環境倫理
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領「倫理」B (1) ア の「生命,自然,科学技術などと人間との関わりについて倫理的課題を見いだし」。内容の取扱いは、「自然」について、生態系の中で人間が他の生物と相互依存関係にあることを踏まえ、人間と自然の関わりを考えることを求めています。
0. 何を押さえるか
自然は人間が思うままに使ってよい資源なのか。20 世紀の後半、公害や資源の枯渇、地球温暖化をきっかけに、
人間中心の自然観を問い直す環境倫理が生まれました。日本の教科書では、その主張を次の 3 つにまとめるのが標準です。
| 主張 | 中身 |
|---|---|
| 自然の生存権 | 人間だけでなく、生物の種や生態系も生存の権利を持つ |
| 世代間倫理 | 現在の世代は、未来の世代の生存に責任を負う |
| 地球全体主義 | 地球の生態系は有限であり、その維持が個人の利益より優先される |
取り違えやすい分かれ目は次の 3 つ。
- 『沈黙の春』はカーソン(農薬の害)、『野生のうたが聞こえる』はレオポルド(土地倫理)。どちらもアメリカの人物
- 「共有地の悲劇」はハーディン、「宇宙船地球号」はボールディング(どちらも地球の有限さを示すたとえ)
- 国連人間環境会議(1972 年・ストックホルム)と、環境と開発に関する国連会議(1992 年・リオデジャネイロ)。「かけがえのない地球」は前者、「持続可能な開発」を掲げたのは後者
1. 生態系と、人間中心の自然観の問い直し
根拠: 学習指導要領 倫理-B-(1)-ア
人間も、ほかの生物や土・水・大気と結びついた生態系の一員です。
ある生物が減れば、それを食べる生物や、それに食べられる生物にも影響が及ぶ——この相互依存関係に目を向けたところから、環境倫理は始まりました。
人間は土地の支配者ではなく、土壌・水・植物・動物からなる共同体の一員にすぎないとして、「土地倫理」を唱えたアメリカの生態学者は?
レオポルド
主著『野生のうたが聞こえる』(原題 A Sand County Almanac)。倫理の対象を、人間どうしから土地(生態系)にまで広げようとした。
農薬(DDT など)が生態系をむしばみ、鳥のさえずらない春が来ると警告した、1962 年刊行の著作と著者は?
『沈黙の春』、カーソン(レイチェル・カーソン)
化学物質による環境汚染への関心を世界に広げるきっかけになった。
人間の利益のためではなく、自然そのものに価値があるとして、生態系全体の中に人間を位置づけ直そうとする、ノルウェーの哲学者ネスが唱えた思想を何という?
ディープ・エコロジー
人間の利益のために環境を守ろうとする立場(シャロー・エコロジー)と対比される。
2. 環境倫理の 3 つの主張
根拠: 学習指導要領 倫理-B-(1)-ア
環境倫理の主張は、それまでの倫理が前提にしていた「いま生きている人間どうし」という枠を、
人間以外の生物と、まだ生まれていない世代にまで広げる点にあります。
人間だけでなく、動物や植物などの生物の種、さらに生態系や景観も、生存を続ける権利を持つとする環境倫理の主張を何という?
自然の生存権
倫理の対象を人間以外にまで広げる主張。
現在の世代は、資源を使い尽くしたり環境を壊したりせず、未来の世代の生存可能性に責任を負うとする環境倫理の主張を何という?
世代間倫理
未来の世代は、今の決定に意見を言えない。その立場をどう守るかが問われる。
地球の生態系は閉じた有限の世界であり、その維持が、個人の自由や各国の利益よりも優先されるとする環境倫理の主張を何という?
地球全体主義
個人の自由を最大限に認めてきた近代の考え方に、制限を求める面を持つ。
3. 地球の有限さのたとえ
根拠: 学習指導要領 倫理-B-(1)-ア
地球の資源と環境は限られている、ということを、思想家たちはたとえを使って示しました。
誰もが自由に使える牧草地で、各人が自分の利益のために牛を増やすと、牧草地が荒れて全員が損をする——このたとえで環境問題を説明したのは誰か? このたとえを何という?
ハーディン、「共有地の悲劇」
個人にとって合理的な行動が、全体として資源を枯渇させることを示した。
地球を、限られた資源を積んで宇宙を進む一隻の船にたとえ、閉じた系としての地球で暮らす経済のあり方を説いた経済学者と、そのたとえは?
ボールディング、「宇宙船地球号」
資源を使い捨てる経済から、循環させる経済への転換を訴えた。
4. 国際社会の取り組みと持続可能な開発
根拠: 学習指導要領 倫理-B-(1)-ア
環境問題は一国の中では解決できないので、国際会議が重ねられてきました。
そこで生まれた「持続可能な開発」は、環境の保全と、途上国の開発の要求とを両立させようとする言葉です。
1972 年にストックホルムで開かれ、「かけがえのない地球(Only One Earth)」を標語とした国際会議は?
国連人間環境会議
人間環境宣言が採択され、国連環境計画(UNEP)の設立につながった。
1972 年、ローマクラブが、人口増加と経済成長がこのまま続けば地球は 100 年以内に限界に達すると警告した報告書は?
『成長の限界』
資源と環境の有限さを、コンピュータによる予測で示した。
1987 年に国連の「環境と開発に関する世界委員会」(ブルントラント委員会)が示した、「将来の世代の必要を満たす能力を損なうことなく、現在の世代の必要を満たす開発」を何という?
持続可能な開発
世代間倫理と重なる考え方。1992 年、リオデジャネイロの環境と開発に関する国連会議(地球サミット)で中心理念となった。