社会契約説
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領「倫理」A (1) ア (ウ) の「善,正義,義務などに着目して,社会の在り方と人間としての在り方生き方について思索するための手掛かりとなる様々な倫理観」。
内容の取扱いは、ここで「民主社会における人間の在り方,社会参加と奉仕など」を取り上げるよう求めています。
国家の権力はどこから正当性を得るのか、どんな国家なら正義にかなうのか——社会契約説は、この問いに「人々の合意(契約)」と答え、近代の民主政治の土台になりました。
0. 何を押さえるか
社会契約説は、国家が無い状態(自然状態)を想定し、そこで人々が生まれながらに持つ権利(自然権)を守るために、契約を結んで国家をつくった、と考えます。
3 人の違いは「自然状態をどう見るか」と「契約で権利をどう扱うか」に出ます。
| ホッブズ | ロック | ルソー | |
|---|---|---|---|
| 主著 | 『リヴァイアサン』 | 『統治二論』(『市民政府二論』) | 『社会契約論』 |
| 自然状態 | 万人の万人に対する闘争 | 自由・平等でおおむね平和(ただし不安定) | 自由・平等で自足した状態(文明が不平等を生んだ) |
| 権利の扱い | 主権者に譲渡 | 政府に信託(裏切れば抵抗権) | 共同体に全面譲渡し、一般意志に従う |
| 導かれる政治 | 絶対的な主権(結果として絶対王政を擁護) | 間接民主制・名誉革命の擁護 | 人民主権・直接民主制 |
取り違えやすい分かれ目は次の 3 つ。
- 譲渡はホッブズ、信託はロック。信託なので、政府が裏切れば人民は抵抗・革命できる(抵抗権)
- 一般意志と全体意志は別もの。一般意志は公共の利益をめざす意志、全体意志は私的な利益を寄せ集めた意志
- ロックの自然権は生命・自由・財産。ホッブズの自然権は自己保存のために何でもする自由
1. 王権神授説から社会契約説へ
根拠: 学習指導要領 倫理-A-(1)-ア-(ウ)
17 世紀のヨーロッパでは、国王の権力は神から授けられたものだとする考えが絶対王政を支えていました。
これに対し、人間が理性で知ることのできる、時代や場所を超えた法(自然法)があるという考えが、社会契約説の前提になりました。
国王の権力は神から直接授けられたもので、人民は国王に逆らえないとする、絶対王政を支えた考えを何という?
王権神授説
社会契約説は、権力の根拠を神ではなく人々の合意に置き、これを退けた。
『戦争と平和の法』を著し、国家どうしの間にも理性に基づく自然法が成り立つと説いて「近代自然法の父」「国際法の父」と呼ばれたオランダの思想家は?
グロティウス
三十年戦争の惨禍の中で、戦争にも守るべき法があると論じた。
2. ホッブズ
根拠: 学習指導要領 倫理-A-(1)-ア-(ウ)
ホッブズは、人間を自分の生命を守ること(自己保存)を何より求める存在とみました。
国家が無ければ、誰もが自己保存のために争い、誰の生命も安全ではなくなる、と考えました。
ホッブズが、国家が無い自然状態を言い表した言葉は?
「万人の万人に対する闘争」
人間は自己保存のために何をしてもよい自然権を持つので、自然状態は絶えず死の危険がある状態になるとした。
ホッブズは、闘争状態から抜け出すために、人々が自然権をどうすると考えたか? 主著は?
自然権を主権者(国家)に譲渡し、その命令に従う。主著『リヴァイアサン』
リヴァイアサンは旧約聖書に出てくる怪物で、強大な国家をたとえた。主権者への服従を説いたため、結果として絶対王政を擁護することになった。
3. ロック
根拠: 学習指導要領 倫理-A-(1)-ア-(ウ)
ロックは、自然状態でも人々は自然法に従って、おおむね平和に暮らしていると考えました。
それでも争いを公平に裁く者がいないため、権利を確実に守るために政府をつくる、としました。
ロックが、人が生まれながらに持つ自然権として挙げたものは?
生命・自由・財産(所有権)
自分の身体を使った労働によって、自然物は自分の所有物になると考えた。
ロックは、人々が政府にどのような形で権力を委ね、政府がその目的に反したときには人民に何が認められるとしたか? 主著は?
権力を信託する。政府が信託に反すれば抵抗権(革命権)が認められる。主著『統治二論』
名誉革命を理論的に擁護し、のちのアメリカ独立宣言に大きな影響を与えた。
4. ルソー
根拠: 学習指導要領 倫理-A-(1)-ア-(ウ)
ルソーは、自然状態の人間は自由・平等で、自分を大切にする心とともに他者の苦しみに心を動かす憐れみの心を持っていたと考えました。
その自由と平等を、私有財産と文明が損なったとみます。
文明の発達、とりわけ私有財産の成立によって人間の間に不平等が生まれたと論じたルソーの著作は?
『人間不平等起源論』
自然状態の人間は、自己愛と憐れみの情を持つ、自由で平等な存在だったとした。
ルソーが、国家の主権は公共の利益をめざす人民全体の意志にあるとした、その意志を何という? 私的な利益を足し合わせただけの意志は何と呼んで区別したか?
公共の利益をめざす意志: 一般意志、私的利益の総和: 全体意志
主権は一般意志の行使であり、譲り渡すことも分割することもできないとした(人民主権)。主著『社会契約論』。
ルソーが、主権は代表されえないとして主張した政治のかたちは?
直接民主制
イギリス人は議員を選ぶ間だけ自由で、選び終えれば奴隷になる、と代議制を批判した。フランス革命に大きな影響を与えた。
5. 権力の分立
根拠: 学習指導要領 倫理-A-(1)-ア-(ウ)
社会契約によって権力をつくっても、それが一か所に集まれば人々の自由は脅かされます。
権力を分けて互いに抑え合わせる考えは、近代の憲法の基本になりました。
『法の精神』を著し、立法・行政・司法の三権を分けて互いに抑制と均衡をはかるべきだとしたフランスの思想家は?
モンテスキュー
ロックは立法権と執行権(行政)を分ける二権分立を説いていた。モンテスキューはこれに司法権を加えた。
ホッブズ・ロック・ルソーのうち、人民が政府に抵抗する権利を認めたのは誰で、自然権を主権者に譲渡して服従するとしたのは誰か?
抵抗権を認めた: ロック、譲渡して服従: ホッブズ
ルソーは権利を共同体全体に譲渡したうえで、人民自身が一般意志に従う主権者になるとした。