農業の成立条件と農業地域
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領「地理探究」A (2) ア (ア) の「資源・エネルギーや農業,工業などに関わる諸事象を基に,それらの事象の空間的な規則性,傾向性」を理解すること。
このノートは、農業がどこで営まれるかを決める自然条件と社会条件、そして世界の農業を類型に分けるホイットルセイの農業地域区分を扱います。
0. 何を押さえるか
農業の成り立ちは、作物が育つかどうかを決める自然条件と、作って売れるかどうかを決める社会条件の重なりで説明できます。
| 条件 | 中身 | 変えられるか |
|---|---|---|
| 自然条件 | 気温・降水量・地形・土壌 | 灌漑や品種改良で限界を少しずつ押し広げられる |
| 社会条件 | 市場との距離・交通・資本・技術・政策・労働力 | 時代とともに大きく変わる |
| 集約度 | 土地や労働力にどれだけ手間と資本をかけるか | 人口密度や地価で変わる |
取り違えやすい分かれ目は次の 3 つ。
- 土地生産性と労働生産性。アジアの稲作は面積あたりの収量(土地生産性)が高く、新大陸の企業的農業は 1 人あたりの生産量(労働生産性)が高い
- 集約的と粗放的。狭い土地に労働力や資本を多くかけるのが集約的、広い土地に少ない手間をかけるのが粗放的
- ホイットルセイの区分は作物だけで分けていない。作物と家畜の組み合わせ、集約度、生産物を自分で使うか売るかなど、いくつもの指標を重ねている
1. 自然条件と栽培の限界
根拠: 学習指導要領 地理探究-A-(2)-ア-(ア)
作物にはそれぞれ育つ気温・水分の範囲があり、その外側では栽培できません。
この限界は、灌漑や品種改良といった技術で少しずつ押し広げられてきました。
作物の栽培ができる範囲の限界のうち、気温の低さによって決まるものを何というか?
寒冷限界
高緯度側に現れる。降水量の少なさで決まる乾燥限界、標高の高さで決まる高距限界と並べて覚える。
降水量が足りず作物が育たない乾燥限界を越えて、畑作を可能にする代表的な技術は何か?
灌漑
河川・地下水・ため池などから耕地に水を引く。ただし乾燥地で排水が悪いと、蒸発で塩分が地表にたまる塩害を招く。
ステップに分布するチェルノーゼムが、腐植に富み肥沃になるのはなぜか?
草が毎年枯れて積もり、降水が少ないため養分が雨で流されにくいから
土壌が農業の成立条件(自然条件)になっている例で、世界有数の小麦地帯を支えている。
デカン高原のレグールと、ブラジル高原のテラローシャ。それぞれの土の上で主に栽培される作物は?
レグールは綿花、テラローシャはコーヒー
どちらも玄武岩などが風化してできた肥沃な土で、土壌が農業の成立条件(自然条件)になっている例。
2. 社会条件と市場からの距離
根拠: 学習指導要領 地理探究-A-(2)-ア-(ア)
同じ自然条件の土地でも、市場までの距離や輸送の手段が違えば、有利な農業は変わります。
交通や保存の技術が進むと、遠く離れた土地でも市場向けの農業が成り立つようになりました。
市場からの距離に応じて輸送費が変わるため、都市の周りに農業の形態が同心円状に並ぶというモデルを示したドイツの人物は誰か?
チューネン
19 世紀前半に著した『孤立国』で示した。都市に近いほど鮮度が大事で重い作物、遠いほど輸送費を負担できる粗放的な農業になる。
大都市の近くで、鮮度が求められる野菜・花・牛乳などを生産する農業を何というか?
近郊農業
輸送費や時間を抑えられるのが強み。遠くの産地からトラックや冷蔵輸送で出荷する輸送園芸農業と区別する。
19 世紀後半、アルゼンチンやオーストラリアで企業的牧畜が発展するきっかけとなった輸送の技術革新は何か?
冷凍船
肉を冷凍したまま赤道を越えてヨーロッパへ運べるようになった。社会条件が変わると、遠く離れた土地にも市場向けの農業が広がる例。
3. 集約度と生産性
根拠: 学習指導要領 地理探究-A-(2)-ア-(ア)
農業の性格は、土地や労働力にどれだけ手間と資本をかけるかでも捉えられます。
狭い土地に多くの労働力や資本をかけて、面積あたりの収量を上げる農業を何というか?
集約的農業
反対に、広い土地に少ない手間をかける農業を粗放的農業という。人口が多く土地の少ない地域ほど集約的になりやすい。
アジアの稲作は、土地生産性と労働生産性のどちらが高いか?
土地生産性
狭い水田に多くの人手をかけるので、面積あたりの収量は高いが、1 人あたりの生産量は低くなる。
アメリカやオーストラリアの企業的な穀物農業は、土地生産性と労働生産性のどちらが高いか?
労働生産性
大型機械で広い農地を少人数で耕すため、1 人あたりの生産量は高いが、面積あたりの収量はアジアの稲作ほど高くない。
4. ホイットルセイの農業地域区分
根拠: 学習指導要領 地理探究-A-(2)-ア-(ア)
世界の農業を類型に分ける枠組みとして、今も教科書の土台になっているのがホイットルセイの区分です。
1936 年に、作物と家畜の組み合わせや集約度などを指標にして、世界の農業地域を区分したアメリカの地理学者は誰か?
ホイットルセイ
作物と家畜の組み合わせ、労働力・資本の集約度、生産物の処理と販売の方法、住居や農業施設などを指標にした。
ホイットルセイの区分をもとにした農業の大きな 3 分類は、何を基準に分けているか?
生産物を誰のために作るか(自給か販売か、その規模)
自分たちで食べる自給的農業、主に国内や近くの市場へ売る商業的農業、世界市場へ大規模に売る企業的農業に分かれる。
遊牧・焼畑農業・集約的稲作農業は、自給的・商業的・企業的のどれに当たるか?
自給的農業
混合農業・酪農・園芸農業・地中海式農業が商業的農業、企業的穀物農業・企業的牧畜・プランテーション農業が企業的農業に当たる。