表示(譲渡禁止特約)が付いた債権を譲渡した。効力は?
譲渡は有効(466 条 2 項)
ただし、譲受人が譲渡制限を知っていた、または重大な過失で知らなかった場合、
債務者は履行を拒み、譲渡人への弁済等をもって譲受人に対抗できる。
預貯金債権については、悪意・重過失の譲受人に譲渡が無効となる(466 条の 5)。
債権譲渡を債務者に対抗するには?
譲渡人が債務者に通知するか、債務者が承諾すること(467 条 1 項)
譲受人が通知しても効力がない(譲受人が譲渡人を代位して通知することもできない)。
債権が二重に譲渡された。譲受人どうしの優劣は?
確定日付のある証書による通知が、債務者に先に到達したほうが優先する(判例)
確定日付の日付の先後ではなく、到達の先後で決まる。
同時に到達した場合は、いずれの譲受人も債務者に全額請求できる。
債務者は、譲渡人に対して持っていた抗弁を譲受人に主張できる?
対抗要件具備の時までに生じた事由であれば主張できる(468 条 1 項)
弁済済み・同時履行の抗弁・取消しなどが含まれる。
2. 弁済
根拠: 民法 473 条、474 条 1 項〜4 項、478 条、484 条 1 項、486 条
弁済は債権を消す最も普通の方法である。第三者の弁済を制限するのは、
債務者本人がしなければ意味のない債務があるからで、金銭債務はほぼ制限がない。
第三者は債務者に代わって弁済できる?
できるが、弁済をするについて正当な利益を有しない第三者は、
債務者の意思に反して弁済できない(474 条 2 項)。
正当な利益を有する者(物上保証人・抵当不動産の第三取得者・借地上の建物賃借人など)は、
債務者の意思に反しても弁済できる。
債権者の代理人と称する者に弁済してしまった。有効になる場合は?
受領権者としての外観を有する者への弁済で、弁済者が善意かつ無過失なら有効(478 条)
預金通帳と印鑑を持参した者、債権譲渡が無効だった譲受人などが該当しうる。
弁済の場所はどこ?
- 特定物の引渡し … 債権発生の時にその物が存在した場所
- その他の弁済 … 債権者の現在の住所(持参債務が原則)
弁済の費用は、原則として債務者の負担(485 条)。
債権者が受領を拒んだ。債務者はどうすれば債務を免れる?
弁済の目的物を供託する(494 条)
債権者が受領を拒み、受領できず、または債権者を確知できないときにできる。
供託により債権は消滅する。
弁済をした第三者は、債権者の権利をどうできる?
債権者に代位する(499 条・弁済による代位)
債権の効力および担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使できる。
正当な利益を有しない第三者が代位するには、対抗要件(通知・承諾)が必要。
3. 相殺
根拠: 民法 505 条 1 項、506 条 1 項・2 項、508 条、509 条、511 条 1 項
相殺は「互いに払い合う手間を省く」制度だが、実際には担保としての機能が大きい。
だから、相手が差押えを受けても一定範囲で守られる。
相殺の要件は?
- 二人が互いに同種の目的を有する債務を負担すること
- 双方の債務が弁済期にあること
ただし、受働債権(自分が負う債務)の期限の利益は放棄できるので、
実際には自働債権の弁済期が到来していれば相殺できる。
相殺の意思表示に条件や期限を付けられる?
付けられない(506 条 1 項)
相殺の効力は、双方の債務が互いに相殺に適するようになった時(相殺適状時)に
さかのぼって生じる(506 条 2 項)。
時効で消滅した債権を自働債権として相殺できる?
消滅以前に相殺適状にあったなら、できる(508 条)
すでに相殺できる状態にあった当事者の期待を保護するため。
相殺が禁止されるのはどんな債権?
- 悪意による不法行為に基づく損害賠償債務
- 人の生命または身体の侵害による損害賠償債務(509 条)
いずれも加害者の側から相殺できないという意味で、
被害者の側から相殺することは妨げられない。
差押えを受けた債権を受働債権として相殺できる?
差押え前に取得した債権による相殺であれば、差押債権者に対抗できる(511 条 1 項)
差押え後に取得した債権では対抗できないが、
差押え前の原因に基づいて生じた債権であれば対抗できる(511 条 2 項)。