漢詩の形式
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
0. どういうまとまりか
中学で読む漢詩は、主に唐の時代に完成した形(近体詩)で、句の数と1 句の字数の組み合わせで名前が決まります。
| 1 句 5 字(五言) | 1 句 7 字(七言) | |
|---|---|---|
| 4 句(絶句) | 五言絶句(全 20 字) | 七言絶句(全 28 字) |
| 8 句(律詩) | 五言律詩(全 40 字) | 七言律詩(全 56 字) |
分かれ目は次の 3 つ。
- 句の数で絶句(4 句)と律詩(8 句)、1 句の字数で五言と七言が分かれる。
- 押韻は偶数句の末。七言詩はふつう第一句の末でも韻を踏む。
- 律詩は第三句と第四句、第五句と第六句を対句にする決まりがある。
1. 絶句と律詩、五言と七言
根拠: 学習指導要領 国2-(3)-イ
漢詩の名前は「1 句の字数 + 句の数」の順に呼びます。五言絶句なら「1 句 5 字・4 句」です。
形が分かると、どこで韻を踏み、どこが対句になるかの見当がつくので、現代語訳や語注を読む前に、まず形を確かめます。
4 句からなる漢詩の形式を何というか?
絶句
1 句の字数によって五言絶句・七言絶句に分かれる。
8 句からなる漢詩の形式を何というか?
律詩
1 句の字数によって五言律詩・七言律詩に分かれる。
1 句が 7 字で 4 句からなる漢詩の形式は?
七言絶句
全体の字数は 28 字。
七言律詩は全部で何字か?
56 字(1 句 7 字 × 8 句)。
2. 起承転結・押韻・対句
根拠: 学習指導要領 国2-(3)-イ
絶句の 4 句は、起句(うたい起こす)・承句(受けて広げる)・転句(場面や視点を転じる)・結句(全体をまとめる)という
組み立てになっています(起承転結)。
押韻は、決まった句の末に、響き(母音と、それに続く音)の同じ字を置くことです。
対句は、並んだ 2 つの句で、語の組み立てと意味の対応をそろえることで、律詩では置く場所が決まっています。
絶句の 4 つの句を、はじめから順に何と呼ぶか?
起句・承句・転句・結句(起承転結)。
第三句の転句で場面や視点が大きく変わる。
漢詩の押韻とは何か?
決まった句の末に、響きの同じ字を置くこと。
韻を踏んでいる字を韻字という。
五言詩では、原則としてどの句の末で韻を踏むか?
偶数句の末(絶句なら第二句・第四句)。
第一句の末でも韻を踏む詩もある(孟浩然の「春暁」)。
七言詩では、原則としてどの句の末で韻を踏むか?
第一句の末と、偶数句の末(絶句なら第一句・第二句・第四句)。
律詩で、対句にする決まりになっているのは第何句と第何句か?
第三句と第四句、第五句と第六句
律詩は 2 句ずつを「聯」と呼び、この 2 組を頷聯・頸聯という。
3. 代表的な漢詩
根拠: 学習指導要領 国2-(3)-イ
どれも唐の時代の詩です。原文・書き下し文のあとに、このパックで書いた現代語訳と、読み間違えやすい語の語注を付けます。
春暁 孟浩然(五言絶句)
春眠不覚暁 処処聞啼鳥
夜来風雨声 花落知多少
書き下し文: 春眠暁を覚えず 処処啼鳥を聞く 夜来風雨の声 花落つること知る多少
現代語訳: 春の眠りは心地よく、夜が明けたのにも気づかなかった。あちこちから鳥の鳴く声が聞こえてくる。
そういえば昨夜は風や雨の音がしていた。花はどれほど散ってしまっただろうか。
語注: 処処 … あちこち。啼鳥 … 鳴く鳥。夜来 … 昨夜から。多少 … どれほど(ここでは「多い」「少ない」の意味ではない)。
韻字は「暁」「鳥」「少」。五言詩だが第一句の末でも韻を踏んでいる。
春望 杜甫(五言律詩)
国破山河在 城春草木深
感時花濺涙 恨別鳥驚心
烽火連三月 家書抵万金
白頭掻更短 渾欲不勝簪
書き下し文: 国破れて山河在り 城春にして草木深し 時に感じては花にも涙を濺ぎ 別れを恨んでは鳥にも心を驚かす
烽火三月に連なり 家書万金に抵る 白頭掻けば更に短く 渾て簪に勝へざらんと欲す
現代語訳: 都は戦乱で破れ果てたが、山や河は昔のままある。町に春が来て、草木が深く茂っている。
時世を思うと花を見ても涙がこぼれ、家族との別れがつらくて鳥の声にも心が騒ぐ。
戦いののろしは三か月も続き、家族からの手紙は大金にも値するほど貴重だ。
白髪頭をかけば髪はいっそう薄くなり、冠を留めるかんざしも挿せなくなりそうだ。
語注: 国 … ここでは国都(長安)。城 … 城壁に囲まれた町。烽火 … 戦乱を知らせるのろし。家書 … 家族からの手紙。
抵る … 値する。簪 … 冠を髪に留めるかんざし。
韻字は「深」「心」「金」「簪」(偶数句の末)。第三・四句と第五・六句が対句で、第一・二句も対になっている。
黄鶴楼にて孟浩然の広陵に之くを送る 李白(七言絶句)
故人西辞黄鶴楼 煙花三月下揚州
孤帆遠影碧空尽 唯見長江天際流
書き下し文: 故人西のかた黄鶴楼を辞し 煙花三月揚州に下る 孤帆の遠影碧空に尽き 唯だ見る長江の天際に流るるを
現代語訳: 古くからの友人が、西にある黄鶴楼に別れを告げ、花がかすむ春の三月に揚州へと下っていく。
ぽつんと一つ浮かぶ帆の遠い姿は青空に吸い込まれて消え、あとにはただ長江が空の果てへ流れていくのが見えるだけだ。
語注: 故人 … 古くからの友人(今の「亡くなった人」の意味ではない)。辞し … 別れを告げて去り。
煙花 … 花がかすんで見える春の景色。孤帆 … ただ一つの帆掛け舟。天際 … 空の果て。広陵 … 揚州のこと。
韻字は「楼」「州」「流」(七言詩なので第一句の末と偶数句の末)。
「春眠暁を覚えず」で始まる漢詩「春暁」の作者と形式は?
孟浩然、五言絶句
唐の詩人。韻字は「暁」「鳥」「少」。
「国破れて山河在り」で始まる漢詩「春望」の作者と形式は?
杜甫、五言律詩
唐の詩人。戦乱で荒れた都で、家族と離れて詠んだ詩。
「黄鶴楼にて孟浩然の広陵に之くを送る」の作者と形式は?
李白、七言絶句
友人の孟浩然を見送る詩。韻字は「楼」「州」「流」。
「春暁」の結句「花落つること知る多少」の「多少」の意味は?
どれほど(どのくらい)
「多い」「少ない」の意味ではなく、花がどれほど散ったかを思いやっている。
杜甫「春望」の「家書万金に抵る」の「家書」の意味は?
家族からの手紙
戦乱で届きにくく、大金に値するほど貴重だということ。
李白の詩「故人西のかた黄鶴楼を辞し」の「故人」の意味は?
古くからの友人(ここでは孟浩然)。
今の「亡くなった人」の意味ではない。