科学技術と人工知能
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領「倫理」B (1) ア の「生命,自然,科学技術などと人間との関わりについて倫理的課題を見いだし」。内容の取扱いは、「科学技術」について、人工知能(AI)をはじめとした先端科学技術の発達と人間との関わりを考えることを求めています。
0. 何を押さえるか
科学技術は生活を便利にする一方で、その使い方しだいで人間や社会を傷つける力も持ちます。
とくに情報技術は、私たちが世界を知る仕方そのものを変えました。このノートでは、情報社会を読み解く概念と、
AI(人工知能)をめぐる問い、そして技術を持つ者の責任を論じた思想を押さえます。
| 人物 | 言葉・概念 | 何を指摘したか |
|---|---|---|
| リップマン | ステレオタイプ | 人は現実そのものでなく、頭の中の単純化されたイメージで世界を判断する |
| ブーアスティン | 疑似イベント | メディアが報道されるために作り出した出来事が、現実よりも現実らしく受け取られる |
| マクルーハン | 「メディアはメッセージである」 | 伝えられる内容より、メディアの形式そのものが人間の感覚や社会を変える |
| ヨナス | 責任の原理 | 技術の力が未来にまで及ぶ時代には、未来の世代への責任が倫理の中心になる |
取り違えやすい分かれ目は次の 3 つ。
- ステレオタイプはリップマン、疑似イベントはブーアスティン。どちらもメディアと現実のずれを指摘した
- チューリング・テストは「機械が考えているか」を会話で判定する試験、シンギュラリティは「AI が人間の知能を超える転換点」
- ヨナスの責任は、すでにした行為への責任ではなく、まだ生まれていない世代に向けた未来への責任
1. 情報社会とメディア
根拠: 学習指導要領 倫理-B-(1)-ア
私たちが直接見聞きできる世界は、ごく一部です。それ以外の世界は、メディアを通して知るしかありません。
そのため、メディアが世界をどう切り取るかが、私たちの判断を左右します。
著書『世論』で、人は現実の環境そのものではなく、頭の中に作り上げた単純化されたイメージに基づいて判断すると指摘したアメリカのジャーナリストは? そのイメージを何と呼んだ?
リップマン、ステレオタイプ
現実の環境と区別して、人が頭の中に描く世界を「疑似環境」とも呼んだ。
記者会見やイベントのように、報道されることを目的に作り出された出来事を「疑似イベント」と呼び、それが現実以上に現実らしく受け取られると批判したアメリカの歴史家は?
ブーアスティン
主著『幻影の時代』。メディアが作るイメージが、本物の出来事に取って代わると論じた。
「メディアはメッセージである」と述べ、伝えられる内容よりも、メディアという形式そのものが人間の感じ方や社会のあり方を変えると論じたカナダの思想家は?
マクルーハン
電子メディアによって世界が一つの村のように結ばれることを「地球村(グローバル・ヴィレッジ)」と呼んだ。
2. 情報社会の課題
根拠: 学習指導要領 倫理-B-(1)-ア
情報技術の恩恵は、すべての人に等しく届くわけではありません。また、情報を受け取る側にも、それを読み解く力が求められます。
情報機器やインターネットを使える人と使えない人との間に生じる、情報や機会の格差を何という?
デジタル・デバイド(情報格差)
年齢・所得・地域などによって生じ、社会参加の格差にもつながる。
メディアが伝える情報をうのみにせず、その意図や背景を読み解き、主体的に判断する能力を何という?
メディア・リテラシー
情報を集め、選び、活用する力全般は情報リテラシーと呼ばれる。
自分の個人情報を、誰にどこまで知らせ、どう使わせるかを自分で決められるとする考え方を、プライバシーの権利の中で何という?
自己情報コントロール権
もとは「ひとりで放っておいてもらう権利」とされたプライバシーの権利が、情報社会の中で広げて捉え直された。
3. 人工知能(AI)と人間
根拠: 学習指導要領 倫理-B-(1)-ア
人工知能は、学習した大量のデータをもとに、判断や予測、文章や画像の生成までを行うようになりました。
AI が判断を担う場面が増えるほど、「機械は考えているのか」「AI の判断の責任は誰が負うのか」という問いが現実のものになります。
機械と人間が文字で会話し、相手が機械だと見分けられなければ、その機械は知能を持つとみなしてよいとする判定法を、提案者の名とともに何という?
チューリング・テスト(イギリスの数学者チューリングが提案)
「機械は考えることができるか」という問いを、判定できる形に置き換えようとした。
人工知能が人間の知能を超え、それ以後の技術の進歩を人間が予測できなくなるとされる転換点を何という?
シンギュラリティ(技術的特異点)
アメリカの発明家カーツワイルが広めた言葉。いつ来るのか、本当に来るのかについては見方が分かれる。
AI が学習するデータに偏りがあると、AI の判断にも偏りが生じ、特定の人々が不利に扱われるおそれがある。このような AI の判断の偏りを何という?
アルゴリズムのバイアス(AI のバイアス)
AI の判断の過程が人に説明できない「ブラックボックス」になりやすいことと合わせて、公正さと説明責任が問われる。
4. 科学技術と責任
根拠: 学習指導要領 倫理-B-(1)-ア
先端科学技術は、その影響が遠い場所や遠い未来にまで及びます。行為の結果がすぐには見えない時代の責任を、思想家たちは問い直しました。
著書『責任という原理』で、技術の力が未来の世代にまで影響を及ぼす時代には、人類が存続し続けることへの責任を倫理の基本に置くべきだと説いたドイツ出身の哲学者は?
ヨナス
これまでの倫理が「いま・ここ」にいる人どうしの関係しか扱ってこなかったことを批判した。環境倫理の世代間倫理とも重なる。
1955 年、核兵器の廃絶と戦争の放棄を科学者の立場から訴え、のちのパグウォッシュ会議につながった宣言を、中心となった 2 人の名から何という?
ラッセル=アインシュタイン宣言
科学者が、自分たちの研究が生む結果に社会的な責任を持つことを示した例とされる。