平衡の移動
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
根拠は高等学校学習指導要領(平成30年告示)「化学」の内容 (2) ア (イ) ㋑「化学平衡とその移動」。
内容の取扱いは「化学平衡の移動」についてルシャトリエの原理を中心に扱うことを求めており、
解説は平衡が触媒の影響を受けないことやアンモニアの工業的製法に触れるとしている。
0. どういう論点か
ルシャトリエの原理——平衡状態にある系に変化を加えると、
その変化を和らげる向きに平衡が移動します。
| 加える変化 | 移動する向き |
|---|---|
| 濃度を増やす | その物質が減る向き |
| 圧力を上げる | 気体の分子数が減る向き |
| 温度を上げる | 吸熱の向き |
引っかけの分かれ目は次の 3 つ。
- 触媒では平衡は動かない(速く到達するだけ)
- 体積一定で他の気体を加えても動かない(各成分の分圧が変わらないため)
- 気体の分子数が両辺で等しければ、圧力を変えても動かない
1. ルシャトリエの原理
根拠: 学習指導要領 化学-(2)-ア-(イ)-㋑
ルシャトリエの原理とは?
平衡状態にある系に変化を与えると、その変化を和らげる向きに平衡が移動する
濃度・圧力・温度の変化に当てはめて使う。
反応物の濃度を大きくすると、平衡はどちらへ移動する?
生成物のほう(右)へ
加えた反応物を減らす向きに動く。
生成物を取り除き続けると、平衡はどちらへ移動する?
生成物のほう(右)へ
減ったぶんを補う向きに動くので、反応を進め続けられる。
平衡が移動しても、平衡定数 K は変わる?
濃度や圧力の変化では変わらない
温度を変えたときだけ K が変わる。
2. 圧力と温度
根拠: 学習指導要領 化学-(2)-ア-(イ)-㋑
圧力を高くすると、平衡はどちらへ移動する?
気体の分子数(係数の和)が小さいほうへ
分子数を減らして圧力を下げようとする。
N₂ + 3H₂ ⇄ 2NH₃ で、圧力を上げると平衡はどちらへ動く?
右(アンモニアが増える向き)
左辺 4 分子に対し右辺 2 分子なので、右のほうが分子数が少ない。
反応の前後で気体の分子数が等しいとき、圧力を変えると平衡はどうなる?
移動しない
H₂ + I₂ ⇄ 2HI(2 分子 ⇄ 2 分子)がその例。
温度を上げると、平衡はどちらへ移動する?
吸熱の向き(ΔH が正の向き)へ
加えた熱を吸収して和らげようとする。
発熱反応で温度を上げると、生成物の割合はどうなる?
減る
吸熱の向き(逆反応)へ移動するため。
体積を一定にしたまま、反応に関係しないアルゴンを加えると平衡はどうなる?
移動しない
全圧は上がるが、各成分の分圧(濃度)は変わらないため。
全圧を一定にしたまま、反応に関係しない気体を加えると平衡はどうなる?
気体の分子数が多いほうへ移動する
体積が増えて各成分の分圧が下がるので、圧力を下げたのと同じになる。
触媒を加えると、平衡はどちらへ移動する?
移動しない
正反応も逆反応も同じだけ速くなり、平衡に達する時間だけが短くなる。
3. 工業的製法で確かめる
根拠: 学習指導要領 化学-(2)-ア-(イ)-㋑
収率(どこまで進むか)と速度(どれだけ速いか)は別の話です。
工業的製法は、この 2 つを妥協させた条件を選んでいます。
ハーバー・ボッシュ法の反応式と、その ΔH の符号は?
N₂ + 3H₂ ⇄ 2NH₃、ΔH は負(発熱)
発熱なので、収率だけを考えれば低温が有利。
アンモニアの収率だけを考えるなら、温度と圧力はどうするのが有利?
低温・高圧
発熱の向きへ動かし、分子数の少ない側へ動かすため。
それでも実際には高温(約 500 ℃)で行うのはなぜ?
低温では反応速度が小さすぎて、平衡に達するまで時間がかかりすぎるから
収率を少し犠牲にして、速度を取っている。
接触法で SO₂ を SO₃ にする反応も、同じ悩みを抱えている。どんな条件で行う?
触媒(酸化バナジウム(Ⅴ))を使い、比較的低い温度で行う
触媒で速度を補えば、収率に有利な低温を選べる。