世界の工業地域の変化
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領「地理探究」A (2) ア (ア) の「資源・エネルギーや農業,工業などに関わる諸事象」の空間的な規則性,傾向性を理解すること。
内容の取扱いは、技術革新などによって新たな産業が生まれたり成長したりすることを踏まえるよう求めています。
このノートは、先進国の工業地域が資源の産地から臨海部・新しい地域へ移ってきた流れ、新興工業国の成長、国際分業と産業の空洞化を扱います。
0. 何を押さえるか
工業の中心は、資源と労働力と技術の条件が変わるたびに移動してきました。
| 時期 | 主な動き | 例 |
|---|---|---|
| 18 世紀後半〜 | 産業革命。石炭・鉄鉱石の産地に工業地域ができる | イギリスのミッドランド、ドイツのルール |
| 20 世紀後半 | 原料の輸入が増え、鉄鋼などが臨海部へ移る。古い工業地域は衰退 | 日本の太平洋ベルト、アメリカのスノーベルトの衰退 |
| 1970 年代〜 | 先端技術産業が新しい地域に育つ。アジアで新興工業国が成長 | アメリカのサンベルト、アジア NIEs |
| 1990 年代〜 | 生産が国境を越えて分かれ、中国などが大きな生産拠点に | 国際分業、先進国の産業の空洞化 |
取り違えやすい分かれ目は次の 3 つ。
- 輸入代替型と輸出指向型。輸入代替型は輸入していた製品を国内で作る工業化。輸出指向型は外国資本を招いて輸出向けの製品を作る工業化で、アジア NIEs が成長した
- 垂直分業と水平分業。垂直分業は原料・部品を作る国と製品を作る国の分業。水平分業は同じくらいの工業水準の国どうしが、それぞれ得意な製品を作って交換する
- サンベルトはアメリカの南部、スノーベルトは北東部・五大湖周辺。温暖な南部へ新しい産業が伸びた
1. 先進国の工業地域の移り変わり
根拠: 学習指導要領 地理探究-A-(2)-ア-(ア)
産業革命期の工業は、石炭と鉄鉱石の産地に生まれました。
のちに国内の資源が尽きたり割高になったりすると、原料を輸入しやすい臨海部に工業の中心が移ります。
ドイツで、豊かな炭田とライン川の水運を生かして、重工業が発達した工業地域を何というか?
ルール工業地域
炭田を基盤に鉄鋼業が栄えたが、エネルギー革命以降は重工業が縮小し、新しい産業への転換が進められてきた。
ヨーロッパで、イギリス南部からベネルクス・ライン川沿い・北イタリアにかけて、人口と産業が集中する帯状の地域を何というか?
青いバナナ(ブルーバナナ)
地図上でバナナのような弧の形に見えることから呼ばれる。ヨーロッパの経済の中心軸とされる。
航空機の部品を複数のヨーロッパの国で作り、フランスのトゥールーズなどで最終的に組み立てる生産の仕組みは、何の例か?
ヨーロッパの国どうしの国際分業
エアバス社の例。国境を越えて部品を分担し、一国では難しい大きな事業を成り立たせている。
2. アメリカの工業地域の変化
根拠: 学習指導要領 地理探究-A-(2)-ア-(ア)
アメリカでは、北東部から五大湖の周辺にかけての古い工業地域が伸び悩み、南部や西部の新しい地域に工業の中心が移りました。
アメリカで、1970 年代以降に先端技術産業などが伸びた、北緯 37 度付近より南の温暖な地域を何というか?
サンベルト
温暖な気候、安い土地と労働力、州の優遇策などで企業が集まった。航空宇宙・電子などの産業が育った。
かつて鉄鋼業や自動車工業で栄えたが、工場の老朽化や外国との競争で伸び悩んだ、アメリカ北東部・五大湖周辺の地域を何というか?
スノーベルト(フロストベルト)
ピッツバーグの鉄鋼業やデトロイトの自動車工業が知られる。錆びた工場が並ぶ様子からラストベルトとも呼ばれる。
サンフランシスコの南、サンノゼ周辺に半導体や情報通信技術の企業が集まった地域を何というか?
シリコンバレー
大学や研究機関と企業が近くにあり、技術革新と新しい企業が次々に生まれる場になっている。
3. 新興工業国の成長
根拠: 学習指導要領 地理探究-A-(2)-ア-(ア)
1970 年代から、アジアやラテンアメリカの一部の国が急速に工業化を進めました。
外国の資本と技術を招き、輸出向けの工業を育てたことが成長の鍵になりました。
1970 年代から急速に工業化した韓国・台湾・ホンコン・シンガポールをまとめて何と呼ぶか?
アジア NIEs(新興工業経済地域)
国内市場が小さいので、外国の資本と技術を招いて輸出向けの工業を育てた。
外国の資本を招いて、輸出向けの製品を作ることで進める工業化を何というか?
輸出指向型工業化
それまで輸入していた製品を国内で作り、国内市場向けに売る輸入代替型工業化から転換して成長した国が多い。
関税の免除などの優遇措置で外国企業を招き、輸出向けの製品を作らせる区域を何というか?
輸出加工区
1960〜70 年代にアジアの国々で設けられた。中国は改革開放とともに、沿岸部に経済特区を設けて外国企業を招いた。
中国が 1978 年末から始めた改革開放政策で、外国の資本と技術を招くため、シェンチェンなど南部の沿岸部に設けた地区を何というか?
経済特区
税の優遇などで外国企業を集め、中国が「世界の工場」と呼ばれるほどの生産拠点になるきっかけになった。
4. 国際分業と産業の空洞化
根拠: 学習指導要領 地理探究-A-(2)-ア-(ア)
企業は、研究開発・部品の生産・組み立て・販売を、それぞれ最も有利な国に分けて行うようになりました。
その裏側で、生産を海外に移した先進国では、国内の雇用や技術が失われる問題が起きています。
工業国どうしが、それぞれ得意な工業製品を作って互いに輸出し合う分業を何というか?
水平分業
原料や部品を作る国と完成品を作る国の間の分業は垂直分業という。
工場が海外へ移ることで、国内の製造業が衰え、雇用が失われることを何というか?
産業の空洞化
日本では 1985 年のプラザ合意後の円高をきっかけに、工場の海外移転が進んだ。
自社では工場を持たずに製品の企画・設計に集中し、生産を他社に任せる企業を何というか?
ファブレス企業
生産を請け負う側の企業は、電子機器の受託生産(EMS)を担う。国際分業が企業の単位でも進んでいる例。