共有
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
根拠は民法 249 条(共有物の使用)、250 条(持分の割合)、251 条(共有物の変更)、
252 条(共有物の管理)、253 条(管理の費用)、255 条(持分の帰属)、256 条(分割請求)、
258 条(裁判による分割)、262 条の 2(所在等不明共有者の持分取得)。
2026-08-01 に e-Gov の条文原文と突合済み。
0. どういう制度か
一つの物を複数人で持つと、誰の意見で動かすかが問題になる。民法は
その行為が他の共有者の権利をどれだけ侵すかで必要な同意を三段階に分けている。
| 行為 | 必要な同意 | 例 |
|---|---|---|
| 保存行為 | 各共有者が単独でできる | 修繕、不法占拠者への明渡請求、無効登記の抹消請求 |
| 管理行為 | 持分の価格の過半数 | 賃貸(短期)、賃貸借の解除、管理者の選任 |
| 変更(軽微でないもの)・処分 | 全員の同意 | 売却、増改築、抵当権の設定 |
「頭数」ではなく持分の価格で数えるのが管理行為の要点である。
引っかけの分かれ目は次の 3 つ。
- 共有物全部を単独で使っている共有者に、他の共有者は明渡しを請求できない
- 分割請求はいつでもできるが、5 年以内の不分割特約は有効
- 持分の放棄・相続人なしでの死亡では、持分は他の共有者に帰属する(国庫ではない)
1. 使用と持分
根拠: 民法 249 条 1 項〜3 項、250 条、253 条 1 項・2 項
各共有者は持分に応じて全部を使える。だから、一人が使っていても
その人にも使う権利がある以上、出ていけとは言えない。ただし使いすぎた分は精算させる。
共有者の一人が共有物の全部を使用している。他の共有者は明渡しを請求できる?
当然には請求できない(判例)
その共有者も持分に応じて全部を使用する権利を持つため。
ただし、自己の持分を超える使用の対価は他の共有者に償還しなければならない(249 条 2 項)。
持分の割合が不明なときはどうなる?
相等しいものと推定される(250 条)
共有者が管理費用を負担しない。他の共有者はどうできる?
1 年以内に義務を履行しないとき、他の共有者は相当の償金を支払って
その者の持分を取得できる(253 条 2 項)
2. 保存・管理・変更
根拠: 民法 251 条 1 項、252 条 1 項・4 項、252 条の 2
共有物に変更を加えるには?
共有者全員の同意が必要(251 条 1 項)
ただし「その形状または効用の著しい変更を伴わないもの」(軽微変更)は、
持分の価格の過半数で決められる。
共有物の管理に関する事項は、どう決める?
各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する(252 条 1 項)
頭数の過半数ではない。共有物を使用している共有者がいる場合も、
過半数で管理事項を決められる。
共有物を賃貸できる期間の上限は?
- 樹木の栽植・伐採を目的とする山林 … 10 年
- その他の土地 … 5 年
- 建物 … 3 年
- 動産 … 6 か月
これを超える賃貸借は「変更」に当たり、全員の同意が必要(252 条 4 項)。
共有物の保存行為はどう行える?
各共有者が単独でできる(252 条 5 項)
不法占拠者に対する明渡請求や、無効な登記の抹消請求は保存行為。
一方、共有物を目的とする賃貸借契約の解除は「管理」であり、過半数が必要。
共有者の所在が分からない。管理はどうする?
裁判所の決定を得て、所在等不明共有者以外の共有者の持分の過半数で
管理に関する事項を決められる(252 条 2 項)
変更についても、裁判所の決定を得て他の共有者全員の同意で行える(251 条 2 項)。
3. 持分の処分と帰属
根拠: 民法 255 条、206 条
持分は各共有者の独立した財産なので自由に処分できる。一方、行き先を失った持分を
国庫に入れると共有関係が壊れるので、他の共有者に付けるという整理になっている。
共有者は、自分の持分を他の共有者の同意なく売却できる?
できる
持分は各自の独立した権利。抵当権を設定することもできる。
他の共有者の同意が要るのは、共有物全体を処分する場合。
共有者の一人が持分を放棄した。その持分はどうなる?
他の共有者に、その持分に応じて帰属する(255 条)
相続人がないまま死亡した場合も同じ(ただし特別縁故者への分与が優先される・判例)。
国庫に帰属するのではない。
4. 分割
根拠: 民法 256 条 1 項、258 条 1 項〜3 項、258 条の 2
共有は関係がこじれやすいので、いつでも抜けられることが原則になっている。
だから不分割特約にも期間の上限が置かれている。
共有物の分割はいつ請求できる?
いつでも請求できる(256 条 1 項)
ただし 5 年を超えない期間で分割をしない旨の契約ができる。
更新もできるが、更新の時から 5 年を超えられない。
協議が調わないときの分割はどうなる?
裁判所に分割を請求できる(258 条 1 項)
裁判所は、①現物分割、②賠償分割(一部の共有者に取得させ、他に金銭を支払わせる)
を命じることができ、それができないときは競売を命じる。
遺産共有の場合、分割はどの手続による?
遺産分割(家庭裁判所)による
通常の共有物分割訴訟ではできない。
ただし相続開始から 10 年を経過したときは、共有物分割の手続で
遺産共有持分も併せて分割できる(258 条の 2 第 2 項)。
共有物を分割するとき、共有物について権利を持つ第三者は参加できる?
参加を請求できる(260 条)
参加の請求があったのに参加させずにした分割は、
その第三者に対抗できない。