みならいノート

古典探究 2027年度版

思想の文章

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0. どういうまとまりか

漢詩は五言・七言といった句の字数で形が決まりますが、散文はどういう形で考えを述べるかで種類が分かれます。
諸子百家の書物は、同じ「思想の文章」でも、問答の記録、長い議論、短い章句、たとえ話と、書き方がまったく違います。
ここでは思想の中身ではなく、文章の形と、その形に合った読み方を扱います。

書物 文章の形 読むときに見るところ
論語 語録体。短い言葉と問答 だれが、だれに言ったか
孟子 対話を重ねた長い議論。比喩が多い たとえが何を指しているか
老子 短い章句。人名も場面もほとんど無い。逆説と対句 どの常識を裏返しているか
荘子 寓話(寓言)。架空の人物や動物が語る 話の落ちが何を言おうとしているか
荀子・墨子 題を立てて筋道を追う論文の形 篇の題と、くり返される主張
韓非子 論文の形に、寓話を根拠として並べる 寓話のあとに来る主張

分かれ目は次の 3 つ。

1. 問答で進む文章(論語・孟子)

根拠: 学習指導要領 古典探究-(1)-イ

論語と孟子は、どちらも問答の形をとりますが、長さと進め方が違います。

『論語』の文章の形を何というか? どんな特徴があるか?

語録体。孔子と弟子たちの言葉や問答を、弟子たちが記録した短い章の集まり。
「子曰、巧言令色、鮮矣仁。」(子曰はく、巧言令色、鮮なし仁。『論語』学而)のように、場面の説明なしに言葉だけが置かれる章が多い。

『論語』の章が「弟子の名、問ひて曰はく…。子曰はく…。」の形になっているとき、どこに注意して読むか?

だれが問い、孔子がその相手にどう答えたかを確かめる。
前後の説明が無いので、問いと答えの組がそのまま文脈になる。孔子は相手に合わせて答えを変えることがある。

『孟子』の文章は、『論語』と比べてどんな形か?

王や論敵との対話を長く展開し、比喩やたとえ話を使って相手を説き伏せる議論の文章。
短い言葉の記録である論語に対し、問いと答えを何度も重ねて結論へ運ぶ。

『孟子』で、梁の恵王に「五十歩百歩」のたとえ(戦場で五十歩逃げた者が、百歩逃げた者を笑う話)を語ったのは、何を言うためか?

王の政治も隣の国の政治も、民のためになっていない点では大差が無いと言うため。
孟子のたとえ話は、「たとえの中のだれが、現実のだれにあたるか」を対応させて読む。

2. 章句と寓話(老子・荘子・韓非子・荀子)

根拠: 学習指導要領 古典探究-(1)-イ

問答の記録でない書物は、書き手の考えを別の形で伝えます。老子は短い言葉で、荘子と韓非子はたとえ話で、荀子は論文で語ります。

『老子』の文章には、どんな形の特徴があるか?

短い章句の集まりで、人名や問答・具体的な場面がほとんど出てこない。対句と逆説が多い。
全部で 81 章。だれがどこで言ったかという手がかりが無いので、言葉そのものの組み立てから読む。

『老子』の「柔弱勝剛強。」を書き下すと? この言い方のどこが逆説か?

「柔弱は剛強に勝つ」。ふつうは「強く堅いものが勝つ」と考えるのに、柔らかく弱いもののほうが勝つと言っているところ。
老子の逆説は、「世の中で当たり前とされているどの見方を裏返しているか」をつかむと読める。

『荘子』が考えを述べるのに多く使う形は何か? 例を 1 つ挙げると?

寓話(寓言)。架空の人物や動物の話に考えを託す。例は「胡蝶の夢」。
荘周が夢で蝶になり、覚めたあと、自分が蝶の夢を見たのか、蝶が自分になった夢を見ているのか分からなくなる話。

『韓非子』の「守株」(切り株にぶつかった兎を得た農夫が、また兎を得ようと株を見張り続ける話)は、何を言うために置かれた寓話か?

昔の聖王のやり方をそのまま今の政治に当てはめようとするのは、株を見張るのと同じだと言うため。
韓非子の寓話は主張の根拠として置かれるので、話のあとに来る結論までを読む。「矛盾」も韓非子の寓話。

『荀子』や『韓非子』の文章は、『論語』『孟子』と比べて、形がどう違うか?

問答の記録ではなく、篇ごとに題を立てて、筋道を追って論じる論文の形になっている。
『荀子』勧学の「青取之於藍、而青於藍。」(青は之を藍より取りて、藍よりも青し)は、学問によって人がもとの自分を超えていくことのたとえ。

3. 古文の文体(論・説・記・序)

根拠: 学習指導要領 古典探究-(1)-イ

唐の中ごろ、韓愈と柳宗元は、飾りの多い文体をやめて、漢より前の簡潔な散文に立ち返ろうと唱えました。
こうした散文は、目的によって種類が分かれ、題の末尾の字がその種類を示します。種類そのものは韓愈たちより前からあり、表の例には東晋の陶淵明・王羲之の文章も入っています。

種類 どんな文章か 例
論 物事の道理や是非を論じる 蘇洵「六国論」
説 ある事柄についての考えを、たとえを使って述べる 韓愈「雑説」「師説」、柳宗元「捕蛇者説」
記 出来事や風景、建物などを書きとめる 陶淵明「桃花源記」、范仲淹「岳陽楼記」
序 書物や詩の前に置き、趣旨やいきさつを述べる 王羲之「蘭亭序」、李白「春夜宴桃李園序」

六朝から唐にかけて盛んだった、4 字と 6 字の句を基本にして対句と典故を多く使う、飾りの多い文体を何というか?

駢文(四六駢儷文)
形の美しさを重んじる文体で、韓愈たちはこれを批判した。

唐の中ごろ、駢文に対して、漢より前の簡潔な散文に立ち返ることを唱えた 2 人はだれか?

韓愈と柳宗元
この動きを古文復興という。2 人に宋の欧陽脩・蘇洵・蘇軾・蘇轍・曾鞏・王安石を加えて唐宋八大家と呼ぶ。

「説」とはどんな文体か? 韓愈「雑説」の「世有伯楽、然後有千里馬。」を書き下すと?

ある事柄についての自分の考えを、たとえなどを使って述べる文章。書き下しは「世に伯楽有りて、然る後に千里の馬有り」。
訳: 世に馬を見分ける名人がいて、はじめて千里を走る名馬が現れる。名馬はすぐれた人材、伯楽はそれを見抜く人のたとえ。

「記」と「序」は、それぞれどんな文章か?

記は、出来事や風景、建物などを書きとめる文章。序は、書物や詩の前に置いて、その趣旨やいきさつを述べる文章。
題が「〜記」「〜序」で終わる。記は事実を述べたあとに、書き手の感想や考えが続くことが多い。

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