居住・都市問題
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領「地理総合」B (2) ア (ア) の「世界各地で見られる……居住・都市問題などを基に,地球的課題の各地で共通する傾向性や課題相互の関連性などについて大観し理解すること」。
内容の取扱いは、地球的課題が地域性をもつことに留意するよう求めています。都市の問題はその典型で、発展途上国と先進国では現れ方がまったく違います。
都市の人口や都市人口率は毎年動くので、カードにしていません。
0. 何を押さえるか
都市化とは、人口や産業が都市に集まり、都市に住む人の割合が高まっていくことです。
途上国では、都市の受け入れ態勢が整う前に人が流れ込むことで問題が起き、先進国では、都市が成熟したあとに中心部が衰えたり郊外が無秩序に広がったりすることで問題が起きます。
| 発展途上国の都市 | 先進国の都市 | |
|---|---|---|
| 人口の動き | 農村から大都市へ急激に流入 | 都心から郊外へ、のちに都心へ戻る動きも |
| 代表的な問題 | スラム、首位都市への集中、交通渋滞・大気汚染 | インナーシティ問題、スプロール現象、郊外の高齢化 |
| 取組 | 住宅・上下水道の整備、地方の開発 | 再開発、公共交通の整備、コンパクトなまちづくり |
取り違えやすい分かれ目は次の 3 つ。
- 途上国の都市人口の急増は、都市に仕事が多いからだけではない。農村の人口増加と貧困が人を押し出している
- スプロールは郊外の問題、インナーシティは都心周辺の問題。起きる場所が違う
- 再開発で街がきれいになっても、元の住民が住めなくなることがある(ジェントリフィケーション)
1. 発展途上国の都市問題
根拠: 学習指導要領 地理総合-B-(2)-ア-(ア)
途上国の大都市に人が集まるのは、農村で人口が増えて土地や仕事が足りなくなったことと、都市に行けば仕事や教育の機会があると期待されることの両方が理由です。
工業化や住宅の整備が人口の流入に追いつかないと、都市の周りに住宅の足りない地区が広がります。
発展途上国で都市人口が急増するのはなぜか?
農村で人口が増えて土地や仕事が不足し、仕事を求める人々が大都市へ移り住むから
都市の工業化や住宅・上下水道の整備が、流入の速さに追いつかない。
国内で、人口や政治・経済の機能が 1 つの都市に極端に集中している場合、その都市を何という?
首位都市(プライメートシティ)
2 番目の都市との差が非常に大きい。タイのバンコクなど、途上国の首都に多い。
都市に流れ込んだ人々が、空き地や河川沿い・急斜面などに住みつき、上下水道や電気などが整っていない住宅地区を何という?
スラム
土地を不法に占拠していることも多く、衛生や治安の問題を抱える。
ブラジルの大都市で、丘の斜面などに広がるスラムの呼び名は?
ファベーラ
平地は早くから開発されていたため、残された急な斜面に住宅が密集した。
露天商や靴みがきなど、国の統計や税・法律の枠の外で行われる小規模な仕事を何という?
インフォーマルセクター
途上国の都市では、正規の職につけない人々の生活を支えているが、収入は不安定である。
2. 先進国の都市問題
根拠: 学習指導要領 地理総合-B-(2)-ア-(ア)
先進国では、自動車の普及とともに人々が郊外に住むようになり、都市は外へ外へと広がりました。
その結果、郊外では無秩序な開発が進み、都心の周りでは古い住宅地が取り残されました。
都市の郊外で、道路や下水道などの計画的な整備が追いつかないまま、住宅や工場が虫食い状に広がっていく現象を何という?
スプロール現象
農地と住宅が入り混じり、あとから道路や下水道を整えるのが難しくなる。
都心やその周辺の地区で、夜間の人口が減り、郊外の人口が増える現象を何という?
ドーナツ化現象
地価の高い都心には住宅が少なく、通勤してくる昼間の人口ばかりが多くなる。
欧米の大都市で、所得の高い人々が郊外へ移ったあと、都心周辺の古い住宅地に低所得者や移民が残され、建物の老朽化や治安の悪化が進む問題を何という?
インナーシティ問題
税収が減って行政サービスが行き届かなくなり、さらに住環境が悪くなるという悪循環に陥りやすい。
再開発によって古い地区に所得の高い人々が移り住み、地価や家賃が上がって、もとの住民が住み続けられなくなる現象を何という?
ジェントリフィケーション
街の景観や治安はよくなる一方、誰のための再開発かが問われる。
ロンドンで、使われなくなった旧港湾地区を、オフィスや住宅の集まる地区に作り変えた再開発の地区は?
ドックランズ
船の大型化・コンテナ化で古い港が使われなくなった跡地を活用した。
3. 日本の都市と、持続可能なまちづくり
根拠: 学習指導要領 地理総合-B-(2)-ア-(ア)
日本では、高度経済成長期に大都市への人口集中が進み、大都市の過密と農山村の過疎が同時に生まれました。
近年は都心のマンション建設などで、都心部の人口が再び増える動きも見られます。
1990 年代後半以降、日本の大都市で見られる、郊外に移っていた人口が再び都心部で増える動きを何という?
都心回帰
地価の下落や、工場跡地などへの高層マンションの建設が背景にある。
郊外の駅の近くに車を停め、電車やバスに乗り換えて都心に入るようにして、都心の交通渋滞や排気ガスを減らすしくみを何という?
パークアンドライド
ドイツのフライブルクなどヨーロッパの都市で進められ、日本の都市でも取り入れられている。
住宅や商業・行政などの機能を中心部や駅の周りに集め、公共交通で結んで、歩いて暮らせるようにするまちづくりを何という?
コンパクトシティ
郊外への無秩序な広がりを抑え、道路や上下水道の維持にかかる費用も減らせる。人口が減る日本の地方都市で進められている。
同じ「居住・都市問題」でも、途上国では急激な人口の流入、先進国では郊外化と中心部の衰えが問題の中心になります。これが課題の地域性です。
一方で、どちらも都市の成長の速さに住宅・交通・上下水道などの整備が追いつかないところに問題が生まれるという共通点があります。
都市への人口の流入が農村の人口増加から始まることは 人口・食料問題 で、都市の取組を含めた解決の方向は 持続可能な社会と国際協力 で扱います。