プラグマティズム
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領「倫理」A (1) ア (エ) の「真理,存在などに着目して,世界と人間の在り方について思索するための手掛かりとなる様々な世界観について理解すること」。
内容の取扱いが挙げる「世界を捉える知の在り方」のうち、ここでは、知識や真理を行動の結果から捉え直した 19 世紀後半〜20 世紀のアメリカの思想を扱います。
0. 何を押さえるか
プラグマティズムは、ギリシア語で「行為」を意味するプラグマに由来する名前です。
開拓と産業化が進むアメリカで、「考えが正しいかどうかは、実際に行動に移したときの結果で確かめられる」という考え方として生まれました。
イギリス経験論の、経験を重んじる流れを受け継いでいます。
| 思想家 | 役割 | 鍵になる言葉 | 主著 |
|---|---|---|---|
| パース | 創始者 | 概念の意味は、それがもたらす実際的な結果で明らかになる | 論文「観念を明晰にする方法」 |
| ジェームズ | 広めた人 | 有用性(役に立つものが真理)、真理の相対性 | 『プラグマティズム』 |
| デューイ | 大成した人 | 道具主義、創造的知性、民主主義と教育 | 『民主主義と教育』『哲学の改造』 |
取り違えやすい分かれ目は次の 3 つ。
- パースは「概念の意味」、ジェームズは「真理」。パースが意味を明らかにする方法として示したものを、ジェームズは真理の基準にまで広げた
- 「道具主義」はデューイ。知性や思想は、生活の問題を解決するための道具だとした
- プラグマティズムの真理は固定されない。ある状況で役に立つ考えが真理であり、状況が変われば検証し直される(真理は絶対的でなく相対的・可謬的)
1. パースとジェームズ — 意味と真理を結果で確かめる
根拠: 学習指導要領 倫理-A-(1)-ア-(エ)
プラグマティズムは、1870 年代にマサチューセッツ州ケンブリッジで開かれた「形而上学クラブ」という研究会から生まれました。
プラグマティズムという名前は、どのような意味の語に由来するか?
ギリシア語で行為・行動を意味するプラグマ
思想を、行為との関わりで捉えようとする立場を表している。
プラグマティズムの創始者とされ、ある概念の意味は、その概念が行動にもたらす実際的な結果によって明らかになると説いたのは誰か?
パース
たとえば「硬い」の意味は「他の多くの物にこすられても傷がつかない」という結果の予想で明らかになる、と考えた。
パースの考えを受け継いでプラグマティズムを広め、ある考えが真理かどうかは、それが生活の中で実際に役に立つかどうかで決まるとしたのは誰か?
ジェームズ(主著『プラグマティズム』)
「それは真理だから有用であり、有用だから真理である」とした。この真理観を有用性の立場という。
ジェームズの真理観では、宗教的な信念は真理になりうるか?
なりうる。その信念が人を支え、生活に役立つ働きをするなら、その人にとって真理である
真理を固定したものでなく、経験の中で確かめられていく相対的なものと見たことから出てくる帰結。
ジェームズが心理学で唱えた、意識は途切れた要素の集まりでなく、絶えず流れ続けるものだとする考えを何という?
意識の流れ
ジェームズは哲学者であると同時に、アメリカの心理学の草分けでもあった。
2. デューイ — 道具主義と創造的知性
根拠: 学習指導要領 倫理-A-(1)-ア-(エ)
デューイは、プラグマティズムを、社会や教育をよりよくしていくための思想として大成しました。
知性や思想・学問は、人間が生活の中で出会う問題を解決するための道具であるとする、デューイの立場を何という?
道具主義(インストゥルメンタリズム)
思想はそれ自体に価値があるのではなく、問題の解決に役立ってはじめて価値を持つとした。
デューイが重んじた、困難な状況に出会ったとき、問題を見定め、仮説を立てて行動で確かめ、未来を切り開いていく知性を何という?
創造的知性
知性は、決まった真理を受け取る働きではなく、環境に働きかけて新しい解決をつくり出す働きとされる。
デューイは、問題の解決には、どのような手順で考えることが大切だとしたか?
問題を見いだし、解決の仮説を立て、それを行動によって検証する
仮説が行動によって確かめられるまでは、どんな考えも暫定的なものとして扱う。
デューイが『民主主義と教育』で重視した、子どもが実際に活動し、体験を通して学ぶ教育を何という?
問題解決学習(経験を通して学ぶ教育)
「なすことによって学ぶ」とされ、知識を詰め込む教育と対比される。デューイはシカゴ大学に実験学校を開いた。
デューイは、民主主義を単なる政治の制度ではなく、どのようなものと捉えたか?
人々が経験を共有し、話し合いを通して共に問題を解決していく生活の在り方(共同生活の様式)
そのために、一人ひとりの創造的知性を育てる教育が民主主義の土台になるとした。
3. プラグマティズムの真理観
根拠: 学習指導要領 倫理-A-(1)-ア-(エ)
プラグマティズムは、真理を「どこかに初めからあって、見つけ出されるもの」ではなく、「確かめられ、つくり直されていくもの」と捉えました。
デカルトの合理論と比べたとき、プラグマティズムが真理を確かめるよりどころとしたのは何か?
行動と経験の結果(生活の中で実際にどう働くか)
合理論のように、理性が疑いえない原理から演繹して真理を得る道はとらない。この点でイギリス経験論の流れを受け継ぐ。
プラグマティズムが、真理は一度決まったら動かないものではないとするのは、なぜか?
真理は実際の結果によって確かめられるものなので、状況が変われば検証し直され、改められうるから
誤りうることを前提に、試行錯誤によって知を育てていく姿勢が、アメリカの民主主義や科学の進め方と結びついた。