ギリシアの自然哲学とソクラテス
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領「倫理」A (1) ア (イ) の「幸福,愛,徳などに着目して,人間としての在り方生き方について思索するための手掛かりとなる様々な人生観について理解すること」。
内容の取扱いは、古代ギリシアから近代までの思想などの基本的な考え方を代表する先哲を取り上げるよう求めています。
このノートは、哲学の始まりである自然哲学、ソフィストの相対主義、そしてソクラテスを扱います。
0. 何を押さえるか
古代ギリシアの哲学は、神話(ミュトス)ではなく理性(ロゴス)によって世界を説明しようとしたところから始まります。
関心は、はじめは自然の成り立ちに、やがて人間とポリス(都市国家)の在り方に向かいました。
| 人 | 万物の根源(アルケー) | 合わせて覚えること |
|---|---|---|
| タレス | 水 | 最初の哲学者とされる |
| ピタゴラス | 数 | 宇宙の調和を数の比で考えた |
| ヘラクレイトス | 火 | 「万物は流転する」 |
| エンペドクレス | 土・水・火・空気の 4 元素 | 愛と憎しみが結合と分離を起こす |
| デモクリトス | 原子(アトム) | それ以上分けられない粒子と空虚 |
人間に目を向けた 2 つの立場は、真理をどう見るかで分かれます。
| ソフィスト(プロタゴラス) | ソクラテス | |
|---|---|---|
| 真理 | 人それぞれで、普遍的な真理は無い(相対主義) | 誰にとっても変わらない真の知を求める |
| 教えたもの | 弁論術(説得の技術) | 問答によって自分の無知に気づかせる |
| 合言葉 | 「人間は万物の尺度である」 | 無知の知・魂への配慮 |
取り違えやすい分かれ目は次の 3 つ。
- 火と流転のヘラクレイトス、原子のデモクリトス(アルケーと人の組は入れ替えて問われる)
- 「人間は万物の尺度」はプロタゴラス(相対主義)。ソクラテスはそれに対して普遍的な知を求めた
- ソクラテスは著作を残していない。その思想はおもに弟子プラトンの対話篇(『ソクラテスの弁明』など)で伝わる
1. 自然哲学 — 万物の根源を問う
根拠: 学習指導要領 倫理-A-(1)-ア-(イ)
紀元前 6 世紀ごろ、イオニア地方の植民市を中心に、自然(ピュシス)そのものの成り立ちを理性で説明しようとする人々が現れました。
彼らは、変化する世界の底にある「万物の根源(アルケー)」を探しました。
神話ではなく理性によって世界を説明しようとした古代ギリシアの思想の転換は、何から何への転換と言い表されるか?
ミュトス(神話)からロゴス(理性・言葉)へ
理性で筋道立てて考え、議論によって確かめることが、哲学の始まりとされる。
自然哲学者たちが探し求めた、世界のすべてのものを成り立たせている「万物の根源」を、ギリシア語で何という?
アルケー
何をアルケーとするかが、自然哲学者ごとの違いになる。
万物の根源(アルケー)を「水」とし、最初の哲学者とされる人物は?
タレス
ミレトスの人。万物の根源を神話に頼らずに説明しようとした点が、哲学の始まりとされる。
「万物は流転する」と言い表される思想で、世界は絶えず変化しているとし、万物の根源を「火」としたのは誰か?
ヘラクレイトス
同じ川に二度入ることはできない、というたとえで知られる。
万物は、それ以上分けることのできない無数の粒子と、それが動く空虚からできているとしたのは誰か? その粒子を何という?
デモクリトス、原子(アトム)
原子の結合と分離で、ものの生成や消滅を説明した。
2. ソフィストの相対主義
根拠: 学習指導要領 倫理-A-(1)-ア-(イ)
紀元前 5 世紀のアテネでは民主政が発達し、民会や法廷で人々を説得する力が重んじられました。
そこで、報酬を受けて弁論術を教える職業的な教師が現れました。
紀元前 5 世紀のアテネで、報酬を受け取って弁論術などを教えた職業的な教師たちを何と呼ぶ?
ソフィスト
もとは「知恵のある者」の意味。議論に勝つ技術を教えたため、のちに詭弁家という悪い意味も持った。
「人間は万物の尺度である」と述べ、ものごとの真偽や善悪の判断は人それぞれで、普遍的な基準は無いとしたソフィストは? この立場を何という?
プロタゴラス、相対主義
ソクラテスは、この相対主義に対して、誰にとっても変わらない真の知を求めた。
3. ソクラテス — よく生きること
根拠: 学習指導要領 倫理-A-(1)-ア-(イ)
ソクラテスは、人間にとって大切なのは「ただ生きること」ではなく「よく生きること」だとしました。
よく生きるとは、人間としての徳(アレテー)を身につけ、魂をできるだけよいものにすることです。
ソクラテスが、デルフォイの神託「ソクラテスより賢い者はいない」の意味を考え抜いて行き着いた自覚を何という?
無知の知
知者と言われる人々は大切なことを知らないのに知っていると思っているが、自分は知らないことを知らないと自覚している点で賢いのだ、と考えた。
ソクラテスが自らの探究の出発点とした、デルフォイのアポロン神殿に刻まれていたとされる言葉は?
「汝自身を知れ」
人間は神ではなく限りある存在だと自覚せよ、という意味で受け止められてきた。
ソクラテスが、相手と対話を重ねて矛盾に気づかせ、相手自身に真の知を生み出させようとした方法を何という? 母の職業にたとえた別名は?
問答法、別名助産術(産婆術)
ソクラテスは自分を、知を教える者ではなく、相手が知を生み出すのを手助けする者だと考えた。
ソクラテスが、人々に対して、金銭や名誉よりも何を大切にせよと説いたか?
魂への配慮(魂ができるだけよくなるよう気づかうこと)
魂のよさ、すなわち徳(アレテー)こそが、人間にとっていちばん大切なものだとした。
ソクラテスの「知徳合一」とは、どういう考えか?
徳とは何かを本当に知れば、人は必ず徳のある行いをする(徳は知である)
悪い行いは、何がよいかを知らないこと(無知)から生まれる、とした。知ることと行うことが一つになるとする知行合一、徳のある人は幸福であるとする福徳一致と合わせて問われる。
ソクラテスは、なぜ逃げることのできた死刑を受け入れたとされるか?
不正に不正で報いることは、よく生きることに反すると考えたから
若者を堕落させ、国家の神々を認めないという罪で訴えられ、死刑になった。裁判での弁明はプラトンの『ソクラテスの弁明』に描かれている。