代理
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
根拠は民法 99 条(代理行為の要件)、101 条(代理行為の瑕疵)、102 条(代理人の行為能力)、
104 条〜106 条(復代理)、107 条(代理権の濫用)、108 条(自己契約・双方代理)、
109 条・110 条・112 条(表見代理)、113 条〜117 条(無権代理)。2026-08-01 に e-Gov の条文原文と突合済み。
0. どういう制度か
代理は、本人が自分で動かずに法律行為の効果だけを受け取る仕組みである。
効果が本人に帰属する以上、本人の意思が代理人を通じて働いていることが前提になる。
その前提が崩れた場合の後始末が、無権代理と表見代理である。
無権代理が起きたとき、関係者にはそれぞれ武器が与えられている。
| 誰が | 何ができるか | 使える条件 |
|---|---|---|
| 本人 | 追認・追認拒絶 | いつでも |
| 相手方 | 催告(1 か月以上) | 善意・悪意を問わない |
| 相手方 | 取消し | 契約時に善意であること |
| 相手方 | 無権代理人への責任追及 | 善意無過失であること(代理人が悪意なら過失があっても可) |
引っかけの分かれ目は次の 3 つ。
- 催告だけは悪意の相手方でもできる(本人に不利益がないため)
- 代理人が制限行為能力者でも、代理行為は取り消せない
- 表見代理が成立する場合でも、相手方は無権代理人の責任を選んで追及できる
1. 代理の基本
根拠: 民法 99 条 1 項、100 条、101 条 1 項・3 項、102 条
効果が本人に行くのは「本人のためにすることを示した」からであり、示さなければ
代理人自身の行為になる。判断の善悪は現に行為をした代理人で見るのが筋だが、
本人が指図した場合は本人の悪意も持ち込まれる。
代理人が「本人のためにすることを示さず」に契約した。効果は誰に帰属する?
代理人自身に帰属する(100 条)
ただし、相手方が本人のためにすることを知っていた、
または知ることができたときは、本人に効果が帰属する。
詐欺・強迫や善意悪意は、本人と代理人のどちらを基準に判断する?
代理人を基準に判断する(101 条 1 項)
ただし、本人が特定の法律行為を委託した場合、本人が知っていた事情については
代理人が善意であることを主張できない(101 条 3 項)。
制限行為能力者を代理人にできる?その行為は取り消せる?
代理人にできる。行為能力は必要ない(102 条)。
その代理行為は行為能力の制限を理由に取り消せない
効果は本人に帰属するので、代理人本人が不利益を受けないため。
ただし制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為は取り消せる。
2. 自己契約・双方代理・代理権の濫用
根拠: 民法 107 条、108 条 1 項・2 項
代理人は本人の利益のために動く立場なので、自分や相手方の利益と衝突する構図を
最初から禁じている。もっとも、本人が承諾していれば衝突は問題にならない。
自己契約・双方代理をした場合の効果は?
無権代理行為とみなされる(無効ではない)
例外は、①本人があらかじめ許諾した場合、②債務の履行(登記申請など)。
本人が追認すれば有効になる。
代理人が自分の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした(代理権の濫用)。効果は?
相手方がその目的を知っていた、または知ることができたときは、
無権代理行為とみなされる(107 条)
相手方が善意無過失なら、代理行為は有効で効果は本人に帰属する。
3. 復代理
根拠: 民法 104 条、105 条、106 条 1 項・2 項
復代理人は「代理人が選んだ、本人の代理人」である。だから代理人の代理人ではない。
任意代理で選任が制限されるのは、本人が代理人その人を信頼して頼んだからである。
任意代理人が復代理人を選任できるのはどんなとき?
本人の許諾を得たとき、またはやむを得ない事由があるとき(104 条)
法定代理人は、自己の責任でいつでも復代理人を選任できる(105 条)。
復代理人を選任しても、代理人の代理権はどうなる?
消滅しない(代理人と復代理人が並存する)
復代理人は本人の代理人であり、本人に対して代理人と同一の権利義務を負う。
4. 無権代理
根拠: 民法 113 条 1 項・2 項、114 条、115 条、116 条、117 条 1 項・2 項
無権代理は「本人の意思が入っていない」だけで、内容が違法なわけではない。
だから本人が後から意思を入れれば有効になる(追認)。相手方には、それを待つあいだ
身動きが取れないぶんの手当てが用意されている。
無権代理行為に対して、相手方は本人に催告できる?
できる(1 か月以上の期間を定めて確答を求める)
相手方が悪意でも催告できる。
期間内に確答がなければ、追認を拒絶したものとみなす。
無権代理行為を相手方が取り消せるのはどんな場合?
本人が追認しない間で、かつ契約の時に代理権がないことを知らなかった(善意)とき
過失があってもよい。悪意の相手方は取り消せない。
本人が追認した場合、契約はいつから有効になる?
契約の時にさかのぼって有効になる(116 条)
ただし第三者の権利を害することはできない。
追認は相手方に対してするのが原則で、無権代理人にしたときは
相手方が知るまで相手方に対抗できない。
無権代理人に対して相手方が追及できる責任は?
履行の請求または損害賠償の請求(相手方が選択できる)
要件は、本人の追認が得られず、代理権を証明できないこと。
無権代理人の責任を追及できないのはどんな場合?
- 相手方が代理権のないことを知っていたとき
- 相手方が過失により知らなかったとき(ただし無権代理人が悪意なら追及できる)
- 無権代理人が制限行為能力者であるとき
本人が死亡して無権代理人が単独相続した。契約はどうなる?
追認拒絶はできず、契約は有効となる(判例)
逆に、無権代理人が死亡して本人が相続した場合は、
本人は追認を拒絶できる(ただし 117 条の責任は承継する)。
5. 表見代理
根拠: 民法 109 条 1 項、110 条、112 条 1 項
本人が「代理権があるように見える外観」を作った以上、それを信じた相手方を守る。
虚偽表示の 94 条 2 項と同じ権利外観法理の系統である。
表見代理が成立する 3 つの型は?
① 代理権授与の表示による表見代理(109 条)
② 権限外の行為の表見代理(110 条)
③ 代理権消滅後の表見代理(112 条)
いずれも相手方が善意無過失であることが必要。
110 条の表見代理が成立するには、何が必要?
代理人に何らかの基本代理権があり、相手方が権限内であると信ずべき
正当な理由(=善意無過失)があること
まったく代理権がない者の行為には 110 条は適用されない。
表見代理が成立する場合、相手方は無権代理人の責任(117 条)を追及できる?
できる(どちらを選ぶかは相手方の自由・判例)
表見代理が成立するからといって、無権代理人の責任追及が封じられるわけではない。