江戸時代の儒学
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領「倫理」A (2) ア (ア) の「古来の日本人の心情と考え方や日本の先哲の思想に着目して」のうち、江戸時代に学問の中心となった儒学を扱います。
中国から来た朱子学を幕府が重んじる一方で、日本の儒者たちはそれを批判し、孔子・孟子の原典に立ち返ったり、実践を重んじたりして、独自の儒学を築きました。
0. 何を押さえるか
江戸の儒学は、朱子学・陽明学・古学の 3 つの流れで整理できます。
| 流れ | 人物 | キーワード |
|---|---|---|
| 朱子学 | 藤原惺窩、林羅山 | 上下定分の理、存心持敬 |
| 陽明学 | 中江藤樹 | 孝、良知、知行合一 |
| 古学(聖学) | 山鹿素行 | 士道 |
| 古学(古義学) | 伊藤仁斎 | 仁愛、誠 |
| 古学(古文辞学) | 荻生徂徠 | 先王の道(安天下の道)、経世済民 |
取り違えやすい分かれ目は次の 3 つ。
- 上下定分の理は林羅山(朱子学)。天地に上下があるように、身分の上下も自然の理だとして、幕藩体制の秩序を支えた
- 仁斎は「仁」を人と人との愛(仁愛)とし、その根本を「誠」とした。徂徠は「道」を個人の道徳ではなく、先王が作った国を治める制度とした。同じ古学でも、仁斎は心の倫理、徂徠は政治へ向かう
- 藤樹は「孝」を万物の根本とし(「近江聖人」)、陽明学を日本に広めた。朱子学から出発して陽明学へ移った
1. 朱子学 — 林羅山
根拠: 学習指導要領 倫理-A-(2)-ア-(ア)
朱子学は、宇宙も人間も「理」によって貫かれているとする儒学で、身分の秩序を説明できたことから江戸幕府に重んじられました。
朱子学を学んで徳川家康に仕え、朱子学を幕府の官学とする基礎を築いた儒者は? その師は誰か。
林羅山。師は藤原惺窩
林家は代々幕府の学問を担い、のちに昌平坂学問所へつながった。
林羅山が説いた、天が高く地が低いように、人の身分にも上下の差があることは自然の理だとする考えを何という?
上下定分の理
身分秩序を自然の道理として正当化し、幕藩体制を思想面から支えた。
林羅山が重んじた、心の中に私欲を起こさず、常に慎みをもって理に従う態度を何という?
存心持敬(敬)
心を「敬」によって保つことで、理にかなった生き方ができるとした。
2. 陽明学 — 中江藤樹
根拠: 学習指導要領 倫理-A-(2)-ア-(ア)
陽明学は、理は外の世界ではなく自分の心の中にあるとし、知ることと行うことを一つとみる実践的な儒学です。
「近江聖人」と呼ばれ、日本の陽明学の祖とされる儒者は? 彼が万物の根本とした徳は?
中江藤樹。孝
孝は親子の間だけでなく、宇宙万物を貫く原理だとした。主著は『翁問答』。
中江藤樹が王陽明から受け継いだ、誰の心にも生まれつき備わっている善悪を知る力を何という?
良知
良知に従って行動すること(致良知)と、知ることと行うことを一つとする知行合一を重んじた。
3. 古学 — 山鹿素行・伊藤仁斎・荻生徂徠
根拠: 学習指導要領 倫理-A-(2)-ア-(ア)
朱子学は、孔子・孟子の教えを後世の解釈で歪めている。そう考えた儒者たちは、孔子・孟子の原典や古代の言葉に直接当たって、儒学の本来の姿を求めました。
朱子学を批判して孔子の教えに直接学ぶことを主張し、武士が農工商の三民の模範となるべきだとする「士道」を説いた儒者は?
山鹿素行
戦いのない時代の武士の役割を、道徳的な指導者であることに求めた。
『論語』『孟子』の元の意味(古義)を明らかにしようとし、京都の堀川に古義堂を開いた儒者は?
伊藤仁斎
『論語』を「最上至極宇宙第一の書」と評した。主著は『語孟字義』『童子問』。
伊藤仁斎が「仁」の本質とした、日常の人と人との間の思いやりを何という? また、それを支える心の在り方として重んじたものは?
仁愛。それを支えるのは誠(偽りのない純粋な心)
朱子学の「理」による厳しさを退け、人と人との親しみを重んじた。
古代中国の言葉(古文辞)を当時のまま読み解くことで、儒学の本来の意味を明らかにしようとした荻生徂徠の学問を何という?
古文辞学
主著は『弁道』『政談』。
荻生徂徠は、儒学の「道」とは何であるとしたか?
古代中国の聖人(先王)が、天下を安んじるために作った礼楽刑政などの制度(安天下の道)
道を個人の心の修養ではなく、国を治めて民を救う経世済民のための制度と捉えた。
朱子学・陽明学・古学を、何を儒学の根拠とするかで区別すると?
朱子学 = 万物を貫く理、陽明学 = 心に備わる良知、古学 = 孔子・孟子など古代の原典そのもの
古学は、後世の解釈を通さずに原典へ立ち返ろうとした点で共通する。