衣食住から見る世界の歴史
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領「世界史探究」A (2) ア (ア) の「衣食住,家族,教育,余暇などの身の回りの諸事象を基に,私たちの日常生活が世界の歴史とつながっていることを理解すること」。
このノートでは、そのうち衣食住を扱います。家族・教育・余暇は、次のノートで扱います。
0. 何を押さえるか
いま食卓にある作物や、着ている服の素材の多くは、遠く離れた土地で生まれ、交易や征服、移住を通じて世界に広がったものです。
「どこで生まれ、いつ、どの道を通って広がったか」を押さえると、日常生活と世界の歴史のつながりが見えてきます。
| もの | 生まれた地域 | 広がった道すじ |
|---|---|---|
| 小麦・大麦 | 西アジア | ヨーロッパ・北アフリカ・中国北部などへ |
| 稲 | 長江の中・下流域 | 東アジア・東南アジア・南アジアへ |
| トウモロコシ・ジャガイモ・トマト | アメリカ大陸 | 16 世紀以降、スペインなどを通じて世界へ |
| 茶 | 中国 | 陸と海の交易で西アジア・ヨーロッパへ |
| コーヒー | エチオピア周辺 | イスラーム世界を経てヨーロッパへ |
| 綿織物 | インド | 海の交易でヨーロッパへ。のちイギリスで機械生産 |
| 絹 | 中国 | 「絹の道」でユーラシア西方へ |
取り違えやすい分かれ目は次の 3 つ。
- ジャガイモ・トウモロコシ・トマト・トウガラシはアメリカ大陸原産。ヨーロッパやアジアに広がったのはコロンブスの到達(1492 年)以降
- 小麦は西アジア、稲は長江流域。中国でも黄河流域の古い作物はアワ・キビだった
- 綿はインド、絹は中国が古くからの産地。どちらも交易品としてユーラシアの西側で珍重された
1. 食べ物の来歴
根拠: 学習指導要領 世界史探究-A-(2)-ア-(ア)
農耕はいくつかの地域でそれぞれ始まり、地域ごとに違う作物が栽培化されました。
それらの作物は、やがて交易や人の移動によって、生まれた土地を離れて広がっていきます。
麦(小麦・大麦)の栽培が始まった地域は?
西アジア(メソポタミア周辺の山ろく地帯など)
羊・ヤギなどの家畜の飼育もあわせて始まり、農耕・牧畜の先進地域となった。
稲作の起源地とされる地域は?
長江の中・下流域
黄河流域ではアワ・キビが主な作物だった。中国の南と北で、もともとの主食が違ったことを押さえる。
トウモロコシとジャガイモが生まれた地域と、それが世界に広がったきっかけは?
アメリカ大陸。16 世紀以降、スペイン人などのヨーロッパ人がアメリカ大陸に進出したこと
寒さややせた土地に強いジャガイモは、のちにヨーロッパで重要な食料になった。
16 世紀以降、アメリカ大陸やカリブ海の島々で砂糖の大規模な生産が行われたとき、その労働力とされたのは?
アフリカから連れてこられた奴隷
サトウキビのプランテーションは、ヨーロッパでの砂糖の需要にこたえるもので、大西洋をまたぐ奴隷貿易と結びついていた。
2. 飲み物の来歴
根拠: 学習指導要領 世界史探究-A-(2)-ア-(ア)
茶とコーヒーは、どちらも生まれた土地から遠く離れたヨーロッパで、17 世紀ごろから広く飲まれるようになりました。
コーヒーがヨーロッパに広まる前に、飲む習慣が広がっていた地域は?
イスラーム世界
エチオピア周辺が原産とされ、アラビア半島を経てイスラーム世界に広まった。ヨーロッパでは 17 世紀にコーヒーハウスが生まれた。
茶はどこから来て、イギリスでどのような飲み物として定着したか?
中国から伝わり、紅茶として砂糖を入れて飲む習慣が広まった
茶の輸入で銀が中国に流れ出たことが、のちのアヘン貿易とアヘン戦争の背景になる。
3. 衣服の素材の来歴
根拠: 学習指導要領 世界史探究-A-(2)-ア-(ア)
衣服の素材は、その土地の自然と結びついています。絹と綿は交易品として遠くまで運ばれ、世界の歴史を動かしました。
古くから中国で生産され、中央アジアを通って西方に運ばれたため、東西を結ぶ交易路の名にもなった素材は?
絹(「絹の道」=シルク=ロード)
養蚕の技術は長く中国の外に出なかった。のちにビザンツ帝国などでも生産されるようになる。
綿織物の古くからの産地で、ヨーロッパに綿織物を輸出していた地域は?
インド
インド産の綿織物がヨーロッパで人気を集めたことが、イギリスで綿織物を機械で大量に生産する産業革命につながった。
中世以来、イギリスで重要な産業となっていた、羊を原料とする織物は?
毛織物
牧羊が盛んな土地では羊毛の衣服が中心だった。産業革命の中心は、のちに毛織物から綿織物へ移る。
4. 住まいの来歴
根拠: 学習指導要領 世界史探究-A-(2)-ア-(ア)
住まいは、その土地で手に入る材料と、暮らし方(定住か移動か)によって形が決まります。
モンゴル高原などの遊牧民が使ってきた、組み立て式の移動できる住まいは?
ゲル(中央アジアではユルトとも呼ぶ)
家畜とともに季節ごとに移動する暮らしに合わせ、骨組みとフェルトで短時間に組み立て・解体できる。
木材の乏しい乾燥地帯で、古くから住まいや建物に使われてきた材料は?
日干しれんが(泥を固めて日に干したもの)
メソポタミアなどで古くから使われ、雨の少ない気候だから成り立つ。森林の多い地域では木造が中心になる。
定住農耕民と遊牧民とで、住まいのつくりが違うのはなぜか?
定住農耕民は一か所に住み続けるが、遊牧民は家畜の草を求めて移動するから
住まいの違いは暮らし方の違いを映している。衣食住は、それぞれの地域の自然環境と生業から説明できる。