営業保証金
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
根拠は宅建業法 25 条(営業保証金の供託等)、26 条(保管替え等)、27 条(還付)、
28 条(不足額の供託)、29 条(一部事務所廃止)、30 条(取戻し)、施行令 2 条の 4、施行規則 15 条。
2026-08-01 に e-Gov の条文原文と突合済み。
0. どういう制度か
宅建業の取引は金額が大きく、業者が倒れると相手方は回収できない。そこであらかじめ金を
供託所に積ませておき、取引で損害を受けた人がそこから回収できるようにしたのが営業保証金である。
制度は「積む → 営業できる → 減ったら足す → やめたら取り戻す」という一本の流れで、
各段階に期限が付いている。
| 場面 | 期限 |
|---|---|
| 免許取得後、届出がないとき免許権者が催告 | 3 月を経過したとき |
| 催告後、なお届出がないとき免許を取り消せる | 催告から 1 月を経過したとき |
| 還付で不足したとき、通知を受けてから供託 | 2 週間以内 |
| 供託したら免許権者へ届出 | 供託から 2 週間以内 |
| 取戻しの前の公告 | 6 月以上 |
引っかけの分かれ目は次の 3 つ。
- 供託しただけでは営業できない(届出をして初めて事業を開始できる)
- 還付を受けられるのは「宅建業に関する取引」から生じた債権だけ(内装工事の請負代金は不可)
- 業者自身は還付を受けられない
1. 供託の額と場所
根拠: 宅建業法 25 条 1 項・2 項、施行令 2 条の 4
主たる事務所を厚くしているのは、そこが業者の中枢で、支店だけを閉じて逃げる形を防ぐため。
供託先を主たる事務所のもよりの供託所に一本化しているのは、被害者が取り立て先を探さずに済むように。
営業保証金の供託額は?
主たる事務所につき 1,000 万円、その他の事務所につき事務所ごとに 500 万円
本店 1・支店 2 なら、1,000 万 + 500 万 × 2 = 2,000 万円。
営業保証金はどこの供託所に供託する?
主たる事務所のもよりの供託所
支店ぶんも含めてすべて 1 か所にまとめて供託する。
支店の近くの供託所に分けて供託するのではない。
営業保証金は金銭以外でも供託できる?
できる(国債・地方債その他国土交通省令で定める有価証券)
評価額は、国債は額面の 100%、地方債・政府保証債は 90%、
それ以外の債券は 80%。
2. 事業の開始と、届出がないときの取消し
根拠: 宅建業法 25 条 4 項・5 項、25 条 6 項・7 項
供託は被害者のためにあるので、供託の事実を役所が把握していない状態で営業させては意味がない。
だから届出が営業開始の条件になっている。
営業保証金を供託した宅建業者は、いつから事業を開始できる?
供託した旨を免許権者に届け出た後
供託しただけでは営業できない。届出前に事業を開始すると業務停止処分の対象になる。
免許を受けてから 3 月を過ぎても供託の届出がない。免許権者は何ができる?
届出をすべき旨の催告をしなければならない
催告が届いてから 1 月を経過してもなお届出がないときは、
免許を取り消すことができる(任意的取消)。
新たに支店を設置した。営業保証金はどうする?
その支店のぶん 500 万円を主たる事務所のもよりの供託所に供託し、
届け出た後でなければその支店で事業を開始できない
本店ぶんを供託し直すのではない。
3. 還付
根拠: 宅建業法 27 条 1 項、28 条 1 項・2 項
還付は「宅建業の取引で損した人」を救うための制度なので、取引と無関係の債権は入らない。
業者自身が取り返せてしまっては、積む意味が消える。
営業保証金から還付を受けられるのは、どんな債権?
その業者と宅建業に関する取引をしたことにより生じた債権
広告代金・内装工事の請負代金など、宅建業の取引そのものから生じない債権は対象外。
宅建業者 A が、他の宅建業者 B との取引で損害を受けた。A は B の営業保証金から還付を受けられる?
受けられない
還付を請求できる者から宅地建物取引業者は除かれている。
業者は自分で相手の素性を確かめられる立場にあるため。
還付されて営業保証金が不足した。業者はどうする?
免許権者から通知を受けた日から 2 週間以内に不足額を供託し、
供託した日から 2 週間以内に免許権者へ届け出る
「還付された日から」ではなく「通知を受けた日から」起算する。
4. 保管替えと取戻し
根拠: 宅建業法 26 条 1 項、29 条 1 項、30 条 1 項・2 項
取戻しの前に公告を求めるのは、まだ気づいていない被害者に請求の機会を与えるため。
逆に、別の担保がすでに用意されている場合や、請求できる被害者がもういない場合は公告が要らない。
主たる事務所を移転し、もよりの供託所が変わった。金銭のみで供託していた場合は?
遅滞なく、供託所に保管替えを請求する
有価証券が含まれている場合は保管替えができず、
新たに供託し直してから、従前の供託を取り戻す(二重供託になる)。
営業保証金を取り戻すには、原則として何をする?
6 月を下らない一定期間内に申し出るべき旨の公告をし、
その期間内に申出がなかったこと
還付を受けられる人に、先に手を挙げる機会を与えるための手続。
公告なしで営業保証金を取り戻せるのはどんな場合?
- 保証協会の社員になったとき
- 二重供託になったとき(従前の供託分)
- 取戻し事由が発生してから 10 年を経過したとき
保証協会に入れば弁済業務保証金が担保になるので、公告の必要がない。
事務所の一部を廃止して、供託額が法定額を超えた。超過分はどうする?
公告をしたうえで取り戻せる
一部事務所の廃止でも、原則どおり 6 月以上の公告が要る。
(保証協会の分担金では、一部事務所の廃止のときに公告が不要になる点と逆。)