国学と庶民の思想
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領「倫理」A (2) ア (ア) の「古来の日本人の心情と考え方や日本の先哲の思想に着目して」のうち、江戸時代の中期以降に現れた 2 つの動きを扱います。
1 つは、儒教や仏教が入る前の日本人の心を古典から明らかにしようとした国学、もう 1 つは、町人や農民の暮らしの中から生まれた庶民の思想です。
0. 何を押さえるか
国学は、儒教や仏教の理屈(漢意)を取り除いて、古典の中に日本本来の心を見いだそうとしました。庶民の思想は、商人や農民の仕事そのものに道徳的な意味を与えました。
| 人物 | キーワード | 主著 | |
|---|---|---|---|
| 国学 | 賀茂真淵 | ますらをぶり、高く直き心(『万葉集』) | 『国意考』 |
| 国学 | 本居宣長 | もののあはれ、真心、漢意の否定、惟神の道 | 『古事記伝』『玉勝間』 |
| 国学 | 平田篤胤 | 復古神道 | 『霊能真柱』 |
| 庶民 | 石田梅岩 | 石門心学、正直・倹約 | 『都鄙問答』 |
| 庶民 | 安藤昌益 | 万人直耕、自然世と法世 | 『自然真営道』 |
| 庶民 | 二宮尊徳 | 報徳、分度・推譲 | (弟子による『二宮翁夜話』) |
取り違えやすい分かれ目は次の 3 つ。
- ますらをぶり(男性的でおおらか)は賀茂真淵が『万葉集』に見いだした歌風、たをやめぶり(女性的で優美)は『古今和歌集』以降の歌風。真淵が退けたたをやめぶりを、本居宣長は人の真情の表れとして重んじた。宣長は真淵の弟子だが、重んじる歌風が違う
- もののあはれは『源氏物語』から宣長が引き出した。物事に触れて素直に心が動くこと
- 身分制を否定したのは安藤昌益(すべての人が耕す自然世を理想とした)。石田梅岩は身分の区別そのものは認め、そのうえで商人の営利を肯定した
1. 国学 — 日本本来の心を求めて
根拠: 学習指導要領 倫理-A-(2)-ア-(ア)
国学は、契沖・荷田春満に始まり、賀茂真淵、本居宣長、平田篤胤へと受け継がれました。
仏教や儒教の教えを通さずに、『古事記』『万葉集』などの古典を直接読むことで、古代の日本人の心に迫ろうとしました。
賀茂真淵が『万葉集』の歌風に見いだし、古代の日本人の理想とした、男性的でおおらかな気風を何という?
ますらをぶり
その根底にある心を「高く直き心」と呼んだ。
本居宣長が、儒教や仏教の理屈にとらわれた考え方を批判して呼んだ言葉は?
漢意(からごころ)
漢意を捨てて、生まれながらの素直な心(真心)に立ち返るべきだとした。
本居宣長が、生まれつき備わった、よくも悪しくもありのままの素直な心を何と呼んだか?
真心(まごころ)
宣長は、神々の時代から伝わる、人の作為を加えない道を惟神の道(かんながらのみち)と呼んだ。
本居宣長が『源氏物語』の本質とした、物事に触れて、しみじみと心が動かされる感情を何という?
もののあはれ
文学の価値を儒教・仏教の教訓から切り離し、人の心の動きそのものに見いだした。
本居宣長が 30 年以上をかけて著した、『古事記』の注釈書は?
『古事記伝』
『古事記』を、漢意を交えず古代の言葉のままに読み解こうとした。
本居宣長の没後の門人を名乗り、国学を神道の信仰へと発展させて幕末の尊王攘夷運動に影響を与えた人物と、その神道を何という?
平田篤胤。復古神道
仏教や儒教の影響を排した、古代の純粋な神道を説いた。
2. 町人の思想 — 石田梅岩
根拠: 学習指導要領 倫理-A-(2)-ア-(ア)
商人が利益を得ることは卑しいとされていた時代に、商人の仕事の道徳的な意味を説いたのが石田梅岩です。
石田梅岩が開いた、神道・儒教・仏教を取り入れて町人に生き方を説いた教えを何という?
石門心学
主著は『都鄙問答』。
石田梅岩が、商人の利益は武士の俸禄と同じく正当なものだとしたうえで、商人が守るべきとした 2 つの徳は?
正直と倹約
正直な商いで得た利益は恥じるものではないとし、「足るを知る」ことを重んじた。
3. 農民の思想 — 安藤昌益と二宮尊徳
根拠: 学習指導要領 倫理-A-(2)-ア-(ア)
農業の現場からも、社会の在り方を問い直す思想が生まれました。
安藤昌益が理想とした、すべての人がみずから田畑を耕して生活する平等な社会を何という? そのありさまを表す言葉は?
自然世(しぜんせい)。万人直耕
主著は『自然真営道』。
安藤昌益が、耕さずに農民の生産物をむさぼる武士などが支配する差別的な社会を呼んだ言葉は?
法世(ほうせい)
聖人が法や制度を作ったことで差別が生まれたとし、儒教や仏教も厳しく批判した。
二宮尊徳が農村の復興で説いた、自分の収入に応じて支出の限度を定めることと、余った分を将来や他人のために譲ることを、それぞれ何という?
自分の分に応じた生活 = 分度、余りを譲ること = 推譲
天地の恵み(天道)と人の努力(人道)に報いる報徳の思想に基づく。