借地借家法(借家)
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
根拠は借地借家法 26 条(建物賃貸借の更新)、27 条(解約による終了)、28 条(正当事由)、
29 条(短期賃貸借)、30 条(強行規定)、31 条(対抗力)、32 条(借賃増減請求)、
33 条(造作買取請求権)、34 条(転借人の保護)、36 条(居住用建物の賃貸借の承継)、
37 条、38 条(定期建物賃貸借)、39 条(取壊し予定の建物の賃貸借)。
2026-08-01 に e-Gov の条文原文と突合済み。
0. どういう制度か
住まいや店舗を失うことは生活・営業の基盤を失うことなので、借家人の保護は借地よりさらに厚い。
期間が満了しても自動的に更新され(法定更新)、出ていかせるには正当事由が要る。
借地と対比すると、数字の位置がずれているのが分かる。
| 借地 | 借家 | |
|---|---|---|
| 期間の下限 | 30 年 | 下限なし(1 年未満は「期間の定めがない」ものとみなす) |
| 期間の上限 | なし | なし(民法 604 条の 50 年制限を受けない) |
| 更新拒絶の通知 | 期間満了後の異議 | 期間満了の 1 年前から 6 か月前まで |
| 対抗要件 | 借地上の建物の登記 | 建物の引渡し |
引っかけの分かれ目は次の 3 つ。
- 1 年未満の建物賃貸借は「期間の定めがないもの」とみなされる(定期建物賃貸借を除く)
- 賃貸人からの解約申入れは 6 か月+正当事由、賃借人からは民法どおり 3 か月
- 定期建物賃貸借は、書面での契約に加え、事前に別の書面で説明しなければ普通の賃貸借になる
1. 存続期間と更新
根拠: 借地借家法 26 条 1 項・2 項、27 条 1 項、29 条 1 項・2 項、30 条
期間が切れるたびに追い出せるのでは保護にならない。そこで黙っていれば更新される形にし、
更新を止めたい側に、期限を切った通知と正当事由を求めている。
建物賃貸借で 1 年未満の期間を定めた場合はどうなる?
期間の定めがない建物の賃貸借とみなされる(29 条 1 項)
借地のように「30 年に伸びる」のではない。
なお、民法 604 条(存続期間 50 年)は建物賃貸借には適用されない(29 条 2 項)。
期間の定めのある建物賃貸借を更新しないためには?
期間満了の 1 年前から 6 か月前までの間に、
相手方に更新をしない旨の通知をする(26 条 1 項)
通知をしなければ、従前と同一の条件で契約を更新したものとみなされる
(期間は定めがないものとなる)。
更新拒絶の通知をしたが、期間満了後も賃借人が使用を続けている。どうなる?
賃貸人が遅滞なく異議を述べなければ、更新したものとみなされる(26 条 2 項)
異議には正当の事由が必要。
期間の定めのない建物賃貸借を、賃貸人・賃借人はどう終了させる?
- 賃貸人から … 解約の申入れから 6 か月(27 条)+正当事由が必要
- 賃借人から … 民法 617 条により 3 か月(正当事由は不要)
借地借家法は賃借人を守るための法律なので、賃借人からの解約には制限がない。
更新拒絶・解約申入れの「正当の事由」は何で判断される?
- 賃貸人・賃借人が建物の使用を必要とする事情
- 建物賃貸借に関する従前の経過
- 建物の利用状況および現況
- 賃貸人が申し出た財産上の給付(立退料)
2. 対抗力と借賃増減請求
根拠: 借地借家法 31 条、32 条 1 項〜3 項
建物賃借権を第三者に対抗するには?
建物の引渡しを受けていること(31 条)
賃借権の登記は不要。借地の「借地上の建物の登記」と対応する。
借賃が不相当になった。当事者は何を請求できる?
将来に向かって借賃の増減を請求できる(32 条 1 項・形成権)
ただし一定の期間は増額しない旨の特約があればそれに従う。
(減額しない旨の特約は無効。賃借人に不利だから。)
増額請求について協議が調わない間、賃借人はいくら払う?
自分が相当と認める額を支払えばよい(32 条 2 項)
裁判で額が確定したら、既払額に不足があれば
年 1 割の利息を付して支払う。
減額請求について協議が調わない間、賃貸人はいくら請求できる?
自分が相当と認める額を請求できる(32 条 3 項)
裁判で確定したら、受け取りすぎた額に年 1 割の利息を付して返還する。
3. 造作買取請求権と転借人の保護
根拠: 借地借家法 33 条 1 項、34 条 1 項・2 項、37 条
造作買取請求権とは?
賃貸人の同意を得て建物に付加した畳・建具などの造作を、
契約終了時に時価で買い取るよう請求できる権利(33 条 1 項)
特約で排除できる(37 条の強行規定に含まれていない)。
借地の建物買取請求権が排除できないのと逆。
建物の転貸借がある場合、賃貸人は転借人に何をしなければならない?
期間満了・解約申入れによって賃貸借が終了するときは、
転借人にその旨を通知しなければ終了を対抗できない(34 条 1 項)
通知をすれば、その日から 6 か月の経過で転貸借が終了する。
4. 居住用建物の承継
根拠: 借地借家法 36 条 1 項
賃借人が相続人なしに死亡した。同居していた内縁の配偶者はどうなる?
建物の賃借人の権利義務を承継する(36 条 1 項)
事実上夫婦・養親子と同様の関係にあった同居者が対象。
死亡を知った後 1 か月以内に承継しない旨を申し出れば承継しない。
5. 定期建物賃貸借
根拠: 借地借家法 38 条 1 項〜7 項、39 条 1 項
普通の借家契約は更新が原則なので、更新しない契約を作るには
借主が「更新がない」と本当に理解していることを手続で担保する必要がある。
定期建物賃貸借の成立要件は?
① 書面(または電磁的記録)によって契約すること(公正証書に限らない)
② 契約の更新がない旨を定めること
③ あらかじめ、契約書とは別の書面を交付して、更新がなく期間満了で終了する旨を説明すること
③を欠くと、更新がない旨の定めは無効となり、普通の建物賃貸借になる。
定期建物賃貸借の期間に制限はある?
ない(1 年未満でも有効)
29 条 1 項(1 年未満は期間の定めがないものとみなす)は適用されない。
期間 1 年以上の定期建物賃貸借を終了させるには、何が必要?
期間満了の 1 年前から 6 か月前までの間に、
賃借人に対し期間満了により終了する旨の通知をする(38 条 6 項)
通知をしなければ終了を賃借人に対抗できない。
通知期間経過後に通知した場合も、その日から 6 か月経過後は対抗できる。
居住用の定期建物賃貸借で、賃借人から中途解約できる場合は?
床面積 200 平方メートル未満の居住用建物で、
転勤・療養・親族の介護その他やむを得ない事情により生活の本拠として
使用することが困難となったとき。
解約の申入れから 1 か月の経過で終了する(38 条 7 項)。
取壊し予定の建物の賃貸借(39 条)とは?
法令または契約により一定の期間を経過した後に建物を取り壊すべきことが明らかな場合に、
建物を取り壊すこととなる時に賃貸借が終了する旨を定められる制度。
その特約は、取壊しの事由を記した書面(または電磁的記録)でしなければならない。