気液平衡と蒸気圧
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
根拠は高等学校学習指導要領(平成30年告示)「化学」の内容 (1) ア (ア) ㋐「状態変化」。
内容の取扱いは「『状態間の平衡』については、気液平衡や蒸気圧を扱うこと」を求めており、
解説はその際に蒸気圧曲線や沸騰にも触れるとしている。
0. どういう論点か
密閉した容器に液体を入れて放っておくと、見かけ上、蒸発が止まったように見えます。
止まってはいません。蒸発する分と戻る分が同じ数になっただけです。
この「両方向に進んでいるが、見かけは動かない」が 平衡 で、
あとの単元(化学平衡・電離平衡)でも同じ考え方をそのまま使います。
| 蒸発 | 沸騰 | |
|---|---|---|
| 起きる場所 | 液面だけ | 液体の内部から(泡ができる) |
| 起きる温度 | どの温度でも | 蒸気圧=外圧になった温度 |
引っかけの分かれ目は次の 3 つ。
- 蒸気圧は温度だけで決まる(液体の量にも、容器の大きさにもよらない)
- 沸点は外圧で変わる(山の上では低く、圧力鍋の中では高い)
- 平衡は「止まった」のではなく「両方向の速さが等しくなった」
1. 気液平衡
根拠: 学習指導要領 化学-(1)-ア-(ア)-㋐
密閉容器の中で、蒸発する分子の数と凝縮する分子の数が等しくなった状態を何という?
気液平衡
見かけ上、液量も気体の量も変化しなくなる。
気液平衡では、蒸発も凝縮も止まっているか?
止まっていない。どちらも起きていて、速さが等しいだけ
見かけ上変化が無い状態を動的平衡という。
気液平衡にあるとき、その蒸気が示す圧力を何という?
蒸気圧(飽和蒸気圧)
その温度でその液体が示せる、蒸気の圧力の上限にあたる。
一度気液平衡になった容器を、そのまま長く置いておくと液体はいずれ全部蒸発する?
しない
出ていく数と戻る数が等しいので、液量は変わらないまま保たれる。
2. 蒸気圧の性質
根拠: 学習指導要領 化学-(1)-ア-(ア)-㋐
ここが取り違えの本命です。蒸気圧を変えられるのは温度だけで、
入れた液体の量や容器の体積では変わりません。
蒸気圧の大きさは何で決まる?
物質の種類と温度だけ
液体の量・容器の体積・気体の量では変わらない。
気液平衡の容器に、液体をさらに注ぎ足した。蒸気圧はどうなる?
変わらない
液面が広がれば蒸発も凝縮も同じだけ増えるので、つり合う圧力は同じ。
気液平衡の容器を、温度を保ったままゆっくり圧縮した。蒸気圧はどうなる?
変わらない(液体が残っているかぎり)
圧縮された分だけ蒸気が凝縮して液体に戻り、圧力は蒸気圧のまま保たれる。
温度を上げると蒸気圧はどうなる?
大きくなる
熱運動が激しくなり、液面から飛び出せる分子が増えるため。
同じ温度で蒸気圧が大きい液体は、分子間力が強いか弱いか?
弱い
引き止める力が弱いほど蒸発しやすい。蒸気圧の大きい物質を揮発性が高いという。
ジエチルエーテルと水では、常温で蒸気圧が大きいのはどちら?
ジエチルエーテル
水は水素結合で強く引き合っているので蒸発しにくく、蒸気圧が小さい。
3. 沸騰と蒸気圧曲線
根拠: 学習指導要領 化学-(1)-ア-(ア)-㋐
沸騰は「熱いから起きる」のではなく、蒸気圧が外圧に追いついたから起きます。
この 1 行で、山の上の話も圧力鍋の話も減圧の実験も説明できます。
沸騰が起こるのは、蒸気圧がどうなったとき?
蒸気圧が外圧(大気圧)と等しくなったとき
液体の内部でも蒸気の泡が作れるようになるため、内部から気化が始まる。
沸点の定義は?
外圧が 1.013 × 10⁵ Pa(1 atm)のときに沸騰する温度
外圧が違えば沸騰する温度も違うので、圧力を決めないと沸点は決まらない。
富士山の山頂で水が 100 ℃ より低い温度で沸騰するのはなぜ?
外圧(大気圧)が低く、蒸気圧が小さいうちに外圧と等しくなるから
沸点が下がるので、米が芯を残して炊き上がる。
圧力鍋の中で水が 100 ℃ を超えても沸騰しないのはなぜ?
外圧が 1 atm より高く、蒸気圧が外圧に追いつかないから
沸点が上がるぶん、高い温度で調理できる。
常温の水を容器に入れて減圧していくと、やがて沸騰する。これはなぜ?
外圧を下げていくと、常温の蒸気圧でも外圧に等しくなるから
温度を上げなくても沸騰は起こせる(減圧下での沸騰)。
蒸気圧曲線とは何を表したグラフ?
温度(横軸)と蒸気圧(縦軸)の関係
外圧を表す横線との交点が、その圧力での沸点になる。
蒸気圧曲線が左上にある液体ほど、どんな性質といえる?
低い温度で大きな蒸気圧を示す=蒸発しやすい(揮発性が高い)
同じ外圧で比べたとき、沸点が低いほうにあたる。