制限行為能力者
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
根拠は民法 5 条(未成年者)、9 条(成年被後見人)、13 条(被保佐人)、17 条(被補助人)、
20 条(催告権)、21 条(詐術)、120 条(取消権者)、121 条の 2(原状回復義務)、126 条(取消権の期間)。
2026-08-01 に e-Gov の条文原文と突合済み。
0. どういう制度か
判断力が十分でない人が結んだ契約をそのまま有効にすると、その人は財産を失うだけになる。
そこであとから取り消せるようにしたのがこの制度である。逆に取引の相手方は不安定な立場に
置かれるので、催告権という抜け道が与えられている。
4 つの類型は、保護の強さの順に並んでいる。
| 類型 | 保護者 | 単独でできない行為 |
|---|---|---|
| 未成年者 | 親権者・未成年後見人 | 原則すべて(法定代理人の同意が要る) |
| 成年被後見人 | 成年後見人 | 原則すべて(同意があってもなお取り消せる) |
| 被保佐人 | 保佐人 | 13 条 1 項の重要な行為 |
| 被補助人 | 補助人 | 審判で定めた特定の行為 |
成年被後見人だけは「同意」という仕組みが働かない。判断力が常に欠けている以上、
同意どおりに行動できる保証がないからである。
引っかけの分かれ目は次の 3 つ。
- 日用品の購入その他日常生活に関する行為は、いずれの類型でも取り消せない
- 催告に確答しないときの効果は、単独で追認できる相手なら追認、できない相手なら取消し
- 詐術を用いたときは取り消せない
1. 未成年者
根拠: 民法 5 条 1 項〜3 項、6 条
未成年者は成長の途中なので、自分で処分できる財産の範囲を段階的に広げられるように
なっている。単に得をするだけの行為に同意を求めないのも同じ考え方。
未成年者が法定代理人の同意を得ずにした契約はどうなる?
取り消すことができる
取り消せるのは、未成年者本人・法定代理人・(成年に達した後の)本人など。
本人が取り消すのに法定代理人の同意は要らない。
未成年者が単独でできる行為は?
- 単に権利を得、または義務を免れる行為(贈与を受ける、債務を免除される)
- 法定代理人が処分を許した財産の処分(小遣い等)
- 法定代理人から営業の許可を受けた場合の、その営業に関する行為
負担付贈与を受けることは「単に権利を得る」に当たらないので取り消せる。
2. 成年被後見人
根拠: 民法 9 条、859 条の 3
判断力が「常に」欠けている状態を前提にしているので、同意をもらってもその通りに動ける
保証がない。だから同意権という仕組み自体が置かれていない。
成年被後見人が、成年後見人の同意を得てした契約は取り消せる?
取り消せる
成年後見人には同意権がない。単独でできるのは
日用品の購入その他日常生活に関する行為だけ。
成年後見人が、成年被後見人の居住用不動産を売却するには?
家庭裁判所の許可が必要
売却・賃貸・賃貸借の解除・抵当権の設定なども同じ。
許可なくした行為は無効。
3. 被保佐人・被補助人
根拠: 民法 13 条 1 項・4 項、17 条 1 項・4 項
保佐・補助は「一部だけ助けが要る」段階なので、制限される行為を法や審判で列挙する。
列挙されていない行為は単独でできる。
被保佐人が保佐人の同意を得ずにできない行為の例は?
- 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為
- 借財・保証をすること
- 元本を領収し、または利用すること
- 訴訟行為、贈与・和解・仲裁合意、相続の承認・放棄・遺産分割
- 新築・改築・増築・大修繕
- 一定期間を超える賃貸借(土地 5 年、建物 3 年)
被補助人について、同意が必要な行為はどう決まる?
家庭裁判所の審判で定めた特定の行為だけ
その範囲は 13 条 1 項に列挙された行為の一部に限られる。
補助開始の審判は、本人以外の請求による場合は本人の同意が必要。
保佐人の同意を得られないとき、被保佐人はどうできる?
家庭裁判所に、保佐人の同意に代わる許可を求められる
保佐人が本人の利益を害するおそれがないのに同意しないときに使える。
4. 相手方の保護
根拠: 民法 20 条 1 項〜4 項、21 条
取り消されるかどうか分からない状態が続くと、相手方は身動きが取れない。
そこで期限を切って返事を求める権利を与え、返事がないときの扱いも決めてある。
制限行為能力者の相手方は、誰に対して催告できる?効果は?
1 か月以上の期間を定めて追認するかどうかの確答を求められる。
- 単独で追認できる者(法定代理人・保佐人・補助人、能力者となった本人)に催告 →
確答がなければ追認したものとみなす - 被保佐人・被補助人本人に催告 → 確答がなければ取り消したものとみなす
成年被後見人本人に対して催告できる?
できない(催告としての効力を生じない)
意思表示を受領する能力がないため。成年後見人に対して催告する。
制限行為能力者が「自分は行為能力者だ」と偽って契約した。取り消せる?
取り消せない(21 条・詐術)
単に黙っていただけでは詐術にならないが、
他の言動と相まって相手方を誤信させたときは詐術に当たる。
5. 取消しの効果と期間
根拠: 民法 121 条の 2 第 3 項、126 条
取り消された契約で受け取ったものを、制限行為能力者はどこまで返す?
現に利益を受けている限度(現存利益)で返せばよい
浪費して残っていなければ返さなくてよい。
ただし生活費に充てた場合は、その分の出費を免れているので現存利益がある。
取消権はいつまで行使できる?
追認できる時から 5 年、または行為の時から 20 年
どちらか早いほうの経過で消滅する。
制限行為能力者が取消しをした後、その取消しを撤回できる?
できない
いったん取り消すと契約は初めから無効であったものとみなされ(121 条)、
その後に追認して復活させることはできない。