AI利活用の原則及び指針
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
シラバス案 Ver.0.1 の小分類 1「AI利活用の原則及び指針」(大分類 2:データ・AIの利活用/中分類 10:AI利活用)。
2026-09-26 にシラバス本文と突合済み。
「人間中心の AI 社会原則」は内閣府の原文(平成 31 年 3 月 29 日 統合イノベーション戦略推進会議決定)、
「AI 事業者ガイドライン」は総務省・経済産業省の第 1.2 版(令和 8 年 3 月 31 日)の本編で確認した。
0. 何を押さえるか
国が示した 2 つの文書の区別が中心です。
| 人間中心のAI社会原則 | AI事業者ガイドライン | |
|---|---|---|
| いつ | 2019 年 3 月 | 2024 年 4 月に第 1.0 版(その後改訂。最新は第 1.2 版) |
| 誰が | 統合イノベーション戦略推進会議(内閣府) | 総務省・経済産業省 |
| 何を示すか | AI と向き合う社会のあるべき姿と原則 | 事業者が実際に何に取り組むかの指針 |
| 誰向けか | 社会全体(とくに国などの立法・行政機関) | AI 開発者・AI 提供者・AI 利用者 |
原則が土台、ガイドラインがその実践という関係です。
AI 事業者ガイドラインは「人間中心の AI 社会原則」を土台にしています。
どちらも罰則のある法律ではありません。AI 事業者ガイドラインは自ら「非拘束的なソフトロー」と位置づけ、
事業者の自主的な取組を促します。
なお法律としては、2025 年 6 月に「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」(AI 法)が公布され、
同年 9 月に全面施行されています。
1. 人間中心のAI社会原則
根拠: シラバス 2-10-1
AI をどう使う社会を目指すかを、国として最初にまとめた原則です。
人間中心のAI社会原則とは? いつ、どこが決めたか?
AI を社会に受け入れ、適正に使うために、社会と開発・事業者が留意すべき基本原則を示したもの
- 2019 年 3 月に統合イノベーション戦略推進会議が決定(事務局は内閣府)
- 基本理念 → 目指す社会(AI-Ready な社会)→ 原則、という構成
後の AI 事業者ガイドラインの土台になった。
人間中心のAI社会原則が掲げる 3 つの基本理念とは?
| 基本理念 | 英語 |
|---|---|
| 人間の尊厳が尊重される社会 | Dignity |
| 多様な背景を持つ人々が多様な幸せを追求できる社会 | Diversity & Inclusion |
| 持続性ある社会 | Sustainability |
尊厳・多様性・持続性の 3 つ。
AI を使うこと自体が目的ではなく、この 3 つを備えた社会のために使うという位置づけ。
「AI-Ready な社会」とは?
社会全体が AI の便益を最大限に受けられるように変革され、必要なときにすぐ AI を導入してその恩恵を得られる状態にある社会
原文の例:
- 個人 … すべての人が仕事や生活で AI を使えるリテラシーを身に着けている
- 企業 … AI 活用を前提とした経営戦略でビジネスを展開している
- イノベーション環境 … あらゆる情報が AI で解析できるようデジタル化・データ化されている
AI に合わせて人・企業・社会の側が変わることを求めている。
(シラバスの表記は「AI-ready な社会」。)
AI社会原則の 7 つの原則を挙げよ。
- 人間中心の原則
- 教育・リテラシーの原則
- プライバシー確保の原則
- セキュリティ確保の原則
- 公正競争確保の原則
- 公平性,説明責任及び透明性の原則
- イノベーションの原則
6 番は「公平性」「説明責任」「透明性」の 3 つをまとめて 1 つの原則にしている。
「AI社会原則」と「AI開発利用原則」は、それぞれ誰が留意すべきものか?
| 誰が留意するか | |
|---|---|
| AI 社会原則 | 社会(とくに国などの立法・行政機関)。国や自治体を含む社会全体で実現すべき枠組み |
| AI 開発利用原則 | AI の研究開発と社会実装に携わる開発者・事業者 |
人間中心の AI 社会原則は、この 2 つに体系化されている。
社会(国)の側と、開発・事業者の側で分けている。
人間中心の原則は、何を求めているか?
- AI の利用は、憲法や国際的な規範が保障する基本的人権を侵してはならない
- AI は人々の能力を拡張し、多様な幸せの追求を可能にするために使う
- 人が AI に過度に依存したり、AI で人の意思決定を操作したりしないようにする
- AI をどう使うかは、人が自ら判断し決定する
- 「情報弱者」「技術弱者」を生まないよう、使いやすさに配慮する
AI は人間を補助する道具であり、決めるのは人間、が中心。
公平性,説明責任及び透明性の原則は、何を求めているか?
| 要素 | 求めること |
|---|---|
| 公平性 | 人種・性別・国籍・年齢・政治的信念・宗教などを理由に不当に差別されない |
| 説明責任(アカウンタビリティ) | 意思決定の結果について責任を持って説明できる |
| 透明性 | AI を使っているという事実、データの取得・使用方法、結果の適切さを担保する仕組みについて、適切な説明が得られる |
これらによって、AI とデータ・アルゴリズムへの信頼性(Trust)を確保する。
次の記述は AI社会原則のどの原則に当たるか?
「特定の企業に AI の資源が集中しても、その地位を利用した不公正な競争が行われてはならない」
「国境や産学官民の垣根を越えて、国際化・多様化と連携を進め、規制改革を進める」
「パーソナルデータが本人の望まない形で流通・利用されないようにする」
「特定の企業に AI の資源が集中しても、その地位を利用した不公正な競争が行われてはならない」
「国境や産学官民の垣根を越えて、国際化・多様化と連携を進め、規制改革を進める」
「パーソナルデータが本人の望まない形で流通・利用されないようにする」
| 記述 | 原則 |
|---|---|
| 資源の集中を利用した不公正な競争をさせない | 公正競争確保の原則 |
| 垣根を越えた連携・規制改革 | イノベーションの原則 |
| 本人の望まない流通・利用をさせない | プライバシー確保の原則 |
競争の公正さ、革新の促進、個人データの保護で分ける。
2. AI政策・標準化の動向
根拠: シラバス 2-10-1
原則を、事業者が実際に何をすればよいかまで落としたのが AI 事業者ガイドラインです。
AI事業者ガイドラインとは? いつ、どこが策定したか?
事業者が AI を安全・安心に活用するための、国の統一的な指針
- 総務省と経済産業省が、それまでの 3 つのガイドラインを統合・見直しして策定
- 2024 年 4 月に第 1.0 版、2025 年 3 月に第 1.1 版、2026 年 3 月に第 1.2 版
- 非拘束的なソフトロー(罰則はない。事業者の自主的な取組を促す)
技術の変化が速いので、改訂しながら使う「生きた文書」として運用されている。
AI事業者ガイドラインが対象とする 3 つの主体とは?
| 主体 | 何をする事業者か |
|---|---|
| AI 開発者 | AI モデル・AI システムを開発する |
| AI 提供者 | AI を組み込んだシステムやサービスを提供する |
| AI 利用者 | 事業活動の中で AI システム・サービスを利用する |
同じ事業者が複数の立場を兼ねることもある。
業務外で AI の便益を受ける一般の人(業務外利用者)は、このガイドラインの直接の対象ではない。
AI事業者ガイドラインの「共通の指針」10 項目を挙げよ。
- 人間中心
- 安全性
- 公平性
- プライバシー保護
- セキュリティ確保
- 透明性
- アカウンタビリティ
- 教育・リテラシー
- 公正競争確保
- イノベーション
AI 社会原則の 7 原則に、安全性などを加えて整理し直したもの。
すべての主体(開発者・提供者・利用者)に共通して求められる。
AI事業者ガイドラインが重視する「リスクベースアプローチ」とは?
リスクの大きさに応じて、対策の程度を変える考え方
- 人命や人権に大きく影響する使い方 → 厳しい対策
- 影響の小さい使い方 → 軽い対策で足りる
すべてに同じ厳しさを求めると、イノベーションを妨げ、対策も形だけになる。
あわせて、状況の変化に合わせて方針を素早く見直し続ける(アジャイル・ガバナンス)ことも求めている。