比較・選択・仮定
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
0. どういうまとまりか
比較は2 つを比べる言い方、選択は2 つのうちどちらを取るかを言う言い方、仮定は「もし〜ならば」「たとえ〜でも」と条件を置く言い方です。
| 句法 | 形 | 読み | 意味 |
|---|---|---|---|
| 比較 | A+形容詞+於(乎)B | AハBヨリ(モ)〜 | AはBよりも〜 |
| 比較 | A不如(不若)B | AハBニしカず | AはBに及ばない |
| 最上 | 莫如(無若)A | Aニしクハなシ | Aに及ぶものはない |
| 選択 | 寧A無B | むしロAトモBなカレ | いっそAしてもBするな |
| 選択 | 与其A不如B | 其ノAセンよりハBニしカず | AするよりはBするほうがよい |
| 仮定 | 如・若 | もシ〜バ | もし〜ならば |
| 仮定 | 苟 | いやしクモ〜バ | かりにも〜ならば |
| 仮定(逆接) | 縦・縦令 | たとヒ〜トモ | たとえ〜しても |
| 逆接 | 雖 | 〜トいへどモ | 〜けれども・たとえ〜でも |
分かれ目は次の 3 つ。
- 「於」が形容詞の後にあれば比較(「より」と読む)。置き字なので「於」自体は読まない。
- 「不如」は「及ばない」、「莫如」は「及ぶものはない=いちばんよい」。
- 「如・若」は仮定の「もシ」にも、比較の「しク」にも、比況の「ごとシ」にもなる。位置と送り仮名で決める。
1. 比較
根拠: 学習指導要領 言語文化-(2)-ウ
形容詞の後に「於・乎・于」があれば、後の語に「ヨリ(モ)」を送って比較で読みます。
「A+形容詞+於B」の形の「於」はどう読み、全体はどういう意味になるか?
「於」は置き字で読まず、B に「ヨリ(モ)」を送る。意味は「A は B よりも〜」(比較)。
例: 苛政猛於虎也 →「苛政は虎よりも猛なり」(むごい政治は虎よりも恐ろしい)。礼記「檀弓下」。
「霜葉紅於二月花」を書き下して訳すと?
霜葉は二月の花よりも紅なり(霜にあたって色づいた葉は、春二月の花よりも赤い)。
「紅」の後の「於」が比較を表す。杜牧「山行」。
「青取之於藍、而青於藍」の 2 つの「於」の働きの違いは?
前の「於」は起点(藍から)、後の「於」は比較(藍よりも)。
書き下し「青は之を藍より取りて、藍よりも青し」(青色は藍草から取るが、藍草よりも青い)。荀子「勧学」。
「A不如B」「A不若B」の読みと意味は?
AハBニしカず(AはBに及ばない)
例: 百聞不如一見 →「百聞は一見に如かず」(百回聞くのは一回見るのに及ばない)。漢書「趙充国伝」。
「莫如A」「無若A」の読みと意味は?
Aニしクハなシ(Aに及ぶものはない=Aがいちばんよい)
例: 「莫㆑如㆑学」→「学ぶに如くは莫し」(学ぶことに及ぶものはない)。
2. 選択
根拠: 学習指導要領 言語文化-(2)-ウ
2 つのうちどちらを選ぶかを言う形です。「寧」の付いたほうを取り、もう一方を退けます。
「寧A無B」の読みと意味は?
むしロAトモBなカレ(いっそAしても、Bするな)
例: 寧為鶏口、無為牛後 →「寧ろ鶏口と為るとも、牛後と為る無かれ」(いっそ鶏のくちばしになっても、牛の尻にはなるな)。史記「蘇秦列伝」。
「与其A不如B」の読みと意味は?
其ノAセンよりハ、Bニしカず(AするよりはBするほうがよい)
例: 「与㆓其多言㆒、不㆑如㆑黙」→「其の多言せんよりは、黙するに如かず」(口数多く話すよりは、黙っているほうがよい)。
「礼、与其奢也寧倹」を書き下して訳すと?
礼は其の奢らんよりは寧ろ倹せよ(礼は、ぜいたくにするよりは、むしろ質素にせよ)。
「与其A寧B」は「AよりはむしろB」と B を選ぶ形。論語「八佾」。
3. 仮定と逆接
根拠: 学習指導要領 言語文化-(2)-ウ
仮定の字は文頭に置かれ、下の動詞に「バ」「トモ」を送って条件を表します。字が無くても送り仮名だけで仮定になることがあります。
仮定の「如」「若」の読みと意味は?
もシ〜バ(もし〜ならば)
例: 「如有㆑過」→「如し過ち有らば」(もし過ちがあれば)。
仮定の「苟」の読みと意味は?
いやしクモ〜バ(かりにも〜ならば)
例: 苟有過、人必知之 →「苟しくも過ち有らば、人必ず之を知る」(かりにも過ちがあれば、人が必ずそれに気づいてくれる)。論語「述而」。
「縦」の読みと意味は?
たとヒ〜トモ(たとえ〜しても)。仮定の逆接。
例: 縦江東父兄憐而王我、我何面目見之 →「縦ひ江東の父兄憐れみて我を王とすとも、我何の面目ありてか之に見えん」(たとえ故郷の人々が哀れんで私を王にしてくれても、どんな顔で会えようか)。史記「項羽本紀」。
「雖」の読みと意味は?
〜トいへどモ(〜けれども・たとえ〜でも)
例: 「雖㆑貧不㆑憂」→「貧しと雖も憂へず」(貧しいけれども心配しない)。
「不入虎穴、不得虎子」のように、仮定の字が無くても仮定で読むとき、前半はどう書き下すか?
虎穴に入らずんば(打消「ず」の連用形+係助詞「は」=「ずは」が変化した「ずんば」)。
全体は「虎穴に入らずんば、虎子を得ず」(虎の穴に入らなければ、虎の子は得られない)。後漢書「班超伝」。