漢文と日本語
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
0. どういうまとまりか
漢文は外国(中国)の文章ですが、日本では 1000 年以上にわたって日本語として読まれ、書かれてきました。
そのため、今の日本語には漢文から受け取ったものが、文字・語・文体の 3 つの層で残っています。
| 層 | 受け取ったもの | 例 |
|---|---|---|
| 文字 | 漢字(そこから片仮名・平仮名も生まれた) | 山・川、カ・か |
| 語 | 漢語(漢字の音で読む語)と、明治の翻訳語 | 学問・天下、社会・自由・哲学 |
| 文体 | 漢文訓読の文体と、そこから来た言い回し | いまだ〜ない、いわんや、すべからく |
分かれ目は次の 3 つ。
- 訓読は翻訳ではない。原文の漢字と語順を残したまま、記号と仮名で日本語として読む。
- 漢文訓読の文体は、今も書き言葉の骨格の一つになっている。
- 明治の翻訳語は、西洋の概念を漢字の組み合わせで訳した語で、古い漢語に新しい意味を与えたものもある。
1. 訓読という読み方
根拠: 学習指導要領 言語文化-(2)-ア
漢文訓読は、中国語の文章を、中国語の発音や語順で読むのではなく、日本語の語順と文法で読む方法です。
原文には手を加えず、返り点で読む順を、送り仮名で助詞・助動詞や活用語尾を補います。
平安時代には、漢字の四隅などに付けた点の位置で「を」「こと」などの助詞や語を示すヲコト点も使われました。
訓読の書き込みに漢字の一部を取った略字を使ったことが、片仮名の成り立ちにつながっています。
中国語の文章である漢文を、原文を残したまま、日本語の語順と文法で読む方法を何というか?
漢文訓読(訓読)
返り点で読む順を示し、送り仮名で助詞・助動詞や活用語尾を補う。
漢文訓読が、現代語訳(翻訳)と違う点は?
原文の漢字と語順をそのまま残し、記号と仮名を書き添えるだけで日本語として読む点。
訳文を別に作らないので、原文と読みが 1 つの紙面の上で対応する。
平安時代、漢文を訓読するために漢字の四隅などに付け、その位置で「を」「こと」などの助詞や語を示した点を何というか?
ヲコト点
「を」と「こと」を表す点の読みを並べて、この名で呼ばれる。
2. 漢字・漢語と漢文訓読の文体
根拠: 学習指導要領 言語文化-(2)-ア
日本語はもともと固有の文字を持たず、中国から伝わった漢字で書き表すようになりました。
語の面では、漢字の音で読む漢語が大量に入り、和語(大和言葉)・外来語と並ぶ語種の一つになっています。
文体の面では、漢文を訓読した調子の文体が、現代においても日本語の文章表現の骨格の一つになっています。
中国から伝わった、または漢字の音を組み合わせて作られた、漢字の音で読む語を何というか?
漢語
和語(訓で読む語)・外来語と並ぶ日本語の語種の一つ。例: 学問・天下・人生。
漢文を訓読した調子の文体で、現代においても日本語の書き言葉の骨格の一つになっているものを何というか?
漢文訓読体(漢文訓読の文体)
明治の法令や論説文はこの文体で書かれ、今の硬い書き言葉にもその調子が残っている。
「いまだ〜ない」「すべからく〜べし」「いわんや〜をや」のような言い回しは、どこから日本語に入ったか?
漢文訓読(再読文字「未」「須」や抑揚「況」を訓読した読み方)
訓読の読み癖が、そのまま日本語の書き言葉の言い回しとして定着した。
現存する最古の、日本人による漢詩集は?
懐風藻(奈良時代)
日本人が漢文を読むだけでなく、自ら漢詩文を作っていたことを示す。
3. 明治の翻訳語
根拠: 学習指導要領 言語文化-(2)-ア
明治時代、西洋の学問や制度を取り入れるときに、日本語に無い概念を漢字を組み合わせた語で訳しました。
新しく作った語もあれば、「自由」のように昔からある漢語に新しい意味を与えた語もあります。
こうした語の多くは、のちに中国でも使われるようになりました。
| 翻訳語 | 元の概念(英語) |
|---|---|
| 社会 | society |
| 自由 | liberty・freedom |
| 哲学 | philosophy |
| 個人 | individual |
| 権利 | right |
明治時代、西洋の概念を漢字の組み合わせで日本語に訳した語を何というか? 例を 3 つ挙げると?
翻訳語。例: 社会(society)・自由(liberty)・哲学(philosophy)。
漢語の造語力を使って、日本語に無かった概念を表した。
philosophy の訳語として「哲学」という語を作ったのはだれか?
西周(にし・あまね)
明治の初めに、西洋の学問の用語を数多く漢語で訳した。
「自由」は明治に新しく作られた語ではない。翻訳語としてはどういう成り立ちか?
昔からある漢語に、西洋の liberty・freedom の意味を新しく与えたもの。
もとは「思いのままにふるまうこと」の意で、翻訳語として権利としての自由を表すようになった。
明治に日本で作られた翻訳語の多くは、その後どうなったか?
中国に取り入れられ、今の中国語でも使われている。
漢字を共有しているため、日本で作った漢語がそのまま中国へ逆に渡った。