みならいノート

倫理 2027年度版

現代の正義論

みならいノートで覚える(無料)

このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。

学習指導要領「倫理」A (1) ア (ウ) の「善,正義,義務などに着目して,社会の在り方と人間としての在り方生き方について思索するための手掛かりとなる様々な倫理観について理解すること」。
ここでは、20 世紀後半のアメリカを中心に、「公正な社会とはどのような社会か」をめぐって交わされた議論を扱います。

0. 何を押さえるか

出発点は、ロールズが 1971 年の『正義論』で、功利主義に代わる正義の原理を示したことです。
功利主義は社会全体の幸福の総量を増やすことを目指すので、少数の人の自由や権利が犠牲にされかねません。
ロールズはこれを批判し、一人ひとりの自由と、恵まれない人への配慮を両立させる原理を探しました。その後、この原理を別々の方向から批判する議論が続きます。

立場 思想家 主張の芯 主著
リベラリズム ロールズ 公正としての正義。格差は最も恵まれない人の利益になる限りで認める 『正義論』
リバタリアニズム(自由至上主義) ノージック 個人の所有権を最大限に尊重し、国家は最小国家にとどめる 『アナーキー・国家・ユートピア』
潜在能力アプローチ セン 財の量でなく、その人が実際に何をなし、何になれるか(潜在能力)で福祉を測る 『不平等の再検討』
共同体主義(コミュニタリアニズム) サンデル、マッキンタイア 人は共同体の中で育まれた存在であり、共同体の共通善を重んじるべき 『リベラリズムと正義の限界』

取り違えやすい分かれ目は次の 3 つ。

1. ロールズ — 公正としての正義

根拠: 学習指導要領 倫理-A-(1)-ア-(ウ)

ロールズは、社会契約説の考え方を借りて、人々が公正な条件のもとで合意するならどのような正義の原理を選ぶかを考えました。

ロールズが『正義論』で、社会の最大の幸福を目指す考え方に代わるものとして示した正義の考え方を何という?

公正としての正義

ロールズは、少数者の犠牲を正当化しかねない功利主義を批判の対象とした。

ロールズが、正義の原理を選ぶ人々が置かれていると想定した、自分の能力・地位・財産などを知らされないという想定(覆い)を何という?

無知のヴェール(その覆いのもとで原理を選ぶ仮想の状況を原初状態という)

自分がどの立場になるか分からないので、人々は最も不利な立場になっても受け入れられる原理を選ぶはずだとした。

ロールズの正義の第一原理は何を求めるか?

各人に、他の人々の同様な自由と両立する限りで、最大限の基本的な自由を平等に保障すること

平等な自由の原理と呼ばれ、第二原理より優先される。

ロールズの正義の第二原理を構成する 2 つの原理は?

公正な機会均等の原理と格差原理

社会的・経済的な不平等は、全員に公正な機会が開かれたうえで、最も恵まれない人の利益を最大にする場合にだけ認められる。

2. ノージック — 自由至上主義と最小国家

根拠: 学習指導要領 倫理-A-(1)-ア-(ウ)

ロールズの正義論は、所得の再分配を行う福祉国家を支える理論として受け取られました。これに対して、個人の自由と所有権を最も重く見る立場から批判が出ます。

ロールズの福祉国家的な正義論を批判し、『アナーキー・国家・ユートピア』で、国家の役割は暴力・盗み・詐欺からの保護や契約の履行の強制に限られるべきだとしたのは誰か?

ノージック

このような国家を最小国家と呼び、それ以上の役割を持つ国家は個人の権利を侵すとした。

個人の自由と、自分の身体や正当に得た財産への所有権を最大限に尊重し、国家による再分配に反対する立場を何という?

リバタリアニズム(自由至上主義)

ノージックは、再分配のための課税を、本人の労働の成果を強制的に取り上げるものとして批判した。

3. セン — 潜在能力

根拠: 学習指導要領 倫理-A-(1)-ア-(ウ)

インド出身の経済学者センは、貧困や飢餓の研究から、人の暮らしのよさを何で測るかを問い直しました。

センが、人が実際に選択できる「何をなし、何になれるか」の組み合わせの幅を指して用いた言葉は?

潜在能力(ケイパビリティ)

所得や財の量が同じでも、健康状態や障害、社会の条件によって、それを生かしてできることは人によって違う。

センは、福祉(暮らしのよさ)を所得や財の量で測る考え方をどう批判したか?

財の量ではなく、それを使って人が実際に達成できる機能と、選択の自由の広がり(潜在能力)で測るべきだとした

1998 年にノーベル経済学賞を受けた。この考えは国連開発計画(UNDP)の人間開発指数や、「人間の安全保障」の考え方に影響を与えた。

4. 共同体主義 — 共通善と負荷ある自己

根拠: 学習指導要領 倫理-A-(1)-ア-(ウ)

1980 年代には、ロールズのような自由主義(リベラリズム)の人間観そのものを問い直す議論が出てきました。

個人は家族・地域・国家などの共同体の中で育まれ、その歴史や伝統と切り離せない存在であるとし、共同体の共通善を重んじる立場を何という?

共同体主義(コミュニタリアニズム)

代表的な論者に、サンデル、マッキンタイア、テイラーなどがいる。

サンデルが、ロールズの想定する自己を、共同体の目的や愛着から切り離されたものとして批判した言葉は?

負荷なき自己

サンデルは『リベラリズムと正義の限界』で、人は共同体から引き受けた役割や絆を負った「位置づけられた自己」だとした。

自由主義(リベラリズム)と共同体主義で、正義と善の関係の捉え方はどう違うか?

自由主義: 何が善い生き方かは各人に任せ、正義(公正なルール)を善より優先する
共同体主義: 正義は、共同体が共有する善(共通善)を抜きにしては決められない

共同体主義は、個人の自由を否定するのではなく、自由主義の人間観が抽象的すぎることを批判した。

ロールズ・ノージック・共同体主義を比べたとき、個人の自由を最も重く見て国家の役割を最小にするのはどれか?

ノージック(リバタリアニズム)

ロールズは自由を重んじつつ再分配を認め、共同体主義は自由より共同体の共通善を前に出す。

このノートの 12 問を、暗記カードで復習できます

みならいノートで覚える(無料)

答えを隠して出題し、忘れそうなころにもう一度出します。

前 プラグマティズム
理性への問い直しと現代の思想 次

このノートは無償で公開しています。当方は内容の正確性・完全性・最新性を保証しません。学習にあたっては、法令の原文・公式の出題範囲その他の一次資料を必ずご確認ください。試験への合格その他の効果を保証するものでもありません。

本文の転載・再配布はお断りしています(利用規約)。手元に置いて使いたい方は、ストアから Markdown ファイルとして入手できます。