司法参加と裁判員制度
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 公共 B ア (ア)「司法参加の意義」。内容の取扱いは、ここで「裁判員制度についても扱うこと」と求めています。
根拠の条文は、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(裁判員法)・検察審査会法・日本国憲法(e-Gov 法令検索で確認)。
0. 何を押さえるか
裁判は長く、法律の専門家(裁判官・検察官・弁護士)だけのものでした。国民が司法に参加すると、国民の感覚が裁判に反映され、司法への理解と信頼が深まる——
これが司法参加の意義で、裁判員法 1 条も趣旨をこの言葉で書いています。
国民が司法に関わる仕組みは 1 つではありません。何に参加して、何を決めるかで分かれます。
| 仕組み | 誰が | 何をする | 人数・決め方 |
|---|---|---|---|
| 裁判員制度 | 18 歳以上の有権者からくじで | 重大な刑事事件の第一審で、裁判官と一緒に有罪・無罪と刑を決める | 裁判員 6 人+裁判官 3 人。過半数(双方の意見を含む) |
| 検察審査会 | 有権者からくじで | 検察官が起訴しなかった判断が正しかったかを審査する | 11 人。起訴議決は 8 人以上 |
| 最高裁判所裁判官の国民審査 | 有権者全員 | 最高裁判所の裁判官を辞めさせるべきかを投票する | 衆議院議員総選挙のときに行う |
外国の国民参加には 2 つの型があり、裁判員制度はどちらとも少し違います。
| 陪審制(アメリカ・イギリスなど) | 参審制(ドイツ・フランスなど) | 日本の裁判員制度 | |
|---|---|---|---|
| 国民の役割 | 陪審員だけで有罪・無罪を決める(刑は裁判官) | 裁判官と一緒に有罪・無罪と刑を決める | 裁判官と一緒に有罪・無罪と刑を決める |
| 選び方 | 事件ごとに選ぶ | 任期制が多い | 事件ごとにくじで選ぶ |
引っかけの分かれ目は次の 3 つ。
- 裁判員裁判は刑事裁判だけ、しかも地方裁判所の第一審だけ(民事裁判・控訴審では行われない)
- 裁判員は刑の重さ(量刑)まで決める(有罪・無罪だけを決めるのは陪審制)
- 法令の解釈や訴訟手続きの判断は裁判官だけで行う(裁判員が加わるのは事実の認定・法令の適用・刑の量定)
1. 裁判員制度のしくみ
根拠: 学習指導要領 公共-B-ア-(ア)
裁判員法は 2004 年に成立し、2009 年 5 月 21 日に裁判員裁判が始まりました。
裁判員は「衆議院議員の選挙権を有する者」から選ばれます(裁判員法 13 条)。選挙権年齢の引き下げのあと、少年法の改正に合わせて、2023 年からは 18 歳・19 歳も裁判員に選ばれるようになりました。
裁判員裁判の対象になるのは、どんな事件の、どの裁判所の、どの段階の裁判?
死刑または無期拘禁刑に当たる罪などの重大な刑事事件の、地方裁判所での第一審
故意の犯罪行為で被害者を死亡させた罪の事件も対象(裁判員法 2 条 1 項)。民事裁判では行われない。
裁判員裁判の合議体は、原則として裁判官何人と裁判員何人で構成される?
裁判官 3 人・裁判員 6 人(裁判員法 2 条 2 項)
被告人が起訴された事実を認めていて争いが無く、適当と認められる事件では、裁判官 1 人・裁判員 4 人で行うこともできる。
裁判員が裁判官と一緒に判断する 3 つの事柄は?裁判官だけで判断するのは?
一緒に判断=事実の認定・法令の適用・刑の量定(裁判員法 6 条 1 項)
裁判官だけ=法令の解釈・訴訟手続きに関する判断(同条 2 項)
裁判員裁判の評決は、どのように決める?
過半数で決める。ただしその過半数には、裁判官と裁判員の双方が少なくとも 1 人ずつ含まれていなければならない(裁判員法 67 条)
裁判員だけ、または裁判官だけの意見で被告人を有罪にすることはできない。
裁判員に選ばれる資格があるのは誰?
衆議院議員の選挙権を持つ人(裁判員法 13 条)。つまり 18 歳以上の日本国民
選挙人名簿から、くじで裁判員候補者が選ばれる。70 歳以上の人や学生などは辞退を申し立てられる(16 条)。
裁判員が、裁判を終えたあとも守らなければならない義務は?
評議の秘密など、職務上知った秘密を漏らさない義務(守秘義務)(裁判員法 9 条 2 項)
評議で誰がどんな意見を言ったかなどが対象。法廷で見聞きした公開の事柄や、裁判員を務めた感想は話してよい。
2. 司法参加の意義と、ほかの参加の仕組み
根拠: 学習指導要領 公共-B-ア-(ア)
裁判員制度は、2000 年前後から進められた司法制度改革の柱の 1 つです。改革ではほかに、法科大学院(2004 年開校)による法曹養成の見直しや、
法律の相談窓口となる日本司法支援センター(法テラス、2006 年業務開始)の設置、犯罪の被害者が刑事裁判に参加できる被害者参加制度(2008 年)などが進められました。
裁判員法 1 条が掲げる、国民が裁判員として刑事裁判に関わることの意義は?
司法に対する国民の理解の増進と、その信頼の向上に資すること
国民の多様な感覚や視点を裁判に反映させることも期待されている。
陪審制と参審制の違いを、「国民が何を決めるか」で答えると?
陪審制=国民(陪審員)だけで有罪・無罪を決め、刑は裁判官が決める(アメリカなど)
参審制=国民が裁判官と一緒に有罪・無罪と刑を決める(ドイツなど)
日本の裁判員制度は、裁判官と一緒に刑まで決める点で参審制に近いが、事件ごとにくじで選ぶ点は陪審制に近い。
検察官が起訴しなかった(不起訴にした)判断が正しかったかを、国民が審査する機関を何という?何人で構成される?
検察審査会。有権者からくじで選ばれた 11 人の検察審査員(検察審査会法 4 条)
犯罪の被害者や告訴した人などの申立てを受けて審査する。
検察審査会が 2 度にわたって起訴すべきと判断したとき(起訴議決)、どうなる?議決に必要な人数は?
裁判所が指定した弁護士が、検察官に代わって起訴する(強制起訴)。起訴議決には 11 人中 8 人以上が必要
2009 年から、この議決に法的な拘束力が与えられた(検察審査会法 41 条の 6・41 条の 9・41 条の 10)。
国民が最高裁判所の裁判官を辞めさせるべきかを投票で判断する制度を何という?いつ行われる?
国民審査。任命後初めての衆議院議員総選挙のときに行い、その後 10 年を過ぎたあとの総選挙でまた行う(憲法 79 条)
投票者の多数が罷免を可とすれば、その裁判官は罷免される。