医療技術と生命倫理
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領「世界史探究」E (3) ア (ア) の「医療技術・バイオテクノロジーと生命倫理」。内容の取扱いは、欧米などの動向のみを取り上げないことと、科学技術の知識のあり方に人文科学や社会科学等の知識との学際的な連携が求められていることに気付くよう求めています。
20 世紀の医療技術の進歩と、それが生んだ「どこまで人の命に手を加えてよいか」という問いを押さえます。
0. 何を押さえるか
抗生物質やワクチンは多くの感染症を抑えましたが、新しい感染症も現れ続けています。遺伝子を扱うバイオテクノロジーは病気の治療に道を開く一方、生命の始まりや終わりに関わる判断を人に迫るようになりました。
| 年 | できごと | 分野 |
|---|---|---|
| 1928 | フレミングがペニシリンを発見 | 抗生物質 |
| 1948 | 世界保健機関(WHO)発足 | 国際保健 |
| 1953 | ワトソンとクリックが DNA の二重らせん構造を解明 | 遺伝子 |
| 1980 | WHO が天然痘の根絶を宣言 | 感染症 |
| 1996 | イギリスでクローン羊ドリーが誕生 | バイオテクノロジー |
| 2003 | ヒトゲノム(人の遺伝情報の全体)の解読が完了 | 遺伝子 |
| 2006 | 山中伸弥らが iPS 細胞を作製(マウス) | 再生医療 |
取り違えやすい分かれ目は次の 3 つ。
- ペニシリンの発見は 1928 年だが、薬として大量に使われるようになったのは第二次世界大戦中から
- 人類が根絶した感染症は天然痘。ワクチンの接種を世界で進めた結果で、根絶宣言は 1980 年
- ES 細胞は受精卵を壊して作るため倫理上の問題が大きい。iPS 細胞は体の細胞から作るため、その問題を避けられる
1. 抗生物質と感染症
根拠: 学習指導要領 世界史探究-E-(3)-ア-(ア)
20 世紀の医療技術の進歩で、細菌による感染症の多くが治せるようになりました。ただし、感染症との戦いは終わっていません。
1928 年、イギリスのフレミングが青カビから発見した、最初の抗生物質は?
ペニシリン
第二次世界大戦中に大量生産が進み、負傷兵の感染症の治療などに使われた。
抗生物質の登場で治る病気になった、かつて「国民病」とも呼ばれた感染症の例は?
結核
ストレプトマイシンなどの抗生物質で治療できるようになった。ただし、薬が効きにくい耐性菌の問題が生まれている。
1980 年、WHO が根絶を宣言した感染症は?
天然痘
各国が協力してワクチンの接種を進めた成果で、人類が根絶した初めての感染症となった。
1980 年代以降、新しく現れて世界に広がった感染症の例を挙げると?
エイズ(後天性免疫不全症候群)、SARS(重症急性呼吸器症候群)など
人や物の移動が速くなったことで、感染症は短い期間で国境を越えて広がるようになった。
2. DNA とバイオテクノロジー
根拠: 学習指導要領 世界史探究-E-(3)-ア-(ア)
生物の遺伝の仕組みが分子のレベルで分かると、遺伝子そのものを操作する技術が生まれました。
1953 年、ワトソンとクリックが明らかにした、遺伝情報を担う DNA の構造は?
二重らせん構造
遺伝の仕組みを分子で説明する道が開け、のちのバイオテクノロジーの出発点となった。
バイオテクノロジーとは、どのような技術か?
遺伝子の組み換えなど、生物の働きを人の役に立つように利用・操作する技術
医薬品の製造や農作物の品種改良などに使われている。
1996 年にイギリスで誕生し、哺乳類で初めて体の細胞から作られたクローンとして知られる動物は?
羊のドリー
人間のクローンを作ることへの懸念が一気に広がり、多くの国が人のクローンづくりを法律で禁じた。
2003 年に解読が完了した、人間の遺伝情報の全体を何という?
ヒトゲノム
アメリカ・イギリス・日本などが国際協力で解読を進めた。病気の原因の解明に役立つ一方、遺伝情報による差別への懸念も生まれた。
3. 生命倫理の問い
根拠: 学習指導要領 世界史探究-E-(3)-ア-(ア)
医療技術が進むほど、科学だけでは答えの出ない問いが増えます。生命倫理は、医学に哲学・法学・社会学などの知識を持ち寄って考える分野です。
第二次世界大戦中の人体実験への反省から、医学研究では何が求められるようになったか?
被験者本人の自発的な同意を得ること
ナチス=ドイツの医師による人体実験が裁かれたことを受けて、1947 年にニュルンベルク綱領が示された。
医師が治療の内容や危険を十分に説明し、患者がそれを理解したうえで同意することを何という?
インフォームド・コンセント
医師が決めて患者が従う関係から、患者が自分で選ぶ関係へと変わってきた。
iPS 細胞が ES 細胞に比べて、倫理上の問題が少ないとされるのはなぜか?
受精卵を壊さずに、皮膚などの体の細胞から作れるから
山中伸弥はこの研究で 2012 年にノーベル生理学・医学賞を受けた。
臓器移植をめぐって、日本で 1997 年の臓器移植法の制定の際に大きな論点となったことは?
脳死を人の死とみなすかどうか
移植を待つ患者を救う医療技術と、死をどう定めるかという生命倫理の問いがぶつかった。