否定の句法
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
0. どういうまとまりか
漢文の否定は、何を打ち消すかで字が分かれます。さらに否定を 2 つ重ねると強い肯定に、
否定の字と副詞(常・倶 など)の順序を入れ替えると「全部ではない」と「全部〜ない」に分かれます。
| 字 | 読み | 意味 |
|---|---|---|
| 不・弗 | ず | 〜しない(動作・状態の打消) |
| 非・匪 | あらズ | 〜ではない(名詞・判断の打消) |
| 無・莫・毋 | なシ | 〜がない(存在の打消) |
| 勿・毋・莫・無 | なカレ | 〜するな(禁止) |
| 未 | いまダ〜ず | まだ〜しない(再読文字) |
分かれ目は次の 3 つ。
- 不=しない、非=ではない、無=がない、勿=するな。打ち消すものが動作か、判断か、存在か、命令かで字を選ぶ。
- 二重否定は強い肯定。「無不〜」は「〜しないものはない」=すべて〜する。
- 否定の字が先なら部分否定、副詞が先なら全部否定。「不常〜」はいつも〜とは限らない、「常不〜」はいつも〜しない。
1. 否定の字
根拠: 学習指導要領 言語文化-(2)-ウ
書き下しでは、「不・弗」は助動詞「ず」なのでひらがなに、「非」「無」は動詞・形容詞なので漢字のまま残します。
否定の字「不」「弗」の読みと意味は?
ず(〜しない)
例: 「不㆑知」→「知らず」(知らない)。書き下しでは助動詞なので「ず」とひらがなにする。
否定の字「非」の読みと意味は?
あらズ(〜ではない)。名詞や判断を打ち消す。
例: 子非魚、安知魚之楽 →「子は魚に非ず、安くんぞ魚の楽しみを知らんや」(君は魚ではない、どうして魚の楽しみが分かろうか)。荘子「秋水」。
否定の字「無」「莫」を「なシ」と読むとき、意味は?
〜がない(存在の打消)
例: 「無㆑人」→「人無し」(人がいない)。
「勿」「毋」を「なカレ」と読むとき、意味は?
〜するな(禁止)
例: 己所不欲、勿施於人 →「己の欲せざる所は、人に施すこと勿かれ」(自分が望まないことは、人にしてはならない)。論語「顔淵」。
2. 二重否定
根拠: 学習指導要領 言語文化-(2)-ウ
否定を 2 つ重ねると、強い肯定になります。訳すときは「〜しないものはない」とそのまま訳すか、「必ず〜する」と言い換えます。
二重否定「無不〜」の読みと意味は?
〜ざル(ハ)なシ(〜しないものはない=すべて〜する)
例: 「無㆓不㆑学者㆒」→「学ばざる者無し」(学ばない者はいない)。
二重否定「非不〜」の読みと意味は?
〜ざルニあらズ(〜しないのではない)
例: 城非不高也 →「城高からざるに非ざるなり」(城が高くないのではない)。孟子「公孫丑下」。
二重否定「不可不〜」の読みと意味は?
〜ざルベカラず(〜しなければならない)
例: 「不㆑可㆑不㆑学」→「学ばざるべからず」(学ばなければならない)。
二重否定「未嘗不〜」の読みと意味は?
いまダかつテ〜ずンバアラず(今まで〜しなかったことはない=いつも〜した)
例: 未嘗不歎息痛恨於桓霊也 →「未だ嘗て桓・霊に歎息痛恨せずんばあらざるなり」(桓帝・霊帝のことを嘆き恨まなかったことはなかった)。諸葛亮「出師表」。
3. 部分否定と全部否定
根拠: 学習指導要領 言語文化-(2)-ウ
否定の字と副詞(常・倶・必・甚・復 など)の順序で意味が変わります。
部分否定は、副詞の送り仮名に「ハ」を付けて「常には」「倶には」と読むのが目印です。
| 語順 | 読み | 意味 |
|---|---|---|
| 不常〜(部分否定) | 常には〜ず | いつも〜するとは限らない |
| 常不〜(全部否定) | 常に〜ず | いつも〜しない |
| 不倶〜(部分否定) | 倶には〜ず | 両方とも〜するわけではない |
| 倶不〜(全部否定) | 倶に〜ず | 両方とも〜しない |
| 不必〜(部分否定) | 必ずしも〜ず | 必ず〜するとは限らない |
| 必不〜(全部否定) | 必ず〜ず | 決して〜しない |
否定の字と副詞の順序で、部分否定になるのはどちらが先のときか?
否定の字が先(不+副詞+動詞)のとき。副詞が先なら全部否定。
部分否定では副詞に「ハ」を送り、「常には〜ず」「倶には〜ず」と読む。
部分否定「不常〜」の読みと意味は?
常には〜ず(いつも〜するとは限らない)
例: 千里馬常有、而伯楽不常有 →「千里の馬は常に有れども、伯楽は常には有らず」(名馬はいつもいるが、名馬を見抜く人はいつもいるとは限らない)。韓愈「雑説」。
全部否定「常不〜」の読みと意味は?
常に〜ず(いつも〜しない)
例: 「常不㆑怒」→「常に怒らず」(いつも怒らない)。
部分否定「不倶〜」の読みと意味は?
倶には〜ず(両方とも〜するわけではない)
例: 今両虎共闘、其勢不倶生 →「今両虎共に闘はば、其の勢ひ倶には生きず」(今二頭の虎が闘えば、どちらも生き残るというわけにはいかない)。史記「廉頗藺相如列伝」。
全部否定「倶不〜」の読みと意味は?
倶に〜ず(両方とも〜しない)
例: 「倶不㆑生」→「倶に生きず」(両方とも生きない)。