人権思想と法の支配
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 公民的分野 C 私たちと政治 (1) 人間の尊重と日本国憲法の基本的原則 ア (ア)「基本的人権を中心とした人間の尊重と法の意義」・(イ)「法に基づく政治の大切さ」。
0. どういう論点か
人権は、はじめから認められていたものではありません。
王や国家の力が強すぎた時代に、その力をしばる約束を少しずつ勝ち取ってきたのが人権の歴史です。
だから、人権の歴史と「法の支配」は同じ話の表と裏です。
権力者も法に従わせる(法の支配)、その法のいちばん上に人権を守る憲法を置く(立憲主義)。
この筋で並べると、宣言の順番も思想家の役割も入れ替わらなくなります。
| 文書 | 年 | 国 | 分かれ目 |
|---|---|---|---|
| マグナ・カルタ | 1215 年 | イギリス | 国王の権力を制限した(人権宣言ではない) |
| 権利章典 | 1689 年 | イギリス | 名誉革命のあと。議会の権利を確かめた |
| アメリカ独立宣言 | 1776 年 | アメリカ | 生命・自由・幸福追求を「生まれながらの権利」とした |
| フランス人権宣言 | 1789 年 | フランス | フランス革命。自由・平等・国民主権 |
| ワイマール憲法 | 1919 年 | ドイツ | 社会権(生存権)を初めて定めた |
| 世界人権宣言 | 1948 年 | 国際連合 | 人権を世界共通の基準にした |
| 思想家 | 著書 | 主張 |
|---|---|---|
| ロック | 『統治二論』 | 政府が人権を侵せば人民は抵抗できる(抵抗権) |
| モンテスキュー | 『法の精神』 | 権力を立法・行政・司法に分ける(三権分立) |
| ルソー | 『社会契約論』 | 主権は人民にある(人民主権) |
引っかけの分かれ目は次の 3 つ。
- 社会権を初めて定めたのはワイマール憲法(フランス人権宣言は自由権・平等の宣言)
- 三権分立はモンテスキュー、抵抗権はロック、人民主権はルソー(本と人を入れ替えない)
- 「法の支配」の法は、権力者もしばる(「法による支配」=法を道具に国民を支配する、とは逆)
1. 人権思想の歩み
根拠: 学習指導要領 公-C-(1)-ア-(ア)
17〜18 世紀のイギリス・アメリカ・フランスで起きた市民革命が、人権を宣言や憲法の形にしました。
このとき認められたのは、国家から干渉されない自由権と平等権が中心でした。
20 世紀になると、自由だけでは貧困や失業から人を守れないことがわかり、社会権が加わります。
1215 年、イギリスで貴族たちが国王に認めさせ、国王の権力を制限した文書は?
マグナ・カルタ
国王でも勝手に課税や逮捕はできない、という考えの出発点。国民全体の人権を宣言したものではない。
1689 年、名誉革命のあとにイギリスで出され、議会の権利を確かめた文書は?
権利章典
国王が議会の同意なしに法律を停止したり課税したりできないことを定めた。
1776 年に出され、人は生まれながらに生命・自由・幸福追求の権利を持つとうたった宣言は?
アメリカ独立宣言
イギリスからの独立を宣言した文書。13 年後のフランス人権宣言と取り違えやすい。
1789 年、フランス革命の中で出され、自由・平等・国民主権をうたった宣言は?
フランス人権宣言
中心は自由権と平等権。社会権はまだ含まれていない。
1919 年に制定され、人間らしい生活を保障する社会権(生存権)を初めて定めた憲法は?
ワイマール憲法(ドイツ)
自由だけでは貧困から人を守れないという反省から生まれた。20 世紀的な人権の始まり。
1948 年に国際連合で採択され、人権を世界共通の基準として示した宣言は?
世界人権宣言
宣言なので条約のような法的な拘束力はない。拘束力を持たせたのが 1966 年の国際人権規約。
2. 人権を支えた思想家
根拠: 学習指導要領 公-C-(1)-ア-(ア)
『統治二論』で、政府が人々の権利を侵したら人々は抵抗できると説いたイギリスの思想家は?
ロック
抵抗権の考えは、アメリカ独立宣言に大きな影響を与えた。
『法の精神』で、権力を立法・行政・司法に分ける三権分立を説いたフランスの思想家は?
モンテスキュー
権力を一か所に集めると濫用されるので、互いに抑え合わせる、という考え。
『社会契約論』で、主権は人民にあるという人民主権を説いたフランスの思想家は?
ルソー
フランス革命に影響を与えた。ロック(抵抗権)・モンテスキュー(三権分立)と区別する。
3. 法の意義と法の支配
根拠: 学習指導要領 公-C-(1)-ア-(ア)、公-C-(1)-ア-(イ)
法は、社会の中で人々の権利を守り、争いを公正に解決するためのきまりです。
ただし、法が権力者の都合で自由に作られてしまえば、人権は守れません。
そこで「法の中身も人権を守るものでなければならず、権力者もその法に従う」という考えが生まれました。
権力者も含めてすべての人が法に従い、法によって国民の権利を守るという考えを何という?
法の支配
反対は「人の支配」=権力者が思うままに政治を行うこと。
権力者が自分の意思で思うままに政治を行い、国民を従わせるあり方を何という?
人の支配
権力者の気持ち次第で国民の自由が奪われる。これを防ぐのが法の支配。
憲法によって国家の権力を制限し、国民の人権を守ろうとする考えを何という?
立憲主義
憲法は国民をしばるものではなく、国家の権力をしばるもの、という点が核心。
日本国憲法で、憲法を尊重し擁護する義務を負うと書かれているのは誰?(国民は含まれるか)
天皇・摂政・国務大臣・国会議員・裁判官その他の公務員(99 条)。国民は挙げられていない
権力を使う側に憲法を守らせる、という立憲主義の考えがそのまま条文になっている。
4. 憲法は最高法規
根拠: 学習指導要領 公-C-(1)-ア-(イ)
国のきまりには上下があり、下のきまりは上のきまりに反することができません。
| 順位 | きまり | 作るところ |
|---|---|---|
| 1 | 憲法 | (改正は国民投票で決まる) |
| 2 | 法律 | 国会 |
| 3 | 命令(政令・省令など) | 内閣・各省 |
| — | 条例 | 地方議会(法律の範囲内で定める) |
日本国憲法が、国のきまりの中でいちばん上の「最高法規」であり、これに反する法律や命令は効力を持たないと定めている条は?
98 条
憲法に反する法律・命令・国の行為は、その全部または一部が効力を持たない。
地方公共団体の議会が、法律の範囲内で定めるその地域だけのきまりを何という?
条例
法律より下に位置する。法律に反する条例は作れない。