意味がいくつもある動詞
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
0. どういうまとまりか
動詞の意味を取り違えると、だれが何をしたかがずれて、話の筋そのものを読み違えます。
ここで扱うのは、活用の種類で意味が入れ替わる語、今の語と形が同じで中身が違う語、ほかの動詞の下に付いて意味を添える語です。
「おどろく」「ののしる」「ながむ(眺む)」の基本の訳は『言語文化』のノートの「古今異義語」に在るので、ここでは問い直しません。
| 語 | 四段活用 | 下二段活用 |
|---|---|---|
| たのむ(頼む) | 頼りにする・あてにする | 頼りにさせる・あてにさせる |
| かづく(被く) | かぶる/(褒美を)いただく | かぶせる/(褒美を)与える |
| 活用形 | 未然 | 連用 | 終止 | 連体 | 已然 | 命令 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| たのむ(四段) | たのま | たのみ | たのむ | たのむ | たのめ | たのめ |
| たのむ(下二段) | たのめ | たのめ | たのむ | たのむる | たのむれ | たのめよ |
分かれ目は次の 3 つ。
- 「たのむ」「かづく」は、四段なら自分がする、下二段なら相手にさせる。終止形は同じ形なので、ほかの活用形で見分ける。
- 今の語と同じ形の動詞は、古文で多い方の意味を先に当てる。「まもる」は見つめる、「おこなふ」は仏道修行をする、「念ず」は我慢する。
- 「わたる」「ありく」は、ほかの動詞の連用形に付くと補助動詞になる。動きの意味が薄れ、続くこと・広がることを表す。
1. 活用の種類で意味が変わる語
根拠: 学習指導要領 古典探究-(1)-ア
同じ「たのむ」でも、四段活用と下二段活用では、あてにする人とあてにさせる人が入れ替わります。活用形を決めることが、そのまま主語を決めることになります。
「たのむ」は、四段活用と下二段活用で意味がどう変わるか?
四段は「頼りにする・あてにする」、下二段は「頼りにさせる・あてにさせる」。
下二段は、相手に期待を持たせる、約束して信じさせるということ。恋の場面では、男が「また来る」とあてにさせることを言うことが多い。
(例文)「たのめしことを忘るな」の「たのめ」は四段か下二段か? どう訳すか?
下二段(連用形)。「あてにさせたこと(=約束したこと)を忘れるな」。
下の「し」は過去の助動詞「き」の連体形で、連用形に付く。四段の連用形は「たのみ」なので、「たのめし」の「たのめ」は下二段と決まる。
「かづく(被く)」は、四段活用と下二段活用で意味がどう変わるか?
四段は「かぶる」「(褒美を)いただく」、下二段は「かぶせる」「(褒美を)与える」。
褒美の衣は肩にかけて与えたので、この意味になる。(例文)「御衣をかづけたまふ」の「かづけ」は下二段の連用形で、褒美としてお与えになる。
「しのぶ」には、もとは別の 2 つの語がある。それぞれの意味と活用は?
忍ぶ=我慢する・人目を避ける(もとは上二段)と、偲ぶ=懐かしむ・思い慕う(もとは四段)。
「忍ぶることの弱りもぞする」(新古今集・式子内親王)の「忍ぶる」は上二段の連体形で、こらえる意味。平安時代から 2 つの活用が入り混じるので、最後は文脈で決める。
2. 見る・思うに関わる語
根拠: 学習指導要領 古典探究-(1)-ア
見ること、心に浮かぶことを表す動詞は、今の語と形が同じでも、指している動作が違います。
古語「まもる」の、今の「守る」とは違う意味は?
じっと見つめる・見守る
目(ま)で守(も)る、が語のもと。(例文)「児の顔をつくづくとまもる」=幼い子の顔をじっと見つめる。
古語「ながむ」には、「眺む」(物思いにふける)のほかに、別の語がある。漢字と意味は?
詠む。詩歌を、声を長く引いて口ずさむこと。
(例文)「古き歌をうちながめて」=古い歌を口ずさんで。どちらもマ行下二段なので、活用では見分けられず、歌や詩が前後にあるかで決める。
古語「おぼゆ」の 3 つの意味は?
(自然に)思われる、思い出される、似ている
「尼君の見上げたるに、少しおぼえたるところあれば、子なめりと見たまふ」(源氏物語・若紫)は「似ている」。「思ふ」に自発の意味が加わってできた語で、ヤ行下二段。
3. 動きを表す語と補助動詞
根拠: 学習指導要領 古典探究-(1)-ア
動きを表す動詞は、今より指す範囲が広く、またほかの動詞の下に付いて意味を添えます。
古語「わたる」が補助動詞(ほかの動詞の連用形に付く)のとき、どう訳すか?
時間なら「ずっと〜し続ける」、空間なら「一面に〜する」。
(例文)「年ごろ思ひわたる」=長年ずっと思い続ける。「霞たちわたる」=霞が一面に立つ。本動詞では、川や海に限らず「行く・来る・移る」を広く表す。
古語「ありく」の意味は? 補助動詞のときはどう訳すか?
動き回る・あちこち出歩く。補助動詞なら「〜して回る・〜し続ける」。
足で歩くことに限らず、舟や車、虫や鳥にも使う。(例文)「蛍の飛びありく」=蛍が飛び回る。
古語「ものす」は、どんな働きをする動詞か?
「あり・行く・来・言ふ・書く・食ふ」など、いろいろな動詞の代わりをする(サ行変格活用)。
何をするかをはっきり言わない言い方なので、前後から動作を決めて訳す。(例文)「いづこにものしたまふ人ぞ」=どこにいらっしゃる人か。「文ものす」=手紙を書く。
4. 暮らしと心に関わる語
根拠: 学習指導要領 古典探究-(1)-ア
信仰や習慣が今と違うので、同じ形の語が指す中身も違います。
古語「おこなふ(行ふ)」は、多くどんな意味で使われるか?
仏道修行をする・勤行(ごんぎょう)をする
「ただこの西面にしも、持仏すゑたてまつりて行ふ、尼なりけり」(源氏物語・若紫)。名詞「おこなひ」も仏道修行のこと。
古語「念ず」の 2 つの意味は?
(心の中で)祈ると、我慢する・こらえる
(例文)「仏を念ず」=仏に祈る。「痛きを念じて歩む」=痛いのをこらえて歩く。神仏が出てこない場面では「我慢する」を先に当てる。
古語「ならふ」の、「習ふ(学ぶ)」とは違う意味は?
慣れる・習慣になる・なじむ(慣らふ・馴らふ)
名詞「ならひ」は習慣・世の常。「朝に死に、夕べに生まるるならひ、ただ水の泡にぞ似たりける」(方丈記)。
古語「飽く」の、今の「飽きる」とは違う意味は? 「飽かず」はどう訳すか?
満足する。「飽かず」は「満足しない=もの足りない・名残惜しい」。
(例文)「飽かぬ別れ」=名残の尽きない別れ。「見れども飽かず」のように、いくら〜してもいやにならない、という良い意味にもなる。