福祉とケアの倫理
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領「倫理」B (2) ア の「福祉,文化と宗教,平和などについて倫理的課題を見いだし」。内容の取扱いは、「福祉」について、多様性を踏まえ、協働、ケア、共生などの視点から考えることを求めています。
0. 何を押さえるか
福祉は、困っている人を一方的に助けることから、誰もが社会の一員として共に暮らせるように社会の側を変えることへと、考え方が移ってきました。
また、自立した個人どうしの権利と正義で考える倫理に対して、人と人とのつながりや、相手への気づかいを軸に考えるケアの倫理が唱えられました。
| 正義の倫理 | ケアの倫理 | |
|---|---|---|
| 論じた人 | コールバーグ(道徳性の発達段階) | ギリガン |
| 人間の見方 | 自立した個人 | 関係の中で互いに支え合う存在 |
| 判断の軸 | 普遍的な原理・権利・公平 | 具体的な相手への応答と責任 |
取り違えやすい分かれ目は次の 3 つ。
- バリアフリーは「今ある障壁を取り除く」、ユニバーサルデザインは「はじめから誰にとっても使いやすく設計する」
- ノーマライゼーションはデンマークのバンク=ミケルセン。障害のある人を特別な場所に分けず、普通の暮らしを送れるようにする考え方
- ケアの倫理のギリガンは、師のコールバーグの発達理論が正義の視点に偏っていると批判した
1. 共に生きる社会へ — ノーマライゼーション
根拠: 学習指導要領 倫理-B-(2)-ア
かつて障害のある人は、大きな施設に集められ、地域の暮らしから切り離されがちでした。
これを問い直し、社会の側の仕組みを変えようとする考え方が広がりました。
障害のある人も、地域の中でほかの人と同じような普通の生活を送れるような社会を目指すべきだとする考え方を何という? デンマークでこれを唱えた人は?
ノーマライゼーション、バンク=ミケルセン
知的障害のある人の大規模施設での処遇を改めようとしたところから始まった。
高齢者や障害のある人の生活の妨げとなる段差などの物理的な障壁や、制度・意識の上の障壁を取り除くことを何という?
バリアフリー
すでにある障壁を後から取り除く、という発想に立つ。
年齢・性別・障害の有無などにかかわらず、はじめから誰にとっても使いやすいように製品や環境を設計するという考え方を何という?
ユニバーサルデザイン
アメリカの建築家ロナルド・メイスが提唱した。障壁を後から取り除くバリアフリーと対比される。
貧困や障害などによって社会から排除されがちな人々を、社会の構成員として包み込み、共に支え合うことを目指す考え方を何という?
ソーシャル・インクルージョン(社会的包摂)
排除(エクスクルージョン)の反対の語。
2. ケアの倫理
根拠: 学習指導要領 倫理-B-(2)-ア
ケアは、世話・配慮・気づかいを意味します。誰もが幼いころや老いたとき、病んだときには人に頼って生きており、
人間は本来、互いのケアの中で生きている——このことを倫理の出発点に置こうとするのがケアの倫理です。
道徳性の発達を、罰を避ける段階から普遍的な正義の原理に従う段階まで、3 つのレベル・6 つの段階で示したアメリカの心理学者は?
コールバーグ
道徳性の到達点を、正義や権利といった普遍的な原理で判断できることに置いた。
著書『もうひとつの声』で、コールバーグの発達理論は正義の視点に偏っていると批判し、人間関係の中での思いやりと責任を重んじる「ケアの倫理」を唱えたアメリカの心理学者は?
ギリガン
権利と公平を軸とする「正義の倫理」とは別に、具体的な他者への応答を軸とする道徳の声があると論じた。
ケアの倫理で、人間はどのような存在として捉えられるか? 正義の倫理の人間の見方と対比して答えよ。
正義の倫理: 自立した個人。ケアの倫理: 関係の中で互いに依存し、支え合う存在
ケアする側だけでなく、ケアを受ける側の応答も含めた関係として道徳を捉える。
3. 多様性と協働
根拠: 学習指導要領 倫理-B-(2)-ア
人々の生き方や必要は一人ひとり異なります。その多様性を前提に、行政・企業・住民・NPO などが立場を越えて力を合わせる協働が、これからの福祉の担い手として求められています。
所得や財の量ではなく、その人が実際に「何をすることができ、どのような状態になれるか」という選択の幅によって、人の豊かさを捉えるべきだとしたインドの経済学者は? その選択の幅を何と呼んだ?
セン(アマルティア・セン)、潜在能力(ケイパビリティ)
同じ財を持っていても、障害や環境によって実際にできることは異なる。この考え方は国連の人間開発指数の土台になった。
性別・年齢・国籍・障害の有無・性的指向など、人々のさまざまな違いを尊重し、組織や社会の力として生かそうとする考え方を、英語で何という?
ダイバーシティ(多様性)
違いを受け入れて互いの力を生かす状態は、インクルージョン(包摂)と合わせて語られることが多い。
異なる立場の主体が、共通の目的のために対等な立場で役割を分担し、力を合わせることを何という? 地域福祉でこれを担う主体の例は?
協働。行政・住民・NPO(非営利組織)・ボランティア・企業など
行政だけに任せるのでも、個人の善意だけに頼るのでもなく、互いの持ち味を生かして支え合う。
自分の住む地域の支え合いや災害時の助け合いのように、国の制度(公助)と個人の努力(自助)の間で、身近な人々が互いに助け合うことを何という?
共助
公助・共助・自助を組み合わせて、誰も取り残さない福祉が目指される。