古典に由来する言葉
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
0. どういうまとまりか
今の日本語には、古典から生まれて意味を変えずに使われ続けている言葉があります。
中国の書物に書かれた出来事から生まれた故事成語と、日本の古典の有名な一節がそのまま慣用の言い回しになったものの 2 つです。
| 故事成語 | 出典 | もとの話の一場面 |
|---|---|---|
| 漁夫の利 | 戦国策 | 鷸(しぎ)と蚌(はまぐり)が争う間に漁師が両方を捕る |
| 四面楚歌 | 史記 | 包囲した漢軍の中から楚の歌が聞こえてくる |
| 臥薪嘗胆 | 十八史略 | 呉王は薪の上に寝、越王は苦い胆をなめて恨みを忘れない |
| 助長 | 孟子 | 苗の伸びを助けようと引っぱり、枯らしてしまう |
| 朝三暮四 | 列子 | 朝三つ暮れ四つと言うと怒った猿が、朝四つ暮れ三つで喜ぶ |
| 画竜点睛 | 歴代名画記 | 描いた竜に瞳を入れると、天へ昇っていく |
分かれ目は次の 3 つ。
- 話の中で「だれが得をし、だれが損をしたか」が意味を決める。漁夫の利なら、争った二者でなく第三者が得をする。
- 今の使い方がずれている語がある。「助長」は本来、余計な手出しでかえって害すること。
- 出典は、史記(項羽・韓信などの人物)と戦国策(遊説家のたとえ話)が多い。
1. 故事成語の意味と出典
根拠: 学習指導要領 言語文化-(2)-ウ
故事成語は、古典の基本的な語句と並んで古典特有の表現に数えられます。漢文の授業で原文を読んだ話が多いので、場面と組にして覚えます。
故事成語「漁夫の利」の意味と出典は?
二者が争っているすきに、第三者が苦労せず利益を得ること。出典は戦国策。
鷸(しぎ)と蚌(はまぐり)が互いに放さずにいるところを、漁師が両方とも捕らえた。
故事成語「蛇足」の意味と出典は?
よけいなつけ足し。無用なもの。出典は戦国策。
蛇の絵を早く描き終えた者が足まで描き足し、蛇ではなくなったとして酒を取られた。
故事成語「推敲」の意味と、もとになった人物は?
詩や文章の字句を何度も練り直すこと。唐の詩人賈島(かとう)の故事。
「僧は推す月下の門」の「推す」を「敲く」にするか迷い、韓愈に「敲く」がよいと言われた。
故事成語「杞憂」の意味と出典は?
あれこれと無用な心配をすること。取り越し苦労。出典は列子。
杞の国の人が、天が落ちてこないかと心配して眠れなかった。
故事成語「完璧」の意味と出典は?
欠点がまったくないこと。出典は史記(廉頗藺相如列伝)。
藺相如が秦に持って行った名玉「和氏の璧」を、傷一つ付けずに趙へ持ち帰った(璧を完うす)。
故事成語「臥薪嘗胆」の意味と、もとになった二人の王は?
目的を果たすために、長い間つらい苦労を重ねること。呉王夫差と越王勾践の故事(十八史略)。
夫差は薪の上に寝て父の仇を忘れず、敗れた勾践は苦い胆をなめて恥を忘れなかった。
故事成語「呉越同舟」の意味と出典は?
仲の悪い者どうしが同じ場所に居合わせること。また、共通の困難には協力し合うこと。出典は孫子。
敵どうしの呉と越の人でも、同じ舟で嵐にあえば助け合う。
故事成語「四面楚歌」の意味と出典は?
周りがすべて敵や反対者で、孤立して助けがないこと。出典は史記(項羽本紀)。
垓下で漢軍に囲まれた項羽が、四方から楚の歌を聞き、楚の民までが漢に降ったと嘆いた。
故事成語「背水の陣」の意味と出典は?
退路を断ち、失敗すれば後がない覚悟で事に当たること。出典は史記(淮陰侯列伝)。
漢の韓信が、わざと川を背にして陣を敷き、兵に死にものぐるいで戦わせて勝った。
故事成語「助長」の本来の意味と出典は?
よけいな手助けをして、かえって害を与えること。出典は孟子。
宋の人が苗の伸びを助けようと引っぱり、苗を枯らした。今は「ある傾向(多くは好ましくない傾向)をいっそう強める」意味でも使う。
故事成語「塞翁が馬」の意味と出典は?
人生の幸不幸は移り変わり、予測できないこと。出典は淮南子。
塞(とりで)に住む老人の馬が逃げ、名馬を連れて戻り、息子がその馬から落ちて足を折り、そのため戦に行かずに済んだ。
「温故知新」の意味と出典は?
昔のことを調べ直して、そこから新しい知識や見方を得ること。出典は論語。
書き下し文は「故きを温めて新しきを知る」。
2. 古典の一節から今に残る言葉
根拠: 学習指導要領 言語文化-(2)-ウ
日本の古典の有名な一節は、冒頭の一句だけで作品と考え方を指す言葉になっています。
「花は盛りに、月はくまなきをのみ見るものかは」は、どの作品の一節か? また、どういう意味か?
徒然草(兼好法師)。桜は満開のときだけを、月は曇りのないときだけを見るものだろうか(いや、そうではない)。
散りぎわや雲に隠れた月にも趣がある、という見方。
方丈記の書き出し「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」は、何を何にたとえた一節か?
世の中の人とその住まいが絶えず移り変わり、とどまらないこと(無常)を、流れ続けながら水が入れ替わっていく川にたとえている。
川の流れは絶えないが、そこにある水はもとの水ではない。