「る・れ」と「らむ」の識別
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
0. どういうまとまりか
「る」「れ」と「らむ」は、どれもすぐ上の音を見れば大半が決まります。
受身などの助動詞「る」は未然形に、完了・存続の助動詞「り」はサ変の未然形と四段の已然形(命令形とする説もある)に、現在推量の助動詞「らむ」は終止形に付く、という「言語文化」のノートの接続の知識を、音の形に直して使います。
| 形 | すぐ上の音 | 正体 | 例 |
|---|---|---|---|
| る・れ | a の音 | 受身・尊敬・自発・可能の助動詞「る」 | 笑はる・笑はれて |
| る・れ | e の音 | 完了・存続の助動詞「り」 | 咲ける花・咲けれども |
| る・れ | (上が動詞の形にならない) | 動詞の一部 | 流る・流れ・取れ |
| らむ | u の音 | 現在推量の助動詞「らむ」 | 泣くらむ |
| らむ | e の音 | 完了・存続の「り」の未然形「ら」+助動詞「む」 | 咲けらむ |
| らむ | (上が終止形でも e の音でもない) | 活用語尾の「ら」+助動詞「む」 | 帰らむ・あらむ・なからむ |
分かれ目は次の 3 つ。
- 上が a の音でも、上の部分が動詞の未然形になっていなければ助動詞ではない(「流れ」の「なが」は動詞ではない)。
- e の音+「る」を、今の「書ける」「読める」(〜できる)のつもりで読まない。古文では「り」で、「〜ている・〜た」。
- 「あらむ」と「あるらむ」は別のもの。上が u の音になっているほうだけが現在推量の「らむ」。
1. 「る・れ」を上の音で決める
根拠: 学習指導要領 古典探究-(2)-イ
受身などの「る」は下二段型、完了の「り」はラ変型に活用するので、同じ「る」「れ」でも活用形が違います。
上の音で決めたあと、下に続く語と合っているかを確かめると、取り違いを防げます。
体言の前や、「ぞ・なむ・や・か」の係り結びの結びに来る連体形は、受身などなら「るる」、完了・存続なら「る」です。
| 未然 | 連用 | 終止 | 連体 | 已然 | 命令 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 受身などの「る」 | れ | れ | る | るる | るれ | れよ |
| 完了・存続の「り」 | ら | り | り | る | れ | (れ) |
「る」「れ」が、受身などの助動詞「る」か、完了・存続の助動詞「り」かを、すぐ上の音で見分けると?
上が a の音なら受身などの「る」、e の音なら完了・存続の「り」
「る」は四段・ナ変・ラ変の未然形に付くので上が a の音、「り」はサ変の未然形・四段の已然形に付くので上が e の音になる(思はれず/思へれど)。
「るる」「るれ」の形を見たら、受身などの「る」と完了の「り」のどちらか? また、体言のすぐ上にある「る」1 字はどちらか?
「るる」「るれ」は受身などの「る」(連体形・已然形)。体言のすぐ上の「る」1 字は完了・存続の「り」(連体形)
受身などの「る」が体言に続くなら「るる」になる。『枕草子』の「姑に思はるる嫁の君」は受身。
例文「水流れて、岸の草乱る。」の「れ」「る」は、上が a の音なのに助動詞ではない。なぜそう言えるか?
上の「なが」「みだ」が、動詞の未然形になっていないから
「流れ」は下二段活用「流る」の連用形、「乱る」は下二段活用の終止形で、「る・れ」は動詞の一部。隠る・離る・忘る・恐る なども同じ。
例文「人に笑はれて、帰りけり。」の「れ」は何か? 上の語の活用形は?
受身の助動詞「る」の連用形。上の「笑は」はハ行四段活用「笑ふ」の未然形
上が a の音で、下に連用形に付く「て」が続いている。「人に」と相手が示されているので、意味は受身。
2. e の音の下の「る・れ」
根拠: 学習指導要領 古典探究-(2)-イ
e の音の下の「る・れ」は完了・存続の助動詞「り」です。
四段動詞の已然形のほか、サ変動詞の未然形「せ」の下にも現れます(旅せる人)。今の言葉の感覚で可能の意味に取るのが、いちばん多い誤りです。
『伊勢物語』の「道知れる人もなくて、まどひ行きけり」の「る」は何か? 上の語の活用形は?
存続の助動詞「り」の連体形。上の「知れ」はラ行四段活用「知る」の已然形
上が e の音で、下に体言「人」が続く。「道を知っている人もいなくて」(東下りの段)。
例文「花は咲けれども、見る人なし。」の「れ」は何か?
存続の助動詞「り」の已然形
上の「咲け」はカ行四段活用「咲く」の已然形(e の音)で、下に已然形に付く「ども」が続く。「花は咲いているけれども」。
例文「歌詠める人」を「歌を詠むことができる人」と訳すのは、なぜ誤りか?
「詠め」は四段活用「詠む」の已然形、「る」は完了・存続の助動詞「り」の連体形だから。「歌を詠んだ人・詠んでいる人」
「書ける」「読める」のような可能を表す動詞は後の時代にできたもので、平安時代の古文ではふつう使われない。
「袖ひちてむすびし水のこほれるを春立つけふの風やとくらむ」の「こほれる」を分けると?
ラ行四段活用「こほる」の已然形「こほれ」+存続の助動詞「り」の連体形「る」
「凍っているのを」。上が e の音。「る」の下に「水」が省かれて、格助詞「を」に続いている(紀貫之、『古今和歌集』)。
3. 「らむ」を上の音で決める
根拠: 学習指導要領 古典探究-(2)-イ
現在推量の「らむ」は終止形(ラ変型の語には連体形)に付くので、上は u の音になります。
上が u の音でなければ、「ら」は「り」の未然形か、ほかの語の活用語尾で、推量・意志を表しているのは「む」だけです。
「らむ」の形を、すぐ上の音で 3 つに分けると?
上が u の音なら現在推量の助動詞「らむ」、e の音なら「り」の未然形「ら」+「む」、どちらでもなければ活用語尾の「ら」+「む」
泣くらむ(今ごろ泣いているだろう)/咲けらむ(咲いているだろう)/帰らむ(帰ろう)。e の音のときは、上が四段の已然形(サ変なら「せ」)になっているかも確かめる。「照らむ」は四段活用「照る」の未然形「照ら」+「む」。
「憶良らは今は罷らむ子泣くらむそれその母も我を待つらむそ」の「罷らむ」と「泣くらむ」の「らむ」は、同じものか?
違う。「罷らむ」はラ行四段活用「罷る」の未然形「罷ら」+意志の「む」、「泣くらむ」は終止形「泣く」+現在推量の「らむ」
「私はもう退出しよう。子が今ごろ泣いているだろう」(山上憶良、『万葉集』)。「待つらむ」も現在推量。
例文「花の咲けらむ山を見ばや。」の「らむ」を分けると?
存続の助動詞「り」の未然形「ら」+婉曲の助動詞「む」
上の「咲け」は四段活用の已然形(e の音)。「花が咲いているような山を見たい」。「む」は下に体言が続くので婉曲。
「あらむ」と「あるらむ」の違いは?
「あらむ」はラ変動詞「あり」の未然形「あら」+「む」、「あるらむ」は連体形「ある」+現在推量の助動詞「らむ」
現在推量の「らむ」はラ変型の語には連体形に付くので、上が u の音になる。「あらむ」は「あるだろう」、「あるらむ」は「今ごろあるだろう」。
「なからむ」「いかならむ」「見ざらむ」の「らむ」は、現在推量の助動詞か?
違う。形容詞・形容動詞・打消の助動詞「ず」の未然形の語尾「ら」+助動詞「む」
「なから」「いかなら」「ざら」で 1 つの未然形。完了の「たらむ」、断定の「ならむ」も同じで、推量を表すのは「む」。