実在気体と理想気体
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
根拠は高等学校学習指導要領(平成30年告示)「化学」の内容 (1) ア (ア) ㋑「気体の性質」。
内容の取扱いは「実在気体も扱うこと」を求めており、解説は理想気体との違いと
「理想気体の状態方程式の適用条件」を扱うとしている。
0. どういう論点か
pV = nRT は、2 つの都合のよい仮定の上に成り立っています。実際の気体はどちらも満たしません。
| 理想気体 | 実在気体 | |
|---|---|---|
| 分子自身の体積 | 無い(点とみなす) | ある |
| 分子間力 | 働かない | 働く |
| pV = nRT | 常に厳密に成り立つ | ずれる |
引っかけの分かれ目は次の 3 つ。
- 高温・低圧ほど理想気体に近づく(分子が遠く、速く動くため)
- 分子自身の体積は pV を大きくする側、分子間力は pV を小さくする側にずらす
- 理想気体は冷やしても液体にならない(分子間力が無いので集まれない)
1. 理想気体という約束
根拠: 学習指導要領 化学-(1)-ア-(ア)-㋑
理想気体とは、どんな気体のことか?
分子自身の体積が無く、分子間力も働かないと仮定した気体
pV = nRT が厳密に成り立つ、都合のよい模型。
理想気体を冷やしていくと、やがて液体になるか?
ならない
分子間力が無いので、集まって液体になることができない。
実在気体が理想気体とずれるのは、どんな理由からか(2 つ)?
分子自身に体積があることと、分子間力が働くこと
この 2 つを無視した式が pV = nRT。
2. どんな条件でずれるか
根拠: 学習指導要領 化学-(1)-ア-(ア)-㋑
「分子どうしが遠く、速く動いていれば、理想気体に近い」と考えると全部説明できます。
遠ければ分子の体積も分子間力も効かず、速ければ引き合っても捕まりません。
実在気体が理想気体に近づくのは、どんな条件?
高温・低圧
分子の間隔が広く、熱運動が激しいほど、2 つの仮定が実際に近くなる。
圧力を高くしていくと、実在気体が理想気体からずれるのはなぜ?
分子どうしが近づき、分子自身の体積と分子間力が無視できなくなるから
押し込むほど「点ではない」ことが効いてくる。
温度を下げていくと、実在気体が理想気体からずれるのはなぜ?
熱運動が弱まり、分子間力の影響を受けやすくなるから
やがて凝縮して液体になる。
分子間力が強い気体ほど、理想気体からのずれは大きいか小さいか?
大きい
同じ条件なら、H₂ や He より NH₃ や H₂O のほうがずれる。
同じ条件で比べたとき、He と CO₂ では理想気体に近いのはどちら?
He
分子が小さく、分子間力(ファンデルワールス力)が弱いため。
3. ずれの向きを読む
根拠: 学習指導要領 化学-(1)-ア-(ア)-㋑
ずれには向きがあります。2 つの原因は逆向きに効くので、
どちらが勝っているかで pV / (nRT) が 1 より大きくも小さくもなります。
分子間力だけが効いているとき、実在気体の pV は理想気体より大きいか小さいか?
小さい
引き合うぶん、壁にぶつかる勢いが弱まり、圧力が小さくなる。
分子自身の体積だけが効いているとき、実在気体の pV は理想気体より大きいか小さいか?
大きい
分子が動ける空間が見かけより狭く、そのぶん圧力が大きくなる。
非常に高い圧力では、pV / (nRT) は 1 より大きくなるか小さくなるか?
大きくなる
分子自身の体積の効果が、分子間力の効果を上回るため。
中くらいの圧力で pV / (nRT) が 1 より小さくなるのはなぜ?
分子間力の効果のほうが大きいから
圧力を上げていくと、いったん下がってから上がる曲線になる。
理想気体では、pV / (nRT) はどんな値になる?
どの温度・圧力でも常に 1
実在気体のグラフは、この 1 の水平線からのずれとして読む。