平安貴族の暮らし
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
0. どういうまとまりか
古文の多くは、平安時代の貴族社会で書かれ、その社会を舞台にしています。書き手は読み手が当然知っていることを書きません。
今の私たちが知らない習慣は、文には書かれないまま筋を動かしています。
| まとまり | 中身 | 読むときに効くところ |
|---|---|---|
| 結婚と恋 | 通い婚・後朝・垣間見・和歌の贈答 | 男が夜に訪れ、朝に帰る。恋は和歌で進む |
| 信仰と禁忌 | 方違え・物忌・陰陽師・出家 | 行き先を変える、家にこもる理由になる |
| 身分と仕事 | 官位・女房・内裏と後宮 | 敬語の重さ、誰が誰に仕えているか |
| 人生の節目 | 元服・裳着 | 成人して結婚や出仕ができるようになる |
| 住まい | 寝殿造・几帳・簾 | 女性は奥にいて、顔を見せない |
| 暦と時刻 | 陰暦・月の呼び名・十二支 | 季節の言葉、夜の時刻、方角 |
分かれ目は次の 3 つ。
- 女性は簾や几帳の奥にいて、男性に顔を見せない。だから「のぞき見る(垣間見)」ことや、和歌のやりとりが恋の始まりになる。
- 関白・大臣は政治の頂点、受領は地方へ行く中流貴族。清少納言・紫式部・菅原孝標女は、みな受領の家の娘である。
- 陰暦の季節は今より 1 か月ほど早い。一月から三月が春で、七月はもう秋になる。
1. 結婚と恋
根拠: 学習指導要領 言語文化-(2)-イ
古文の恋の場面は、今の恋愛とは段取りが違います。この文化的背景を知っていると、
「夜が明ける前に帰る」「翌朝に手紙を送る」といった場面の意味がすぐに分かります。
男性は女性の家に夜に通い、夜明け前に帰ります。夫婦は同じ家に住まないのがふつうでした。
平安貴族の結婚で、夫が夜に妻の家へ通い、夫婦が同じ家に住まない形を何というか?
通い婚(妻問婚)
男性が夜に女性の家を訪れ、夜明け前に帰る。通いが途絶えることは、関係が終わることを意味した。
「後朝(きぬぎぬ)」とは何か?
男女が一夜を共にした翌朝(の別れ)
男性は帰ってからすぐに「後朝の文(ふみ)」という手紙や和歌を女性に送るのが礼儀だった。
「垣間見(かいまみ)」とは何か?
物のすきまから、こっそりのぞき見ること
女性は人に顔を見せないので、男性が垣根や簾のすきまから女性を見ることが恋の始まりになる。
恋の気持ちは和歌の贈答で伝え合いました。歌の出来や筆跡、紙の選び方まで、相手の人柄を知る手がかりにされました。
2. 信仰と禁忌
根拠: 学習指導要領 言語文化-(2)-イ
平安の人々は、方角や日の吉凶を強く気にしました。出かける日を変えたり、家にこもったりするのは、
怠けているのではなく、災いを避けるためのきまりです。
「方違え(かたたがえ)」とは何か?
行き先の方角が悪いとき、前日に別の方角の家に泊まり、方角を変えてから目的地へ行くこと
方違えで他人の家に泊まることが、物語の出会いのきっかけにもなる。
「物忌(ものいみ)」とは何か?
悪い夢や占いの結果を受けて、一定の間、家にこもって身を慎むこと
物忌の間は人に会わず、手紙も受け取らないことがある。
方違えや物忌を判断したのは、占い・暦・天文を受け持つ陰陽寮の官人、陰陽師です。
古文で「世を捨つ」「様(さま)を変ふ」「頭(かしら)おろす」は何をすることか?
出家(俗世を捨てて仏門に入ること)
髪をそって僧や尼になる。死や別れ、失意の場面でよく出てくる。
3. 身分と住まい
根拠: 学習指導要領 言語文化-(2)-イ
誰がどの地位にいるかで、敬語の使い方も、話の中での重さも変わります。官職の上下をおおまかに押さえます。
| 地位 | 中身 |
|---|---|
| 摂政・関白 | 摂政は幼い天皇に代わって、関白は成人した天皇を補佐して政治を行う |
| 大臣 | 太政大臣・左大臣・右大臣など |
| 上達部(かんだちめ) | 大臣・大納言・中納言・参議など、三位以上(と四位の参議) |
| 殿上人 | 清涼殿の殿上の間に昇ることを許された人 |
| 蔵人 | 天皇のそばに仕え、取り次ぎや身の回りの用を務める |
| 受領 | 任国に赴いて実際に政治を行う国司の長官(守) |
成人した天皇を補佐して政治を行う、臣下の最高の地位を何というか?
関白
天皇が幼いときに代わりに政治を行うのは摂政。藤原氏がこの地位を独占した(摂関政治)。
平安時代の官職で、任国に実際に赴いてその国を治めた国司の長官を何というか?
受領(ずりょう)
中流貴族で、任国で富を蓄えることができた。清少納言・紫式部の父も受領を務めた。
宮中や貴族の家に仕え、自分の部屋(房)を与えられた女性を何というか?
女房
清少納言は中宮定子に、紫式部は中宮彰子に女房として仕えた。女房が宮仕えの経験から多くの作品を書いた。
天皇の住む御殿の区域を内裏、そのうち后や女御たちが住む殿舎(弘徽殿・藤壺など)の区域を後宮といいます。
平安時代の男子と女子の成人の儀式をそれぞれ何というか?
男子は元服(初めて冠をつける)、女子は裳着(もぎ)(初めて裳をつける)。
成人すると結婚や宮仕えができるようになる。
寝殿造の室内で、女性が姿を隠すために使った、台に柱を立てて布を垂らした移動式の仕切りを何というか?
几帳(きちょう)
さらに外側には簾(すだれ・御簾)を下ろす。女性はこの奥にいて、男性とは簾ごしに話す。
4. 暦・時刻・方角
根拠: 学習指導要領 言語文化-(2)-イ
平安時代は月の満ち欠けで日を数える陰暦(太陰太陽暦)です。十五日が満月(望月)で、そこから月の出が毎晩遅くなるので、
月の出を待つ姿で名前が付いています。
| 陰暦の日 | 月の名前 | 名前の由来 |
|---|---|---|
| 十五日 | 望月(十五夜) | 満月 |
| 十六日 | 十六夜(いざよい) | ためらう(いさよふ)ように少し遅れて出る |
| 十七日 | 立待月 | 立って待つうちに出る |
| 十八日 | 居待月 | 座って待つうちに出る |
| 十九日 | 寝待月(臥待月) | 寝て待つほど遅く出る |
| 二十日 | 更待月 | 夜が更けてから出る |
時刻と方角は、どちらも十二支で表します。一日を 12 に分けて 1 つの刻を 2 時間とし、子の刻が真夜中、午の刻が真昼です。
方角は子が北、卯が東、午が南、酉が西です。
| 季節 | 陰暦の月 | 月の異名 |
|---|---|---|
| 春 | 一・二・三月 | 睦月・如月・弥生 |
| 夏 | 四・五・六月 | 卯月・皐月・水無月 |
| 秋 | 七・八・九月 | 文月・葉月・長月 |
| 冬 | 十・十一・十二月 | 神無月・霜月・師走 |
陰暦で、春・夏・秋・冬はそれぞれ何月にあたるか?
春は一〜三月、夏は四〜六月、秋は七〜九月、冬は十〜十二月
陰暦の一月は今の二月ごろにあたるので、季節の区切りが今の感覚より 1 か月ほど早い。七夕(七月七日)はもう秋の行事になる。
陰暦十六日の夜の月を何というか? その名の由来は?
十六夜(いざよい)
満月の翌晩で、月の出が少し遅れる。ためらう意味の「いさよふ」から。
陰暦十七日・十八日・十九日の月を、月の出を待つ姿からそれぞれ何というか?
十七日は立待月、十八日は居待月、十九日は寝待月(臥待月)
二十日の月は、夜が更けてから出るので更待月という。
十二支で表す時刻で、「子(ね)の刻」と「午(うま)の刻」はそれぞれいつごろか?
子の刻は真夜中(午前零時ごろ)、午の刻は真昼(正午ごろ)
「正午」「午前」「午後」の「午」はここから来ている。
北東(丑と寅の間、艮)は鬼が出入りする鬼門として忌まれました。