ルネサンスと宗教改革
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領「倫理」A (1) ア (イ) の「その際,人生における宗教や芸術のもつ意義についても理解すること」。
内容の取扱いは「古代ギリシアから近代までの思想」とともに「芸術家とその作品」を取り上げるよう求めています。
ここでは、人間の可能性を讃えたルネサンスの思想と芸術、信仰を個人の内面に取り戻そうとした宗教改革、
そして人間を見つめ直したモラリストを扱います。
0. 何を押さえるか
14〜16 世紀のヨーロッパでは、ギリシア・ローマの古典を学び直して、神中心の中世から人間の尊厳と自由に目を向ける動き(ルネサンス)が起きました。
同じころ、腐敗したカトリック教会に対して、聖書と信仰に立ち返ろうとする宗教改革が起き、宗教が教会の制度から個人の内面の問題へと移っていきます。
| ルネサンス | 宗教改革 | |
|---|---|---|
| 始まった所 | イタリア | ドイツ(ルター)、スイス(カルヴァン) |
| 目を向けたもの | 人間の自由と可能性(ヒューマニズム) | 神の前の個人の信仰 |
| 代表 | ピコ・デラ・ミランドラ、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、エラスムス | ルター、カルヴァン |
| 主な言葉・著作 | 『人間の尊厳について』 | 「95 か条の論題」『キリスト教綱要』 |
取り違えやすい分かれ目は次の 3 つ。
- ルターは信仰義認・聖書中心・万人司祭、カルヴァンは予定説。どちらも職業を神から与えられたものとして肯定した
- エラスムスは人文主義者で、宗教改革には加わらなかった。人間の自由意志をめぐってルターと論争した
- モンテーニュは懐疑、パスカルは人間の偉大と悲惨。「ク・セ・ジュ」はモンテーニュ、「考える葦」はパスカル
1. ルネサンスとヒューマニズム
根拠: 学習指導要領 倫理-A-(1)-ア-(イ)
ルネサンスは「再生」の意味で、古典古代の文化を再び生かすことから始まりました。
その中心にあったのは、人間は自分の生き方を自分で選び、無限に自分を高めていくことができる、という人間観です。
ルネサンス期に、ギリシア・ローマの古典の研究を通して、人間性の解放と尊重を目指した思想を何という?
ヒューマニズム(人文主義)
神中心の中世の世界観から、人間そのものに目を向けた。
『人間の尊厳について』で、人間は自由意志によって自分のあり方を選び、獣にも神にも近づくことができるところに尊厳がある、と説いた思想家は?
ピコ・デラ・ミランドラ
人間は、あらかじめ本性が決められていない存在だとした。
『愚神礼讃』で教会や聖職者の腐敗を風刺し、人間の自由意志をめぐってルターと論争した人文主義者は?
エラスムス
宗教改革に先駆ける役割を果たしたが、カトリックにとどまった。
『君主論』で、政治を宗教や道徳から切り離し、君主は国家を保つためには手段を選ぶべきでないと説いた思想家は?
マキャヴェリ
君主には「狐の知恵とライオンの力」が必要だとした。
2. 万能人と芸術家とその作品
根拠: 学習指導要領 倫理-A-(1)-ア-(イ)
ルネサンスでは、芸術・学問・技術など多方面に才能を発揮する人が理想とされました。
画家や彫刻家は、神の世界だけでなく、生きた人間の身体と感情を写実的に表現しました。芸術は、人間が自分の可能性を示す営みでもありました。
ルネサンス期に理想とされた、芸術・学問・技術など多方面に才能を発揮する人間を何という?
万能人(普遍人)
その典型とされるのがレオナルド・ダ・ヴィンチである。
「最後の晩餐」「モナ・リザ」を描き、解剖学や工学にも優れた業績を残したルネサンスの芸術家は?
レオナルド・ダ・ヴィンチ
観察に基づいて自然と人間を探究した。
彫刻「ダヴィデ像」や、システィーナ礼拝堂の壁画「最後の審判」を制作したルネサンスの芸術家は?
ミケランジェロ
力強い人間の肉体表現で知られる。同時代のラファエロは「アテネの学堂」を描いた。
3. 宗教改革
根拠: 学習指導要領 倫理-A-(1)-ア-(イ)
カトリック教会は、買えば罪の罰が軽くなるとする贖宥状(免罪符)を売り出していました。
ルターはこれを批判し、救いは教会の制度ではなく、神の前に立つ一人ひとりの信仰によるものだと説きました。
1517 年、ルターが贖宥状(免罪符)の販売を批判して発表した文書は?
「95 か条の論題」
これをきっかけに宗教改革が始まった。
ルターが説いた、人は善い行いによってではなく、信仰によってのみ神に正しい者と認められる、という考えを何という?
信仰義認
信仰のよりどころは教会の権威ではなく聖書だけだとする聖書中心主義と組になる。ルターは聖書をドイツ語に訳した。
神の前ではすべての信者が等しく祭司であり、聖職者と一般信徒の区別は本質的でない、というルターの考えを何という?
万人司祭主義
ルターはまた、世俗の職業も神から与えられた使命(召命)だとした。
『キリスト教綱要』を著したカルヴァンが説いた、誰が救われるかは神によってあらかじめ定められている、という考えを何という?
予定説
人は救いを確信するために、神から与えられた職業に励むべきだとされた。
カルヴァン派の禁欲的な職業倫理が、結果として資本主義の発展を支えたと論じた社会学者と、その著作は?
マックス・ウェーバー、『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』
勤勉に働き、得た利益を浪費せず蓄えることが、信仰にかなう生き方とされたと論じた。
4. モラリスト
根拠: 学習指導要領 倫理-A-(1)-ア-(イ)
宗教戦争の混乱のなかで、人間のありのままの姿を観察し、どう生きるべきかを随想の形で考えた人々をモラリストと呼びます。
パスカルは、物事を論理的に推論する幾何学的精神とともに、全体を直観的に捉える繊細の精神を重んじました。
『エセー』で「ク・セ・ジュ(私は何を知っているか)」と自らに問い、独断を避けて謙虚に自分を見つめ直したモラリストは?
モンテーニュ
懐疑を、他人の考えに寛容になるための態度とした。
『パンセ』で「人間は考える葦である」と述べ、人間の偉大さと悲惨さをともに見つめたモラリストは?
パスカル
人間は自然の中で最も弱いが、考えることに尊厳があるとした。無限と虚無の間にある中間者として人間を捉え、救いを神への信仰に求めた。