芳香族アミンと分離
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
根拠は高等学校学習指導要領(平成30年告示)「化学」の内容 (4) ア (ア) ㋒「芳香族化合物」。
内容の取扱いは芳香族アミンを扱うことを求めており、解説は芳香族化合物の分離に関する実験を
扱う例として挙げている。
0. どういう論点か
アニリンは、この単元で唯一の塩基です。酸と塩基の違いを使えば、
混ざった芳香族化合物を順番に取り出せます——これが分離の実験です。
| 加える試薬 | 水層へ移るもの |
|---|---|
| ① 塩酸 | アニリン(塩基) |
| ② 炭酸水素ナトリウム水溶液 | カルボン酸(炭酸より強い酸) |
| ③ 水酸化ナトリウム水溶液 | フェノール(炭酸より弱い酸) |
| 残る | 中性のもの(ニトロベンゼン・トルエンなど) |
引っかけの分かれ目は次の 3 つ。
- 塩になると水層へ、遊離すると有機層(エーテル層)へ
- ②で炭酸水素ナトリウムを使うのは、カルボン酸だけを取り出すため(フェノールは反応しない)
- アニリンはさらし粉で赤紫色(ニトロベンゼンは示さない)
1. アニリン
根拠: 学習指導要領 化学-(4)-ア-(ア)-㋒
芳香族アミンとは?代表的な化合物は?
ベンゼン環にアミノ基 −NH₂ がついた化合物。アニリン
窒素の非共有電子対が H⁺ を受け取るので、塩基として働く。
アニリンの水溶液の液性は?
弱い塩基性
有機化合物では珍しく塩基として働く。
アニリンはどうやって作る?
ニトロベンゼンをスズ(または鉄)と塩酸で還元する
得られるのはアニリン塩酸塩なので、水酸化ナトリウムを加えてアニリンを遊離させる。
アニリンに塩酸を加えるとどうなる?
アニリン塩酸塩になって水に溶ける
塩基なので酸と中和する。
アニリンにさらし粉水溶液を加えるとどうなる?
赤紫色になる
アニリンの検出に使う。
アニリンを二クロム酸カリウムで酸化すると何ができる?
黒色の物質(アニリンブラック)
染料として使われた。
アニリンに無水酢酸を作用させると何ができる?
アセトアニリド
−NH₂ がアセチル化される(アミド結合ができる)。
2. ジアゾ化とカップリング
根拠: 学習指導要領 化学-(4)-ア-(ア)-㋒
アニリンを低温で亜硝酸ナトリウムと塩酸に作用させると何ができる?
塩化ベンゼンジアゾニウム(ジアゾ化)
5 ℃ 以下に冷やして行う。
ジアゾ化を低温で行うのはなぜ?
温度が高いとジアゾニウム塩が分解して、フェノールと窒素になるから
氷冷しながら反応させる。
塩化ベンゼンジアゾニウムにナトリウムフェノキシドを加えるとどうなる?
橙赤色の p-ヒドロキシアゾベンゼンができる(カップリング)
アゾ基 −N=N− をもつ化合物は染料になる。
アゾ化合物が色をもつのはなぜ?
アゾ基を含む構造が可視光を吸収するから
アゾ染料として広く使われる。
3. 分離の手順
根拠: 学習指導要領 化学-(4)-ア-(ア)-㋒
芳香族化合物の分離で、塩になった化合物はどちらの層へ移る?
水層
イオンになるので水に溶けやすくなる。遊離すると有機層(エーテル層)へ戻る。
アニリン・安息香酸・フェノール・ニトロベンゼンの混合物から、最初に何を分ける?
塩酸を加えてアニリンを水層へ移す
唯一の塩基なので、真っ先に分けられる。
次に炭酸水素ナトリウム水溶液を加えると、何が水層へ移る?
安息香酸(カルボン酸)
フェノールは炭酸より弱い酸なので反応せず、有機層に残る。
最後に水酸化ナトリウム水溶液を加えると何が水層へ移る?
フェノール
残った有機層には中性のニトロベンゼンだけが残る。
水層に移した化合物を取り出すには、どうする?
塩を分解する試薬を加えて遊離させ、エーテルで抽出する
アニリンの水層には塩基を、安息香酸やフェノールの水層には酸を加える。