形成体と誘導
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
根拠は高等学校学習指導要領(平成30年告示)「生物」の内容 (3) ア (イ) ㋑「発生と遺伝子発現」。
内容の取扱いは「動物の配偶子形成、受精、卵割、形成体と誘導、細胞分化と形態形成、器官分化の
始まりについても触れること」を求めている。
0. どういう論点か
胚のある部分が、となりの部分に働きかけて何になるかを決めることがあります。
これが 誘導 で、働きかける側を 形成体(オーガナイザー) といいます。
| 用語 | 何を指すか |
|---|---|
| 形成体 | 誘導する側の領域 |
| 誘導 | 接した組織の分化の方向を決めるはたらき |
| 反応能 | 誘導を受け取れる状態にあること |
引っかけの分かれ目は次の 3 つ。
- 誘導される側に反応能が無いと何も起こらない(形成体だけでは決まらない)
- 誘導は 1 回で終わらない(誘導の連鎖で器官ができていく)
- 原口背唇部は「移植すると二次胚を作る」(自分が背側になるのではなく、相手を変える)
1. シュペーマンの実験
根拠: 学習指導要領 生物-(3)-ア-(イ)-㋑
胚のある領域が、接する領域の分化の方向を決めるはたらきを何という?
誘導
働きかける側を形成体(オーガナイザー)という。
イモリの原腸胚で、形成体として働くのはどの部分?
原口背唇部
シュペーマンが移植実験で見いだした。
原口背唇部を別の胚の腹側に移植すると、何が起こる?
移植された場所に、もう 1 つの胚(二次胚)ができる
移植片自身が体になるのではなく、周りの細胞を誘導して作らせる。
初期原腸胚の予定表皮と予定神経の領域を入れ替えると、どうなる?
移植した先の場所に応じたものになる
この時期はまだ運命が決まっていない。
後期神経胚で同じ交換移植をすると、どうなる?
移植前の運命どおりのものになる
この時期にはすでに運命が決定している。
形成体の働きかけを受け取れる状態にあることを何という?
反応能
反応能が無ければ、誘導されても分化は起こらない。
2. 誘導の連鎖
根拠: 学習指導要領 生物-(3)-ア-(イ)-㋑
眼ができる過程が、誘導が次々に連なる例として定番です。
神経管の前方がふくらんでできる、眼のもとになる構造は?
眼胞
のちにくぼんで眼杯になる。
眼杯は、接している表皮に何を誘導する?
水晶体(レンズ)
眼杯が形成体として働く。
できた水晶体は、さらに何を誘導する?
角膜
誘導された組織が、次の形成体になる。
このように誘導が次々に起こることを何という?
誘導の連鎖
1 回の誘導では器官はできあがらない。
中胚葉が誘導されるのは、いつ・どこから?
胞胚期に、植物極側の細胞が接する赤道付近の細胞を誘導する(中胚葉誘導)
こうしてできた中胚葉の一部が原口背唇部になる。
誘導は、細胞どうしが物理的に接していないと起こらない?
接していなくても、分泌された物質(誘導物質)によって起こりうる
誘導のシグナルはタンパク質として伝わる。
3. 誘導と遺伝子発現
根拠: 学習指導要領 生物-(3)-ア-(イ)-㋑
誘導を受けた細胞では、何が変わる?
発現する遺伝子の組合せが変わる
その結果、作られるタンパク質が変わり、細胞の性質が変わる。
誘導のしくみを、遺伝子発現の言葉で 1 行にすると?
誘導物質が受容体に結合し、転写調節因子を通して特定の遺伝子を発現させる
外からの合図が、最後は転写の調節に変換される。
形成体が働けるのは、その細胞が何をしているから?
誘導物質となるタンパク質の遺伝子を発現しているから
形成体であること自体が、遺伝子発現の結果である。
同じ誘導物質でも、受け取る側によって結果が変わることがあるのはなぜ?
受け取る側がもつ受容体や転写調節因子が違うから
これが反応能の正体にあたる。