脅威と脆弱性
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
シラバス案 Ver.0.1 の小分類 6-23-1「脅威と脆弱性」(大分類 6:セキュリティ/中分類 23:情報セキュリティの脅威)。
2026-09-26 にシラバス本文と突合済み。
0. 何を押さえるか
シラバスはこの中分類のねらいを「異常が起きたときに気付き、適切に報告につなげる」ことに置いています。
名前を覚えるだけでなく、「これは何が起きているのか」を見分けられることが目標です。
まず、脅威と脆弱性は別物です。
| 何か | 例 | |
|---|---|---|
| 脅威 | 被害をもたらす原因(攻める側・起きる事象) | 不正アクセス、マルウェア、内部不正 |
| 脆弱性 | 脅威につけ込まれる弱点(守りの穴) | セキュリティホール、シャドー IT |
被害は、脅威が脆弱性を突いたときに生じます。
脅威は減らせないことが多いので、守る側は主に脆弱性を塞ぎます。
マルウェアは種類が多いので、何をするかで見分けてください。
| 何をするか | マルウェア |
|---|---|
| 外から操る | ボット(C&C サーバから指令を受ける) |
| 化けて入る | トロイの木馬 |
| こっそり盗む | スパイウェア、キーロガー |
| 裏口を作る | バックドア |
| 人質に取る | ランサムウェア |
| 痕跡を残さない | ファイルレスマルウェア |
1. 脅威の種類
根拠: シラバス 6-23-1
情報セキュリティの脅威は、「誰が・何をするか」で分けると整理しやすくなります。
外部からの攻撃だけでなく、内部の人やうっかりも脅威です。
不正アクセス・盗聴・なりすまし・改ざんの違いは?
| 何をするか | |
|---|---|
| 不正アクセス | 権限のない者が、他人の ID を使うなどしてシステムに入り込む |
| 盗聴 | 通信や会話を盗み聞く・盗み見る |
| なりすまし | 他人のふりをして、システムを使ったり相手をだましたりする |
| 改ざん | データや Web ページを無断で書き換える |
盗聴は「見られる」、改ざんは「変えられる」——
守る要素でいえば、盗聴は機密性、改ざんは完全性を損なう。
ソーシャルエンジニアリングとは? なぜ技術的対策で防げないか?
技術ではなく、人の心理や行動の隙をついて情報を得る手口
- 上司や取引先、システム管理者を装って電話で聞き出す
- 肩越しに画面やキー入力をのぞき見る(ショルダーハッキング)
- ごみ箱から書類を持ち出す(トラッシング)
だまされるのが人なので、機械の対策では止まらない。
本人確認の手順を決め、書類は裁断し、教育で守る。
ビジネスメール詐欺(BEC)とは? どう防ぐか?
取引先や経営者になりすまし、偽の請求や送金指示のメールを送って
お金をだまし取る詐欺(BEC:Business Email Compromise)
実際の取引の流れに紛れ込むので、
ばらまき型の迷惑メールと違って見抜きにくい。
対策は、メールだけで送金を完結させないこと。
振込先の変更などは、電話など別の経路で相手に確かめる。
情報漏えいと内部不正の関係は?
| 何か | |
|---|---|
| 情報漏えい | 情報が外部に出てしまうという結果 |
| 内部不正 | 従業員・元従業員・委託先など、内部の人による持ち出しや改ざん |
情報漏えいの原因は外部からの攻撃とは限らない。
内部不正や、メールの誤送信・PC の紛失といったうっかりからも起きる。
内部の人は正規の権限を持っているので、外からの攻撃より気づきにくい。
SNS の悪用と迷惑メール(スパム)は、どう脅威になるか?
| 何が問題か | |
|---|---|
| SNS の悪用 | 偽アカウントでのなりすまし、偽情報の拡散、悪意あるリンクの投稿。公開した個人情報が攻撃の下調べに使われることもある |
| 迷惑メール(スパム) | 受信者の同意なく大量に送られるメール。マルウェアやフィッシングサイトへの入口になる |
どちらも「開かせる・クリックさせる」ことが攻撃の第一歩になっている。
2. マルウェア・不正プログラム
根拠: シラバス 6-23-1
マルウェアは悪意のあるソフトウェアの総称です。
名前ではなく、感染したら何が起きるかで覚えてください。
ボットと C&C サーバの関係は?
ボット = 感染した端末を、外部から遠隔操作できるようにするマルウェア
C&C サーバ(Command and Control サーバ)= ボットに指令を出す攻撃者側のサーバ
感染した多数の端末(ボットネット)が C&C サーバの命令で一斉に動き、
DDoS 攻撃や迷惑メールの送信に使われる。
自分の端末が、知らないうちに攻撃の加担者になるのが特徴。
トロイの木馬・スパイウェア・キーロガーの違いは?
| 何をするか | |
|---|---|
| トロイの木馬 | 便利なソフトに見せかけて入り込み、内部で不正を働く |
| スパイウェア | 利用者に知られないように情報を収集して外部へ送る |
| キーロガー | キー入力を記録して、パスワードなどを盗む |
トロイの木馬は「入り方」の名前、
スパイウェア・キーロガーは「入ったあと何をするか」の名前。
バックドアとは? なぜ厄介か?
正規の認証を経ずに侵入できるよう、こっそり仕掛けられた裏口
いったん作られると、
最初に侵入された穴を塞いでも、攻撃者は裏口から入り続けられる。
侵入を受けたら、穴を塞ぐだけでなく
仕掛けられたものがないか調べる必要があるのはこのため。
ランサムウェアとは?
データを暗号化して使えなくし、元に戻すことと引き換えに
金銭(身代金)を要求するマルウェア
さらに「払わなければ盗んだデータを公開する」と脅す手口もある
(二重脅迫)。
身代金を払っても復旧できる保証はない。
備えは、感染前にとっておくバックアップ。
ファイルレスマルウェアとは? なぜ見つけにくいか?
実行ファイルを保存せず、メモリ上や OS に元からある正規のツールを使って動くマルウェア
多くのマルウェア対策ソフトはファイルを調べて見つける。
ファイルが残らないので、その網にかかりにくい。
対策には、端末の振る舞いを見張る仕組み(EDR など)が向く。
3. 脆弱性
根拠: シラバス 6-23-1
セキュリティホールとシャドー IT は、どちらも脆弱性。それぞれ何が弱点か?
| 何か | 何が弱点か | |
|---|---|---|
| セキュリティホール | ソフトウェアの設計や作りの欠陥で、セキュリティ上の穴になるもの | 製品の中にある穴 |
| シャドー IT | 組織が把握・許可していない機器やクラウドサービスを、業務に勝手に使うこと | 管理の外にある穴 |
セキュリティホールは修正プログラムで塞げる。
シャドー IT は管理者が存在を知らないので、対策も監視もできない。
使う本人に悪意がなくても、情報がどこへ出たか追えなくなる。
4. 不正の動機・メカニズム
根拠: シラバス 6-23-1
ダークウェブとリークサイトとは?
| 何か | |
|---|---|
| ダークウェブ | 特殊なソフトを使わないと到達できない、匿名性の高いネット上の領域。盗まれた情報や攻撃ツールの売買の場になる |
| リークサイト | ランサムウェアの攻撃者などが、盗んだデータを公開する(公開すると脅す)ためのサイト |
盗まれた情報はお金に換えられる——
それが攻撃の動機になっている。
不正のトライアングルとは? 組織が手を打ちやすいのはどれか?
不正は次の 3 つがそろったときに起きる、という考え方。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 機会 | 不正ができてしまう状況(1 人で完結できる、チェックがない) |
| 動機 | やりたい理由(金銭的な困窮、処遇への不満) |
| 正当化 | 自分を納得させる理屈(「これくらい許される」「会社が悪い」) |
組織が最も手を打ちやすいのは「機会」——
権限を必要最小限にし、作業を複数人で確認し、ログを取ってそれを周知する。