工業立地
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領「地理探究」A (2) ア (ア) の「資源・エネルギーや農業,工業などに関わる諸事象を基に,それらの事象の空間的な規則性,傾向性」を理解すること。
このノートは、工場がどこに建てられるかを説明するウェーバーの工業立地論と、原料指向・市場指向・労働力指向・交通指向・集積指向といった立地の型を扱います。
0. 何を押さえるか
工場は、原料を集めて製品を届けるまでの費用がいちばん安くなる場所を選びます。
何の費用が大きいかで、立地の型が分かれます。
| 立地の型 | いちばん効く費用 | 代表的な工業 |
|---|---|---|
| 原料指向 | 原料の輸送費(原料が重く、製品で軽くなる) | セメント、かつての鉄鋼、パルプ・紙 |
| 市場指向 | 製品の輸送費・市場の情報 | ビール・清涼飲料、印刷・出版 |
| 労働力指向 | 賃金(多くの人手が要る) | 衣類・繊維、電気機械の組み立て |
| 交通指向(臨海) | 輸入原料の輸送費 | 日本の鉄鋼・石油化学 |
| 交通指向(臨空港) | 輸送の速さ(軽くて高価な製品) | 集積回路(IC) |
| 電力指向 | 電力の費用 | アルミニウムの精錬 |
| 集積指向 | 部品の調達・取引の費用 | 自動車 |
取り違えやすい分かれ目は次の 3 つ。
- 重量が減る原料は原料地、どこにでもある原料は市場。製品になると軽くなるなら原料地で加工する。水のようにどこでも手に入る原料を使うなら市場の近くで作る
- 同じ工業でも時代で型が変わる。鉄鋼はかつて炭田や鉄山の近く(原料指向)だったが、日本などでは原料を輸入するので臨海部(交通指向)へ移った
- 労働力指向は安い労働力だけではない。大量の安い労働力を求める型と、高度な技術を持つ人材を求める型がある
1. ウェーバーの工業立地論
根拠: 学習指導要領 地理探究-A-(2)-ア-(ア)
工業の立地を理論として示した代表が、ドイツのウェーバーです(1909 年)。
まず輸送費がいちばん安くなる地点を求め、そこから労働費や集積の利益で立地がずれると考えました。
輸送費が最小になる地点に工場が立地するという考えを基本に、工業立地論を示したドイツの経済学者は誰か?
ウェーバー
輸送費の次に、労働費の安さ、工場が集まることの利益を加えて、立地の変化を説明した。
ウェーバーの立地論で、水のようにどこでも手に入る原料を何というか?
普遍原料
特定の場所でしか得られない原料は局地原料という。普遍原料を多く使う工業は、輸送費を抑えるため市場の近くに立地する。
原料の重さに比べて製品がずっと軽くなる工業は、原料地と市場のどちらに立地しやすいか?
原料地
重い原料を運ぶより、原料地で加工して軽くなった製品を運ぶ方が輸送費が安い。石灰石からセメントを作る工業が代表例。
2. 原料指向・市場指向・労働力指向
根拠: 学習指導要領 地理探究-A-(2)-ア-(ア)
同じように見える工場でも、何の費用がいちばん重いかで、選ぶ場所が変わります。
ビールや清涼飲料の工場が、大消費地の近くに多いのはなぜか?
原料の大部分がどこでも手に入る水で、製品が重く輸送費がかかるから
市場指向の典型。原料を運ぶ必要がほとんどない。
印刷・出版業が大都市に集まる理由は何か?
情報と顧客(出版社・広告主)が大都市に集まっているから
輸送費だけでなく、情報の集まる場所に近いことが立地の条件になる市場指向の例。
衣類の縫製や電気機械の組み立てのように、多くの人手を必要とする工業は、どこに立地しやすいか?
賃金の安い労働力が豊富な地域
労働力指向。先進国から、賃金の安いアジアなどの国へ工場が移ってきた。
3. 交通指向と電力指向
根拠: 学習指導要領 地理探究-A-(2)-ア-(ア)
原料を海外から輸入する国では、港が工場の立地を決めます。
製品が軽くて高価なら、空港の近くでも採算が合います。
日本の鉄鋼業や石油化学工業が、太平洋側の臨海部に集まるのはなぜか?
原料の鉄鉱石・石炭・原油を輸入に頼り、港で直接陸揚げできるから
埋め立て地に大規模な工場を建てやすいことも理由。交通指向(臨海指向)の型。
集積回路(IC)の工場が、空港や高速道路の近くにも立地できるのはなぜか?
小さく軽いのに高価で、航空機で運んでも輸送費が見合うから
九州に工場が多く集まった時期には、シリコンアイランドと呼ばれた。
アルミニウムの精錬が、水力発電の盛んなカナダやノルウェーなどで行われるのは、どの立地の型に当たるか?
電力指向
精錬に大量の電力を使うため、電力の安い場所が有利になる。
4. 集積指向と立地の移り変わり
根拠: 学習指導要領 地理探究-A-(2)-ア-(ア)
多くの部品を組み合わせる工業では、関連する工場が近くに集まることで費用が下がります。
また、原料の入手先や輸送の手段が変われば、同じ工業でも有利な立地の型が変わります。
関連する工場が近くに集まることで、部品の輸送費や取引の費用が下がり、技術や情報も得やすくなることを何というか?
集積の利益
集まりすぎると地価の上昇や交通の混雑が起き、集積の不利益が生じる。
1 台に数万点ともいわれる部品を使い、組み立て工場の周りに多くの部品工場が集まる代表的な工業は何か?
自動車工業
部品を必要なときに必要な量だけ届ける生産方式を支えるため、部品工場が組み立て工場の近くに集まる。
先進国の鉄鋼業の立地は、時代とともにどこからどこへ移ってきたか?
炭田・鉄山の近くから、原料を輸入しやすい臨海部へ
国内の石炭や鉄鉱石が掘り尽くされたり割高になったりして、海外の安い原料を港で受け取る方が有利になった。