市場の失敗と政府の役割
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 公共 B ア (ウ) の「市場経済の機能と限界」のうち限界の側。
学習指導要領は、市場経済システムを機能させたり国民福祉の向上に寄与したりする役割を、政府などが担っていることを理解するよう求めています。
0. 何を押さえるか
市場経済のしくみ で見た価格の働きは、前提が崩れるとうまくいきません。
市場に任せたままでは資源の効率的な配分が実現しないことを市場の失敗といい、政府が手を入れる理由になります。
| 市場の失敗 | 何が起きるか | 政府の対応の例 |
|---|---|---|
| 独占・寡占 | 競争が弱まり、価格が高止まりする | 独占禁止法・公正取引委員会 |
| 外部不経済 | 取引の外にいる人に被害が出る(公害など) | 規制・環境税 |
| 公共財 | 誰も費用を払わず、市場では供給されない | 税で政府が供給する |
| 情報の非対称性 | 情報を持たない側が損をする | 表示の義務づけ・消費者保護の法律 |
取り違えやすい分かれ目は次の 3 つ。
- 外部経済(周りによい影響)と外部不経済(周りに悪い影響)。公害は外部不経済
- 公共財の性質は非競合性(みんなで同時に使える)と非排除性(払わない人を締め出せない)
- 寡占の市場では、価格が下がりにくく(価格の下方硬直性)、競争が広告やデザインなど価格以外に向かう
1. 独占・寡占
根拠: 学習指導要領 公共-B-ア-(ウ)
ある商品の市場を、少数の大企業が支配している状態を何という?
寡占
1 社だけが支配するのは独占。自動車・ビール・携帯電話などの市場が寡占の例とされる。
寡占の市場で、最も力のある企業(プライス・リーダー)が決めた価格にほかの企業が従うことで決まる価格を何という?
管理価格
需要が減っても価格が下がりにくくなる。この性質を価格の下方硬直性という。
寡占の市場で、価格ではなく広告・デザイン・品質・アフターサービスで行われる競争を何という?
非価格競争
価格で争うと互いに利益を削るので、価格以外で差をつけようとする。
独占や、企業どうしが価格を申し合わせるカルテルなどを禁じ、公正で自由な競争を守るための法律と、それを運用する行政委員会は?
独占禁止法/公正取引委員会
公正取引委員会は内閣から独立して職権を行う行政委員会。
2. 外部性・公共財・情報の非対称性
根拠: 学習指導要領 公共-B-ア-(ウ)
ある経済活動が、市場での取引を通さずに、第三者に悪い影響を与えることを何という?
外部不経済
工場の排煙による公害が典型。被害の費用が価格に入らないので、生産が社会にとって望ましい量より多くなる。
ある経済活動が、市場での取引を通さずに、第三者によい影響を与えることを何という?
外部経済
駅ができて周辺の商店の客が増える、など。外部不経済と対にして覚える。
公共財が持つ 2 つの性質とは?
非競合性(多くの人が同時に使える)と非排除性(費用を払わない人の利用を締め出せない)
一般道路・灯台・国防などが例。
公共財が市場では十分に供給されないのはなぜか?
費用を払わずに利用する人(フリーライダー)が出て、企業が代金を回収できないから
このため、政府が税を財源として供給する。
売り手と買い手の間で、商品についての情報の量や質に差があることを何という?
情報の非対称性
中古車の売買が典型例。情報を持たない側が不利になり、よい品物が市場で取引されにくくなることもある。
3. 政府の役割と国民福祉の向上
根拠: 学習指導要領 公共-B-ア-(ウ)
政府の役割は、市場の失敗を補うことだけではありません。
市場は、能力や財産の差をそのまま所得の差として映すので、所得の格差は市場だけでは縮まりません。
また景気の波で失業が増えることもあります。学習指導要領は、市場経済システムを機能させる役割と並べて、国民福祉の向上に寄与する役割を政府などが担うと書いています。
どこまでを政府が担うべきかは、立場によって考えが分かれます。
市場経済の中で、政府などが担う 2 つの役割とは?
市場経済システムを機能させる役割と、国民福祉の向上に寄与する役割
前者は競争のルールづくりや市場の失敗の是正、後者は社会保障や所得の再分配などを指す。
市場の働きを重んじ、政府の役割を国防や治安など最小限に限ろうとする国家観を何という?
夜警国家(小さな政府)
これに対し、社会保障や景気対策などで政府が積極的に役割を担う国家を福祉国家(大きな政府)と呼ぶ。
不況のときに政府が公共投資などで有効需要を生み出すべきだと主張し、政府が経済に積極的に関わる考え方の基礎をつくった経済学者は?
ケインズ
1930 年代の世界恐慌を背景に『雇用・利子および貨幣の一般理論』を著した。