司法のしくみ
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 公共 B ア (ア)「憲法の下,適正な手続きに則り,法や規範に基づいて各人の意見や利害を公平・公正に調整し,個人や社会の紛争を調停,解決すること」。
根拠の条文は日本国憲法(e-Gov 法令検索で確認)。
0. 何を押さえるか
争いを力の強さではなく法に基づいて公平に解決するのが司法(裁判)の役割です。そのために、裁判所は国会や内閣から圧力を受けない独立した地位を持ち、
まちがいを正すために三審制を採っています。
裁判は扱うものによって 3 つに分かれ、登場する人の呼び名が違います。
| 民事裁判 | 刑事裁判 | 行政裁判 | |
|---|---|---|---|
| 扱うもの | 私人どうしの争い(お金の貸し借り・損害賠償など) | 犯罪があったか、どんな刑罰を科すか | 国や地方公共団体の行為をめぐる争い |
| 訴える人 | 原告 | 検察官(起訴する) | 原告(私人) |
| 訴えられる人 | 被告 | 被告人 | 被告(国・地方公共団体) |
| 話し合いで終われるか | 和解ができる | できない | — |
引っかけの分かれ目は次の 3 つ。
- 「被告」は民事・行政、「被告人」は刑事(起訴される前は「被疑者」)
- 違憲審査権はすべての裁判所が持つ(最高裁判所は最終的に決める「終審裁判所」)
- 日本の違憲審査は、具体的な事件の裁判の中で行う(事件と関係なく法律だけを審査する仕組みではない)
1. 司法権の独立
根拠: 学習指導要領 公共-B-ア-(ア)
憲法 76 条 1 項は「すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する」と定めます。
下級裁判所は、高等裁判所・地方裁判所・家庭裁判所・簡易裁判所の 4 種類です。戦前の軍法会議のような特別裁判所は置けません(76 条 2 項)。
憲法 76 条 3 項で、裁判官は何に従い、何にだけ拘束されて職権を行うとされている?
良心に従い独立して職権を行い、この憲法及び法律にのみ拘束される
国会・内閣や、裁判所内部の上司からも指図を受けない。これを司法権の独立(裁判官の職権の独立)という。
裁判官が罷免される(辞めさせられる)のは、どのような場合に限られる?
心身の故障で職務を執れないと裁判で決まったとき・公の弾劾(弾劾裁判)によるとき(憲法 78 条)。最高裁判所の裁判官は、ほかに国民審査で罷免されることがある(79 条)
裁判官の懲戒処分を行政機関が行うこともできない。この身分保障が司法権の独立を支える。
罷免の訴追を受けた裁判官を裁くために、国会に設けられる裁判所を何という?
弾劾裁判所(憲法 64 条)
両議院の議員で組織する。国会が司法に関わる数少ない場面。
最高裁判所の長官は誰が指名し、誰が任命する?長官以外の最高裁判所の裁判官は?
長官=内閣が指名し、天皇が任命する(6 条 2 項)
それ以外の裁判官=内閣が任命する(79 条 1 項)
内閣は裁判官を選ぶ段階で司法に関わるが、選ばれた後の裁判には干渉できない。
2. 三審制と裁判の種類
根拠: 学習指導要領 公共-B-ア-(ア)
1 つの事件について、原則として 3 回まで裁判を受けられる仕組みを何という?第一審から第二審へ、第二審から第三審へ訴えることを、それぞれ何という?
三審制。第一審 → 第二審が控訴、第二審 → 第三審が上告
裁判のまちがいを防ぎ、人権を守るための仕組み。
確定した判決に重大なまちがいの疑いがあるとき、裁判をやり直す制度を何という?
再審
死刑判決が確定したあとで再審によって無罪になった例もある。無実の人が罰せられること(えん罪)を正す最後の手段。
家庭内の争い(離婚・相続など)や、少年の事件を扱う下級裁判所は?
家庭裁判所
少額の事件や軽い罪の事件の第一審は簡易裁判所が扱う。
憲法 82 条は、裁判の対審と判決をどこで行うと定めている?
公開法廷
裁判が公正に行われているかを国民が見て確かめられるようにするため。判決は必ず公開する。
3. 違憲審査権と刑事手続き
根拠: 学習指導要領 公共-B-ア-(ア)
違憲審査権は、国会が多数決で作った法律でも、憲法が保障する人権を侵すなら効力を否定できる権限です。
多数派の力から少数者の人権を守る、という意味で、法の支配を実現する仕組みの 1 つです。
刑事手続きでは、国家が刑罰という最も強い力を使うため、被疑者・被告人の権利が憲法に細かく書かれています。
| 原則 | 中身 | 条文 |
|---|---|---|
| 令状主義 | 現行犯を除き、裁判官の令状が無ければ逮捕・捜索されない | 33・35 条 |
| 黙秘権 | 自分に不利益な供述を強要されない | 38 条 |
| 弁護人依頼権 | 弁護人を頼めない被告人には国が国選弁護人を付ける | 37 条 |
| 推定無罪 | 有罪の判決が確定するまでは罪を犯していないものとして扱う | 「疑わしきは被告人の利益に」 |
一切の法律・命令・規則・処分が憲法に適合するかどうかを決定する権限を何という?これを最終的に決める「終審裁判所」は?
違憲審査権(法令審査権)。終審裁判所は最高裁判所(憲法 81 条)
違憲審査権は下級裁判所も持つ。最高裁判所が「憲法の番人」と呼ばれるのはこのため。
日本の違憲審査は、どのような形で行われる?
具体的な事件の裁判の中で、その事件に使う法律などが憲法に反しないかを判断する(付随的審査制)
アメリカと同じ型。事件と関係なく法律そのものを審査する憲法裁判所の型(ドイツなど)とは違う。
現行犯の場合を除き、裁判官が出す令状が無ければ逮捕されないという原則を何という?
令状主義(憲法 33 条)
捜査機関が自分の判断だけで人の自由を奪うことを防ぐ。
取り調べや裁判で、自分に不利益なことを言わなくてよい権利を何という?
黙秘権(憲法 38 条 1 項)
強制・拷問による自白は証拠にできず、本人の自白だけでは有罪にされない(38 条 2 項・3 項)。