民主主義と法の支配
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 公共 A 公共の扉 (3) ア (イ)「人間の尊厳と平等,個人の尊重,民主主義,法の支配,自由・権利と責任・義務など,公共的な空間における基本的原理」。
内容の取扱いは「日本国憲法との関わりに留意して指導すること」、「人間の尊厳と平等,個人の尊重」については「男女が共同して社会に参画することの重要性についても触れること」を求めています。
0. 何を押さえるか
公共的な空間の基本的原理は、日本国憲法の条文にそのまま書かれています。原理と条文の組で押さえると、B(法・政治・経済)でくり返し使えます。
| 原理 | 日本国憲法 | 中身 |
|---|---|---|
| 個人の尊重 | 13 条 | すべて国民は、個人として尊重される |
| 平等 | 14 条 | 法の下の平等。人種・信条・性別・社会的身分・門地で差別されない |
| 両性の平等 | 24 条 | 家族に関する法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚する |
| 自由・権利と責任 | 12 条 | 不断の努力で保持し、濫用せず、公共の福祉のために利用する責任を負う |
| 人権の永久性 | 11 条・97 条 | 侵すことのできない永久の権利 |
| 国民主権(民主主義) | 前文・1 条 | 国政は国民の厳粛な信託による |
| 法の支配 | 98 条・99 条 | 憲法は最高法規。公務員に憲法尊重擁護義務 |
引っかけの分かれ目は次の 3 つ。
- 「個人として尊重される」は 13 条、「法の下に平等」は 14 条(隣どうしなので入れ替えやすい)
- 法の支配と法治主義は違う(法の支配は法の中身も人権を守るものであることを求める)
- 99 条の憲法尊重擁護義務の名宛人に「国民」は入っていない(憲法は権力をしばるもの=立憲主義)
1. 人間の尊厳と平等・個人の尊重
根拠: 学習指導要領 公共-A-(3)-ア-(イ)
一人一人の人間は、他の何かのための手段ではなく、それ自体としてかけがえのない存在です(人間の尊厳)。
だから人は等しく扱われ(平等)、社会はまず個人を大切にしなければなりません(個人の尊重)。
日本国憲法で「すべて国民は、個人として尊重される」と定め、生命・自由・幸福追求に対する国民の権利を保障している条は?
13 条
個人の尊重と幸福追求権。新しい人権(プライバシーの権利など)の根拠にもなる。
日本国憲法 14 条が、差別されない理由として挙げている 5 つは?
人種・信条・性別・社会的身分・門地
「すべて国民は、法の下に平等であつて」と始まり、政治的・経済的・社会的関係で差別されないとする。
日本国憲法で、婚姻は両性の合意のみに基づいて成立し、家族に関する法律は「個人の尊厳と両性の本質的平等」に立脚して作るべきだと定めている条は?
24 条
家制度の下で男女が不平等だった大日本帝国憲法の時代からの転換を示す条文。
2. 男女が共同して社会に参画すること
根拠: 学習指導要領 公共-A-(3)-ア-(イ)
憲法が平等を定めても、「男は仕事・女は家庭」のような固定的な役割分担の慣行が残れば、実際の機会は平等になりません。
学習指導要領が、人間の尊厳と平等・個人の尊重の学習で男女が共同して社会に参画することの重要性に触れるよう求めているのはこのためです。
1999 年に制定され、男女が社会の対等な構成員として、あらゆる分野の活動に参画する機会が確保される社会の形成をめざす法律は?
男女共同参画社会基本法
国・地方公共団体の責務に加え、国民も社会のあらゆる分野で男女共同参画社会の形成に寄与するよう努めるとする(10 条)。
男女間の機会の格差を改善するため、必要な範囲内で男女のいずれか一方に機会を積極的に提供することを、男女共同参画社会基本法は何と呼ぶ?
積極的改善措置(ポジティブ・アクション)
基本法 2 条 2 号の定義。形式的な平等だけでは埋まらない格差を、実際に縮めるための措置。
1979 年に国連で採択され、日本が 1985 年に批准した、女性に対するあらゆる差別の撤廃を求める条約は? 批准に合わせて日本が整えた法律は?
女子差別撤廃条約、男女雇用機会均等法(1985 年)
批准のために国内法の整備が必要になり、1985 年に勤労婦人福祉法を改正する形で、雇用での男女差別をなくす男女雇用機会均等法が成立した。
3. 民主主義
根拠: 学習指導要領 公共-A-(3)-ア-(イ)
民主主義は、政治の最終的な決定権(主権)が国民にあり、国民の意思に基づいて政治を行う考え方です。
日本国憲法は前文で、国政は「国民の厳粛な信託」によるもので、その権力は国民の代表者が行使し、その福利は国民が受けると述べています。
リンカンが 1863 年のゲティスバーグ演説で民主政治の本質を表した言葉は?
人民の、人民による、人民のための政治
国民主権(人民の)・国民による統治(人民による)・国民の利益(人民のための)の 3 つを表す。
多数決で決めることが、多数派が少数派の自由や権利を押しつぶすことにつながる危険を何という?
多数者の専制
トクヴィルが『アメリカのデモクラシー』で指摘し、ミルも『自由論』で論じた。民主主義は多数決と少数意見の尊重をセットで持つ。
4. 法の支配と自由・権利と責任・義務
根拠: 学習指導要領 公共-A-(3)-ア-(イ)
「国王といえども神と法の下にある」(ブラクトン)——権力を持つ者も法に従わなければならない、というのが法の支配です。
その法のいちばん上に人権を守る憲法を置き、憲法で権力をしばる考え方を立憲主義といいます。
| 法の支配 | 法治主義(19 世紀ドイツ型) | |
|---|---|---|
| 重視するもの | 法の内容が人権を守る正しいものであること | 法の形式(議会が定めた法律に従っていること) |
| 危うさ | — | 法律さえ作れば人権を制限できてしまう |
権力者も含めすべての者が、人権を守る正しい内容の法に従わなければならない、という原理を何という? 形式が整っていればよいとする考えは?
法の支配(イギリスで発達)。形式を重視するのは法治主義(19 世紀ドイツで発達)
法の支配は法の内容の正しさまで求める点が違う。
日本国憲法 99 条で、憲法を尊重し擁護する義務を負うとされているのは誰か?
天皇・摂政・国務大臣・国会議員・裁判官その他の公務員
国民は挙げられていない。憲法は権力を使う側をしばるもの、という立憲主義の表れ。
日本国憲法 12 条は、憲法が保障する自由と権利について、国民に何を求めているか?
不断の努力によって保持すること、濫用しないこと、常に公共の福祉のために利用する責任を負うこと
自由・権利は、それを支える責任・義務と一体で成り立つ。
日本国憲法が国民に課している三つの義務は?
子女に普通教育を受けさせる義務(26 条)・勤労の義務(27 条)・納税の義務(30 条)
憲法の条文の大部分は権利の保障で、国民の義務として明記されているのはこの 3 つ。