職業選択と産業構造
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 公共 B ア (ウ) の「職業選択」。内容の取扱いは、これを産業構造の変化と、その中での起業と結び付けて理解するよう求めています。
0. 何を押さえるか
どんな仕事を選べるかは、個人の希望だけでなく、その時代にどの産業が伸びているかで大きく変わります。
経済が発展するにつれて、働く人の中心は農業から工業へ、工業からサービス業へと移ってきました。
自分で事業を始める起業も、雇われて働くことと並ぶ職業選択の一つです。
| 産業 | 中身 | 日本での動き |
|---|---|---|
| 第 1 次産業 | 農業・林業・漁業(自然から直接とる) | 高度経済成長期に就業者が大きく減った |
| 第 2 次産業 | 鉱業・製造業・建設業(加工してつくる) | 高度経済成長期に増え、その後は横ばいから減少 |
| 第 3 次産業 | 商業・金融・運輸・情報通信・医療・福祉などのサービス | 増え続け、いまは就業者の大半を占める |
取り違えやすい分かれ目は次の 3 つ。
- ペティ=クラークの法則は「産業の中心が第 1 次 → 第 2 次 → 第 3 次へ移る」という経験則(第 3 次から戻るという話ではない)
- 経済のサービス化(第 3 次産業が増える)と経済のソフト化(ものより知識・情報の価値が増す)は別の言葉
- 職業選択の自由は憲法 22 条、勤労の権利と義務は憲法 27 条
数の目安: 2020 年の国勢調査では、就業者のおよそ 7 割余りが第 3 次産業で働いています(総務省)。この割合は調査ごとに動くので、カードの答えにはしていません。
1. 職業選択と憲法
根拠: 学習指導要領 公共-B-ア-(ウ)
職業を選ぶことは、生活の糧を得ることであると同時に、自分の能力を生かして社会に参加することでもあります。
憲法は、仕事を選ぶ自由と、働くことについての権利・義務を別の条文に書いています。
「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する」と定める憲法の条文は?
憲法 22 条 1 項
職業選択の自由は経済活動の自由の一つ。「公共の福祉に反しない限り」とあるので、資格制度や営業の規制で制限されることがある。
すべて国民は「勤労の権利を有し、義務を負ふ」と定める憲法の条文は?
憲法 27 条 1 項
同じ条の 2 項が「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める」とし、これを受けて労働基準法がつくられた。
職業選択の自由が「公共の福祉」によって制限される例を 1 つ挙げると?
医師・弁護士などの資格制度/飲食店などの営業許可
人の生命や安全に関わる仕事は、誰でもすぐに始められるわけではない。自由の制限は、その目的に照らして必要な範囲に限られる。
2. 産業構造の変化
根拠: 学習指導要領 公共-B-ア-(ウ)
経済が発展するにつれて、産業の中心が第 1 次産業から第 2 次産業、さらに第 3 次産業へ移っていくという経験則を何という?
ペティ=クラークの法則
所得が増えると、人々の支出が食べ物より工業製品へ、さらにサービスへ向かうことが背景にある。
産業全体の中で第 3 次産業(サービス業)の比重が高まることを何という?
経済のサービス化
同じ時期に進んだ、ものそのものより知識・情報・技術の価値が高まる変化は「経済のソフト化」と呼ぶ。
日本で第 1 次産業の就業者が大きく減り、第 2 次産業の就業者が増えたのはどの時期か?
高度経済成長期(1950 年代半ば〜1970 年代初め)
農村から都市へ人が移り、工業の働き手になった。
石油危機(1970 年代)のあと、日本の産業の中心は、鉄鋼や化学のような素材型の重化学工業から、どのような産業へ移ったか?
自動車・電気機械などの加工組立型産業、さらに情報・知識を多く使う知識集約型の産業
エネルギーと資源を大量に使う産業(重厚長大)から、軽く小さく付加価値の高い産業(軽薄短小)へ、と言い表される。
企業が工場を海外へ移すことで、国内の生産と雇用が減っていく現象を何という?
産業の空洞化
経済のグローバル化と円高の時期に目立った。産業構造の変化が、ある地域の仕事の数を直接に減らす例。
3. 起業
根拠: 学習指導要領 公共-B-ア-(ウ)
起業とは、自分で新しく事業を始めることです。産業構造が変わると、それまで無かった仕事が生まれ、その多くは新しく興された企業が担います。
会社のかたちでいちばん多いのが株式会社で、出資者(株主)は出したお金の範囲でしか責任を負いません。
新しい技術やアイデアをもとに事業を起こし、急速な成長をめざす中小企業を何という?
ベンチャー企業
特に創業まもない企業はスタートアップとも呼ばれる。こうした企業に出資する会社をベンチャーキャピタルという。
株式会社の株主は、会社が倒産したとき、どこまで責任を負うか?
出資した額の範囲まで(有限責任)
出資額を超えて会社の借金を返す義務はない。このため多くの人から資金を集めやすく、事業を起こしやすい。
2005 年に制定された会社法で、株式会社の設立について大きく変わった点は?
最低資本金の規制がなくなり、資本金 1 円からでも株式会社をつくれるようになった
以前は株式会社に 1,000 万円以上の資本金が必要だった。起業のハードルを下げる改正だった。
株式会社で、会社の所有者(株主)と、実際に経営する人(経営者)が分かれていることを何という?
所有と経営の分離
株主は株主総会で取締役を選び、経営は取締役に任せる。
新しい技術や生産方法、新しい市場の開拓などによって経済を発展させる「新結合」を、経済発展の原動力と考えた経済学者は?
シュンペーター
この新結合をイノベーション(技術革新)と呼ぶ。起業家(企業家)がその担い手とされた。