剰余金の配当
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
出題区分表 第四 4「剰余金の配当など」ア。
区分表で ※ が付いている項目です。注 4 の定義では
「本来的には上級に属するが、当該下級においても簡易な内容のものを出題する趣旨」。
3 級では、配当と利益準備金の積立てを 1 本の仕訳で書ければ足ります。
0. どういう処理か
配当は、稼いだ利益を株主に分配することです。ただし社長の一存では決められません。
利益は株主のものなので、株主総会の決議が要ります。
そのため、処理が 2 段階に分かれます。
| 時点 | 何が起きたか | 仕訳 |
|---|---|---|
| 株主総会の決議日 | 「配当する」と決まった(まだ払っていない) | 繰越利益剰余金を減らし、未払配当金(負債)を立てる |
| 支払日 | 実際に払った | 未払配当金を減らし、預金などを減らす |
決議した時点で、会社には払う義務が生じています。だから未払配当金は負債です。
そして決議のときには、配当と同時に利益準備金を積み立てます(→ 利益剰余金)。
配当で会社の財産が出ていくぶん、一定額を会社に留め置かせる仕組みです。
利益準備金の積立額 = 配当金 × 10 分の 1
したがって、繰越利益剰余金から減るのは配当金 + 積立額の合計です。
引っかけの分かれ目は次の 3 つ。
- 決議日と支払日で仕訳が分かれる(決議だけでは現金は動かない)
- 繰越利益剰余金は配当金より多く減る(利益準備金の分だけ多い)
- 未払配当金は負債(資本の勘定ではない)
1. 株主総会での決議
根拠: 出題区分表 四-4-ア
配当は誰が決める?
株主総会
利益は株主のものなので、その分配は株主自身が決議する。
決算のたびに開かれる定時株主総会で決める。
株主総会で配当金 ¥500,000 が決議された(利益準備金 ¥50,000 を積み立てる)。
仕訳は?
仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 繰越利益剰余金 550,000 | 未払配当金 500,000 |
| 利益準備金 50,000 |
繰越利益剰余金は 550,000 減る(配当金+積立額)。
決議しただけなので、現金はまだ動かない。
なぜ決議の時点では現金勘定が出てこない?
決議は「払うと決めた」だけで、まだ払っていないから
決めた時点で払う義務(負債)が生じるので、
未払配当金を立てて記録する。
未払配当金は、どの分類の勘定?
負債
株主に対して支払う義務。
「配当」という言葉から資本の勘定と思いやすいが、
支払う義務なので負債。
利益準備金の積立額はどう計算する?
配当金 × 10 分の 1
配当で財産が出ていくぶん、一定額を会社に留め置かせるため。
3 級ではこの計算だけができればよい。
配当金 ¥800,000 を決議した。利益準備金の積立額と、
繰越利益剰余金の減少額は?
繰越利益剰余金の減少額は?
- 利益準備金 … ¥80,000(800,000 × 1/10)
- 繰越利益剰余金 … ¥880,000(800,000 + 80,000)
繰越利益剰余金は配当金より多く減る。
配当金の額だけを引くのが典型的な誤り。
利益準備金の積立てには上限がある?
ある(資本金の 4 分の 1 まで)
そこまで積み上がれば、それ以上の積立ては要らない。
ただし 3 級(※ 付き=簡易な内容)では、
配当金の 10 分の 1 をそのまま積む問題が出る。
2. 配当金の支払い
根拠: 出題区分表 四-4-ア
先に決議した配当金 ¥500,000 を、当座預金から支払った。仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 未払配当金 500,000 | 当座預金 500,000 |
決議時に立てた負債を消す。
繰越利益剰余金はここでは動かない(決議時にすでに減らしている)。
支払時に繰越利益剰余金を減らしてしまうと、何が起きる?
二重に減ってしまう
決議時にすでに減らしているため。
減らすのは決議時 1 回だけ。支払時に動くのは未払配当金と預金。
決議から支払いまでに決算をまたいだ場合、
未払配当金は貸借対照表に載る?
未払配当金は貸借対照表に載る?
載る(負債として)
まだ払っていない義務なので、決算日に残高があれば負債に計上する。
3. 損失が出ている場合
根拠: 出題区分表 四-4-ア
繰越利益剰余金が借方残高(マイナス)のとき、配当はできる?
できない
配当は稼いだ利益の分配なので、分配する利益が無ければ行えない。
損失が続いた会社が配当できないのは、この制約による。
当期純損失 ¥60,000 を振り替える仕訳は?
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 繰越利益剰余金 60,000 | 損益 60,000 |
損失は資本の減少なので借方へ。
過去の利益が足りなければ、繰越利益剰余金は借方残高になる。
株主総会では、配当のほかに何を決議する?
利益準備金の積立て、および剰余金の処分
3 級では、配当と積立てを同時に決議する形で出題される。
処分の内訳は「配当金」「利益準備金」の 2 つだけ覚えればよい。