古代日本人の心情と神道
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領「倫理」A (2) ア (ア) の「古来の日本人の心情と考え方や日本の先哲の思想に着目して,我が国の風土や伝統,外来思想の受容などを基に」の入口です。
仏教や儒教が入ってくる前の日本人が、神・自然・人間をどう捉えていたか(日本人の人間観・自然観・宗教観の土台)と、
それを「風土」から説明しようとした近代の見方を扱います。
0. 何を押さえるか
古代の日本人にとって、神は世界の外にいる唯一の創造主ではなく、自然や身の回りのあらゆるところに宿るものでした。
人に求められたのは、神に偽りなく向き合う清く明るい心で、悪は内面の罪というより、外から付いて祓い清められる穢れとして捉えられました。
| 古代日本 | ユダヤ教・キリスト教 | |
|---|---|---|
| 神 | 八百万神(自然や祖先に宿る多くの神) | 唯一神(世界の創造主) |
| 神と自然 | 自然の中に神が宿る | 自然は神の被造物 |
| 求められる心 | 清き明き心(清明心) | 神への信仰と愛 |
| 悪の捉え方 | 罪・穢れ(禊・祓で清められる) | 神に背く罪(原罪) |
取り違えやすい分かれ目は次の 3 つ。
- 清明心の反対は「きたなき心」「黒き心」(私心を隠し、偽りのある心)。道徳の中心は正直さ・誠実さで、後の「誠」につながる
- 禊は水で身を清めること、祓は罪・穢れを取り除く儀礼。どちらも罪を内面で悔い改めるのではなく、外から付いたものを除く発想
- ハレとケを日常生活の分析に使ったのは柳田国男、風土を 3 つの型に分けたのは和辻哲郎
1. 八百万神と祭祀
根拠: 学習指導要領 倫理-A-(2)-ア-(ア)
古代の日本人は、山・川・木・岩や雷・風など、人の力を超えたものに神を感じ、それを祀りました。
神は恵みをもたらす一方で、祀りを怠れば災いをもたらすとされました。ここに古来の日本人の心情と考え方の原型があります。
古代の日本人が、自然や祖先など、あらゆるものに宿ると考えた多くの神々を何という?
八百万神(やおよろずのかみ)
唯一の創造神ではなく、多くの神が並び立つ多神教的な宗教観。
人の力を超えた不思議な力を持つものを、古代の日本人は何と呼んで畏れ敬ったか? 本居宣長はそれをどう説明したか。
カミ。宣長は、尋常でなく優れた徳があって畏るべきものをカミと言うと説明した
善いものに限らず、人に災いをもたらす恐ろしいものもカミとされた。
神が人に災いをもたらすことを何という? それを鎮めるために人々は何を行ったか?
祟り。祭祀(祭り)を行って神を鎮め、恵みを願った
神は恵みと災いの両面を持ち、人は祭りを通して神と関わった。
日本の神話で、世界は何によって生じたとされるか? ユダヤ教・キリスト教の世界観との違いは?
神が無から造ったのではなく、自ずから「成る」ものとして語られる
唯一神が世界を創造するという天地創造の考えとは対照的とされる。
2. 清き明き心と罪・穢れ
根拠: 学習指導要領 倫理-A-(2)-ア-(ア)
神に仕えるとき、人は私心を隠さず偽りのない心であることを求められました。
これが古代日本人の人間観の中心で、のちの「正直」や「誠」を重んじる倫理へつながっていきます。
古代の日本人が理想とした、神に対して私心を隠さず偽りのない心を何という?
清き明き心(清明心)
反対は、私心を隠した「きたなき心」「黒き心」。
古代の日本人は、罪や災いを何として捉え、どのように取り除こうとしたか?
外から付く穢れとして捉え、禊(水で身を清める)や祓(はらえ)で取り除こうとした
罪を内面の問題として悔い改めるのではなく、外から付いたものを清めるという発想。
清明心の伝統が、中世以降の日本の倫理で受け継がれた心の在り方として挙げられるのは何か?
正直や誠(まこと)
江戸時代の伊藤仁斎が誠を重んじたのも、この系譜に置いて説明されることが多い。
3. 風土とハレ・ケ — 近代からの捉え直し
根拠: 学習指導要領 倫理-A-(2)-ア-(ア)
こうした日本人の考え方を、近代の学者は自然環境や生活のリズムから説明しようとしました。
告示の言う「我が国の風土や伝統」を考える手掛かりです。
和辻哲郎が著書『風土』で、人間の在り方を形づくる風土として分けた 3 つの型は?
モンスーン型・砂漠型・牧場型
日本はモンスーン型に属し、自然の恵みと暴威の両方を受けるので、人々は受容的・忍従的になるとした。
和辻哲郎の風土論で、自然が厳しく、人々が団結して自然と戦うため対抗的・戦闘的になるとされたのはどの型か?
砂漠型
牧場型(ヨーロッパ)は自然が穏やかで規則的なので、人々は自然を支配しやすく合理的になるとされた。
祭りや儀礼などの非日常をハレ、ふだんの日常をケと呼び、日本人の生活のリズムを捉えたのは誰か?
柳田国男
ケの力が衰えた状態を「ケガレ」と説明する考え方もあるが、解釈は研究者によって分かれる。
日本人の神観念として、折口信夫が唱えた、常世などの異界から時を定めて訪れ、人々に幸いをもたらす神を何という?
まれびと
柳田国男の「常民」と並び、民俗学から日本人の宗教観を捉えた概念。