ユダヤ教とキリスト教
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領「倫理」A (1) ア (イ) の「幸福,愛,徳などに着目して,…様々な人生観について理解すること。その際,人生における宗教や芸術のもつ意義についても理解すること」。
内容の取扱いが名指しする「キリスト教」を、その母胎になったユダヤ教から順に扱います。キリスト教の中心にある愛が、ギリシア思想の愛とどう違うかが最大の分かれ目です。
0. 何を押さえるか
キリスト教は、ユダヤ教の唯一神への信仰を受け継ぎながら、律法を守ることよりも神の愛と隣人愛を中心に置いた宗教です。
イエスの教えは、使徒パウロによって教義の形を与えられ、教父アウグスティヌス、スコラ哲学のトマス・アクィナスへと受け継がれました。
| ユダヤ教 | キリスト教 | |
|---|---|---|
| 神 | 唯一神ヤハウェ | 唯一神(イエスを神の子・救い主とする) |
| 救われる者 | 神と契約を結んだイスラエルの民(選民思想) | 信仰をもつすべての人 |
| 中心にあるもの | 律法(トーラー)を守ること | 神の愛(アガペー)と隣人愛 |
| 聖典 | ヘブライ語の聖書(キリスト教では『旧約聖書』と呼ぶ) | 『旧約聖書』と『新約聖書』 |
取り違えやすい分かれ目は次の 3 つ。
- アガペーとエロース。アガペーは神から人への無償・無差別の愛、エロース(ギリシア思想)は美しいもの・価値あるものを求める愛
- 律法の否定ではなく、律法の精神の徹底。イエスが批判したのは律法を形だけ守る律法主義で、律法そのものではない
- パウロ・アウグスティヌス・トマスの順番と役割。教義の土台(パウロ)、教父として恩寵と神の国(アウグスティヌス)、信仰と理性の調和(トマス)
1. ユダヤ教 — 唯一神と律法
根拠: 学習指導要領 倫理-A-(1)-ア-(イ)
古代イスラエルの人々は、苦難の歴史のなかで、ただ一つの神と契約を結んだ民であるという自覚を持ちました。
神は正義の神で、律法を守れば祝福を与え、背けば裁くと説かれます。
古代イスラエル人(ヘブライ人)が信仰した唯一神の名は?
ヤハウェ
ほかの神を認めない一神教。のちのキリスト教・イスラームも同じ系譜に立つ唯一神の信仰である。
イスラエルの民が、神から特別に選ばれ、神と契約を結んだ民であるとする考えを何という?
選民思想
キリスト教は、民族を問わず、信仰をもつすべての人が救われると説いた。
エジプトを脱出したイスラエルの民に、モーセがシナイ山で神から授かったとされる戒めは?
十戒
律法(トーラー)の中心とされる。唯一神以外を神としないこと、偶像を作らないことなどを含む。
ユダヤ教で待ち望まれた、この世に神の正義を実現する救世主を何という?
メシア
「油を注がれた者」の意味で、ギリシア語に訳すと「キリスト」になる。
2. イエス — 神の愛と隣人愛
根拠: 学習指導要領 倫理-A-(1)-ア-(イ)
イエスは、律法を形だけ守ることで自分は正しいと考える人々を批判し、神の愛を受けた者として互いに愛し合うことを説きました。
罪人や貧しい人にこそ神の愛は注がれる、というのがイエスの教えの中心だとされます。
イエスが説いた、罪人を含むすべての人に無償・無差別に注がれる神の愛を何という?
アガペー
価値あるものを求める愛であるエロース(プラトン)と対比される。アガペーは相手の価値を問わない。
律法を形式的に厳格に守ることを重んじ、イエスに批判されたユダヤ教の一派は?
パリサイ派
イエスは律法を捨てたのではなく、神と人を愛するという律法の精神に立ち返るよう求めた。
イエスが最も大切な戒めとした 2 つは?
心を尽くして神を愛することと、隣人を自分のように愛すること(隣人愛)
隣人には敵も含まれる。「敵を愛し、迫害する者のために祈れ」と説いた。
「人にしてもらいたいと思うことを、人にもしなさい」という、キリスト教の倫理の根本とされる教えを何という?
黄金律
山上の説教(山上の垂訓)で説かれたとされる。
3. パウロからトマス・アクィナスへ
根拠: 学習指導要領 倫理-A-(1)-ア-(イ)
イエスの死後、弟子たちはイエスが復活したと信じ、イエスを救い主(キリスト)とする信仰を広めました。
パウロはこれを教義として整え、異邦人にも伝えました。のちに教父たちが教会の教えを固め、中世にはスコラ哲学がこれを理性で体系づけます。
近代に入っても、キリスト教の愛は人道主義の源の一つであり続けました。アフリカで医療に尽くしたシュヴァイツァーは、
生きようとするすべての生命を敬う「生命への畏敬」を倫理の根本に置いたとされます。
パウロが説いた、イエスの十字架の死は人類の罪をあがなうためのものだったという考えを何という?
贖罪(しょくざい)
人間はアダム以来の原罪を負っており、自分の力では救われない、という考えと組になる。
パウロが説いた、人は律法の行いによってではなく、何によって義(正しい者)とされるのか?
イエス・キリストへの信仰
のちにルターが宗教改革の中心に据えた考え(信仰義認)の源になった。
パウロが重んじ、のちにアウグスティヌスがギリシアの四元徳の上に置いた、キリスト教の三元徳は?
信仰・希望・愛
三つのうち最も大いなるものは愛だとされる。
『告白』『神の国』を著し、人間は神の恩寵によってのみ救われると説いた古代の教父は?
アウグスティヌス
地上の国と対比して、神への愛で結ばれた「神の国」を説いた。
『神学大全』を著し、アリストテレスの哲学を用いて信仰と理性の調和を図ったスコラ哲学の大成者は?
トマス・アクィナス
理性で分かる真理と、啓示によってだけ知られる真理を分け、両者は矛盾しないとした。