欲求と適応
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領「倫理」A (1) ア (ア) の「…他者と共によりよく生きる自己の生き方についての思索を深めるための手掛かりとなる様々な人間の心の在り方について理解すること」。
このノートは、人を動かす欲求のしくみ(マズロー)と、欲求が満たされないときに心がどう動くか(葛藤・欲求不満・防衛機制)を扱います。
0. 何を押さえるか
欲求が満たされないとき、人はそれに合わせて自分や環境を変えようとします(適応)。そのやり方は 3 通りに分けて整理されます。
| 適応のしかた | 中身 | 例 |
|---|---|---|
| 合理的解決 | 筋道を立てて問題そのものを解決する | 不合格の原因を調べて勉強法を変える |
| 近道反応 | 衝動的に、手っ取り早く欲求を満たそうとする | 八つ当たりする |
| 防衛機制 | 無意識のうちに心の安定を保とうとする | 「本当は行きたくなかった」と思い込む |
防衛機制は名前と中身の組で問われます。
| 防衛機制 | 中身 |
|---|---|
| 抑圧 | 受け入れがたい欲求や記憶を意識の外に押し込める |
| 合理化 | もっともらしい理由をつけて自分を正当化する |
| 同一視(同一化) | 他人の優れた点を自分のもののように感じる |
| 投射(投影) | 自分の中の受け入れがたい感情を、相手が持っていると思う |
| 反動形成 | 本心と正反対の態度をとる |
| 退行 | より幼い段階の行動に戻る |
| 逃避 | 空想や病気などに逃げ込む |
| 代償 | 本来の目標の代わりに、別の達成しやすい目標で満たす |
| 昇華 | 満たされない欲求を、社会的に価値の高い活動に向け変える |
取り違えやすい分かれ目は次の 3 つ。
- 代償と昇華:どちらも別の目標に向け変えるが、社会的・文化的に価値の高い活動に向かうものを特に昇華と呼ぶ
- 投射と同一視:自分の感情を相手に押し付けるのが投射、相手の長所を自分に取り込むのが同一視
- マズローの階層の頂点は自己実現の欲求。下の 4 つ(生理・安全・所属と愛情・承認)は欠乏欲求、自己実現は成長欲求
1. 欲求のしくみ
根拠: 学習指導要領 倫理-A-(1)-ア-(ア)
人の欲求には、生きるために欠かせないものと、社会の中で身につけていくものがあります。
マズローはこれを階層として並べ、下の欲求がある程度満たされると、より上の欲求が現れるとしました。
食欲・睡眠欲など生命の維持に欠かせない欲求と、名誉や所属など社会生活の中で生まれる欲求を、それぞれ何と呼ぶ?
生命維持の欲求 = 一次的欲求(生理的欲求)、社会生活で生まれる欲求 = 二次的欲求(社会的欲求)
二次的欲求は、経験や文化によって形が変わる。
マズローが示した欲求の階層を、下から順に 5 つ挙げると?
生理的欲求、安全の欲求、所属と愛情の欲求、承認(自尊)の欲求、自己実現の欲求
下の欲求がある程度満たされると、より上の欲求が現れるとした。
マズローの欲求の階層で、下の 4 つをまとめた呼び名と、最上位の自己実現の欲求の呼び名は?
下の 4 つ = 欠乏欲求、自己実現の欲求 = 成長欲求
欠乏欲求は満たされれば落ち着くが、成長欲求は満たされるほどさらに強まるとした。
2. 葛藤と欲求不満
根拠: 学習指導要領 倫理-A-(1)-ア-(ア)
同時に 2 つ以上の欲求がぶつかり、どれを選ぶか決められない状態を葛藤(コンフリクト)といいます。
レヴィンはこれを、近づきたいもの(接近)と避けたいもの(回避)の組み合わせで 3 つの型に分けました。
レヴィンの葛藤の 3 つの型のうち、「遊びにも行きたいし、見たい番組もある」のような、望ましいもの 2 つの間で迷う型は?
接近と接近の葛藤(接近-接近型)
ほかに、「勉強はしたくないが、叱られるのも嫌だ」の回避-回避型がある。
「ケーキは食べたいが、太るのは嫌だ」のように、同じ対象が魅力と嫌な面の両方を持っていて迷う葛藤の型は?
接近-回避型
1 つの対象に近づきたい気持ちと避けたい気持ちが同時に向かう型。
欲求が満たされずに緊張や不満が高まった状態を何という? また、その状態に耐えて自分を保つ力を何という?
状態 = 欲求不満(フラストレーション)、耐える力 = 欲求不満耐性(フラストレーション・トレランス)
欲求不満耐性は、適度な欲求不満を経験する中で育つとされる。
3. 防衛機制
根拠: 学習指導要領 倫理-A-(1)-ア-(ア)
防衛機制は、欲求不満や不安から心を守るために、無意識のうちにはたらく心のしくみです。
フロイトが見いだし、娘のアンナ・フロイトが整理しました。フロイトは心を 3 つの部分に分けて考えました。
フロイトが心を 3 つに分けたとき、本能的な欲求の源になる部分、社会の規範や良心が内面化された部分、その 2 つを調整する部分を、それぞれ何と呼ぶ?
欲求の源 = エス(イド)、良心 = 超自我、調整役 = 自我
防衛機制は、エスと超自我と現実の板ばさみになった自我が、自分を守るためにはたらかせるものとされる。
フロイトが、人の行動を意識できない領域から動かしているとした心の部分を何という?
無意識
人の心の大部分は本人も気づかない無意識であり、夢や言い間違いにその現れを見た。
キツネが届かないぶどうを「あれはすっぱいぶどうだ」と言うように、もっともらしい理由をつけて失敗や不満を正当化する防衛機制は?
合理化
イソップの寓話から、「すっぱいぶどう」の論理と呼ばれる。
自分が相手を嫌っているのに、「相手が自分を嫌っている」と思い込むように、自分の中の受け入れがたい感情を他人のものとみなす防衛機制は?
投射(投影)
好きな相手に冷たくするように、本心と反対の態度をとるのは反動形成。
弟や妹が生まれた子どもが、急に赤ちゃんのような振る舞いをするように、より幼い段階の行動に戻る防衛機制は?
退行
困難な現実から、自分が守られていた時期のやり方に戻って安定を得ようとする。
失恋の苦しみを詩や音楽の創作に向けるように、満たされない欲求を社会的に価値の高い活動に向け変える防衛機制は? ただ別の目標で満たすだけのものとどう呼び分けるか?
価値の高い活動に向けるもの = 昇華、別の目標で満たすだけのもの = 代償
運動部に入れなかったので別の部で活躍する、は代償。
つらい記憶や受け入れがたい欲求を、意識にのぼらないよう心の奥に押し込める防衛機制は?
抑圧
フロイトは、抑圧された欲求が無意識の中に残り、神経症の症状などに形を変えて現れると考えた。
あこがれのスポーツ選手と同じ髪型や口ぐせをまねて、自分も優れた者になった気分になる防衛機制は?
同一視(同一化)
他人の長所を自分に取り込む。自分の感情を他人に押し付ける投射とは向きが逆。