断定・比況・希望の助動詞
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
0. どういうまとまりか
残りの助動詞を、意味ごとにまとめます。数は少ないですが、断定の「なり」とその連用形「に」は、識別の問題で最もよく問われる語です。
| 助動詞 | 接続 | 意味 | 訳 |
|---|---|---|---|
| なり | 連体形・体言 | 断定・存在 | 〜である/〜にある |
| たり | 体言 | 断定 | 〜である |
| ごとし | 連体形・助詞「が」「の」 | 比況・例示 | 〜のようだ/たとえば〜のようだ |
| まほし | 未然形 | 希望 | 〜たい・〜てほしい |
| たし | 連用形 | 希望 | 〜たい・〜てほしい |
分かれ目は次の 3 つ。
- 「なり」は 4 通り。断定の助動詞・伝聞推定の助動詞・形容動詞の語尾・動詞「成る」。
- 「に」は主に 5 通り。断定「なり」の連用形・格助詞・接続助詞・完了「ぬ」の連用形・形容動詞の語尾。
- 断定「なり」の連用形「に」は、下に「あり」(侍り・おはす)や「や・か・こそ」が続く。「にあり」は「〜である」と訳す。
1. 断定の「なり」「たり」
根拠: 学習指導要領 言語文化-(2)-ウ
断定の「なり」は「に+あり」が、「たり」は「と+あり」がつづまってできた語です。
「なり」は場所を表す語についたとき、「〜である」ではなく「〜にある」(存在)の意味になります。
断定の助動詞「なり」の 2 つの意味は?
断定(〜である)と存在(〜にある・〜にいる)
存在になるのは、場所を表す語につくとき(多くは連体形「なる」で下に体言が続く)。
「都なる人」の「なる」の意味は?
存在「〜にいる」(「都にいる人」)
「都」は場所を表す語。「都である人」では意味が通らない。
断定の助動詞「たり」は、どんな文章に多く、どう訳すか?
和漢混交文(軍記物語など)に多く、「〜である」と訳す
体言につき、主に身分・資格を表す(「一門の大将軍たり」)。平安時代の和文では「なり」が使われる。
2. 「なり」の識別
根拠: 学習指導要領 言語文化-(2)-ウ
「なり」の形をした語は 4 通りあります。助動詞どうしは接続で、形容動詞と動詞は意味と上の語で見分けます。
| 「なり」の正体 | 見分け方 | 例 |
|---|---|---|
| 断定の助動詞 | 連体形・体言につく | 人なり(人である) |
| 伝聞推定の助動詞 | 終止形(ラ変型には連体形)につく | 鳴くなり(鳴いているようだ) |
| 形容動詞の語尾 | 状態を表し、「いと」をつけて言える | 静かなり・あはれなり |
| 動詞「成る」 | 「〜に」「〜と」「〜く」の下で「なる」の意味 | 大人になりぬ |
断定の「なり」と伝聞推定の「なり」を、接続で見分けると?
連体形・体言につけば断定、終止形につけば伝聞推定
行くなり(四段は終止形と連体形が同じ形なので、文脈で決める)/人なり(断定)/すなり(サ変終止形なので伝聞推定)。
「男もすなる日記といふものを、女もしてみむとてするなり」の「なる」と「なり」はそれぞれ何か?
「なる」=伝聞推定の「なり」(連体形)、「なり」=断定の「なり」
「す」はサ変の終止形、「する」は連体形。「男も書くという日記というものを、女の私も書いてみようと思って書くのである」(土佐日記)。
「あり」などラ変型の語についた「なり」(あるなり)は、接続で断定か伝聞推定か決まるか?
決まらない(ラ変型には伝聞推定も連体形につくため)。文脈で決める。
撥音便の「あんなり」「あなり」の形なら伝聞推定。
3. 比況の「ごとし」
根拠: 学習指導要領 言語文化-(2)-ウ
「ごとし」は、あるものを別のものにたとえる比況(〜のようだ)と、例を挙げる例示(たとえば〜のようだ)を表します。
和漢混交文や漢文訓読の文に多く出ます。
助動詞「ごとし」の意味は?
比況(〜のようだ)と例示(たとえば〜のようだ)
連体形のほか、助詞「が」「の」につく(花のごとし、言ふがごとし)。
「ただ春の夜の夢のごとし」を訳すと?
「まるで春の夜の夢のようだ」(比況)
権勢を誇る人も長くは続かず、はかないことを、短い春の夜の夢にたとえている(平家物語の書き出し)。
4. 希望の「まほし」「たし」
根拠: 学習指導要領 言語文化-(2)-ウ
どちらも「〜たい・〜てほしい」の意味です。平安時代の和文では「まほし」、鎌倉時代以降は「たし」が多くなり、「たし」が今の「たい」になりました。
希望の助動詞「まほし」と「たし」の接続の違いは?
まほし=未然形、たし=連用形
見まほし・見たし(どちらも「見たい」)。平安時代の和文は「まほし」、中世以降は「たし」が多い。
「少しのことにも、先達はあらまほしきことなり」の「まほしき」はどう訳すか?
「〜てほしい」(「ちょっとしたことにも、案内者はあってほしいものである」)
徒然草「仁和寺にある法師」の結び。「まほし」は自分の希望(〜たい)のほか、他への望み(〜てほしい)も表す。
5. 「に」の識別
根拠: 学習指導要領 言語文化-(2)-ウ
「に」は古文でいちばん紛らわしい語の一つです。下に続く語と上の語の形を見れば、ほとんど決まります。
| 「に」の正体 | 見分け方 | 例 |
|---|---|---|
| 断定「なり」の連用形 | 体言・連体形につき、下に「あり・侍り」や「や・か・こそ」(+あらむ の省略) | 人にあらず |
| 完了「ぬ」の連用形 | 連用形につき、下に「き・けり・たり・けむ」 | 散りにけり |
| 格助詞 | 体言・連体形につき、時・場所・相手などを表す | 夕べに帰る |
| 接続助詞 | 連体形につき、「〜と・〜ので・〜のに」と訳せる | 行きけるに |
| 形容動詞の語尾 | 状態を表す語の一部(「いと」がつく) | 静かに |
断定の助動詞「なり」の連用形「に」を見分ける手がかりは?
下に「あり」(侍り・おはす)や、係助詞「や・か・こそ」が続く
「〜にあり」は「〜である」、「〜にや」「〜にか」は下に「あらむ」などが省略されている。
「しかももとの水にあらず」の「に」は何か?
断定の助動詞「なり」の連用形
下に「あり」が続く。「〜にあらず」で「〜ではない」(「しかも、もとの水ではない」。方丈記)。
「いづれの御時にか」の「に」は何か?
断定の助動詞「なり」の連用形
下に係助詞「か」が続き、その後の「あらむ」が省略されている。「どの帝の御代であったか」(源氏物語の書き出し)。
「花の色はうつりにけりな」の「に」は何か?
完了の助動詞「ぬ」の連用形
連用形「うつり」について、下に過去の「けり」が続く。「にけり」「にき」「にたり」「にけむ」の「に」は完了。
連体形についた「に」が接続助詞だと分かるのは、どう訳せるときか?
「〜と・〜ところ」「〜ので」「〜のに」と、前後の文をつないで訳せるとき
「門をたたきけるに、人出で来たり(門をたたいたところ、人が出てきた)」。「〜のときに」と訳せるなら格助詞。