平面運動の速度と加速度
このノートの問いがそのまま復習カードになり、忘れかけたころに出題されます。
学習指導要領 物理 (1) ア (ア) ㋐「平面内を運動する物体の運動について理解すること。」。
0. どういうまとまりか
物理基礎では、一直線上の運動を、正の向きを決めて符号つきの数で表しました。平面内を曲がりながら進む運動では、向きが 2 通りでは足りません。
そこで、変位・速度・加速度をベクトル(大きさと向きをもつ量)として表します。
ベクトルは、直交する 軸と 軸の方向の成分に分ければ、成分ごとに物理基礎の直線運動と同じ扱いができます。このノートは、その土台を作ります。
| 量 | 定義 | 向き |
|---|---|---|
| 変位 | はじめの位置から終わりの位置へ引いた矢印 | はじめの位置から終わりの位置へ向かう向き |
| 平均の速度 | 変位と同じ向き | |
| 瞬間の速度 | をきわめて短くしたときの平均の速度 | 軌道の接線方向 |
| 加速度 | 速度の変化 と同じ向き |
分かれ目は次の 3 つ。
- 変位・速度・加速度はベクトルで、成分に分けて扱う。 成分どうし、 成分どうしで、直線運動のときと同じ計算をする
- 速度の向きは軌道の接線方向。加速度の向きは速度の向きではなく、速度の「変化」の向き
- 速さが一定でも、向きが変われば加速度がある。速度はベクトルなので、向きの変化も速度の変化である
1. 変位とベクトルの成分
根拠: 学習指導要領 物理-(1)-ア-(ア)-㋐
平面内の運動では、「どれだけ」だけでなく「どの向きに」を同時に表す必要があります。そのための道具がベクトルと成分です。
平面内の運動で、変位・速度・加速度はどんな量として表すか?
ベクトル(大きさと向きをもつ量)として表す
のように矢印を付けて書く。矢印を付けない は、その大きさ(速度なら速さ)を表す。
平面内の運動で、変位と道のりはどう違うか?
変位は、はじめの位置から終わりの位置へ引いた矢印(ベクトル)。道のりは、実際に通った経路に沿った長さ
曲がって進むと、変位の大きさは道のりより小さくなる。両者が等しいのは、向きを変えずに一直線に進んだときだけ。
大きさ のベクトルが、 軸の正の向きと角 をなしている。 成分と 成分は?
、
ベクトルを対角線とする長方形を描くと、 軸に沿った辺が 成分、 軸に沿った辺が 成分になる。成分は、軸の負の向きを向くときは負の値になる。
成分 、 が分かっているベクトルの、大きさと向きはどう求めるか?
大きさは 。向きは、 軸の正の向きとなす角を として
大きさは三平方の定理から出る。例えば成分が と なら、大きさは である。
2. 速度
根拠: 学習指導要領 物理-(1)-ア-(ア)-㋐
速度は「変位を時間で割ったもの」で、変位がベクトルなので速度もベクトルになります。平均の速度と瞬間の速度で、向きの決まり方が違います。
平面内の運動で、平均の速度はどう定義されるか? その向きは?
時間 の間の変位を として、。向きは変位 の向き
道のりを時間で割ったものは「平均の速さ」で、曲がって進む運動では平均の速度の大きさより大きくなる。
平面内の運動で、瞬間の速度とは?
時間 をきわめて短くとったときの平均の速度
を短くしていくと、変位の矢印は軌道に沿うようになる。ふつう「速度」と言えば、この瞬間の速度を指す。
曲線を描いて運動する物体の、ある点での速度の向きは?
その点での軌道の接線方向
円形の軌道を回っている物体の糸が切れると、物体は切れた点での接線の方向へ飛んでいく。
平面内の運動で、速度の 成分と 成分はどう求めるか?
変位の成分を時間で割る。、
方向だけ、 方向だけを見れば、それぞれ直線運動として扱える。平面運動を 2 つの直線運動に分けることが、この単元の基本の考え方である。
3. 加速度
根拠: 学習指導要領 物理-(1)-ア-(ア)-㋐
加速度は「速度の変化を時間で割ったもの」です。速度がベクトルなので、変化もベクトルの引き算で求めます。
平面内の運動で、加速度はどう定義されるか? その向きは?
時間 の間の速度の変化を として、。向きは速度の変化 の向き
加速度の向きは、速度の向き(進む向き)と同じとは限らない。成分で書けば 、 である。
速度が から に変わった。速度の変化 はどう求めるか?
(あとの速度から、はじめの速度を引く)。成分ごとに引き算する
図では、2 つの速度の矢印の始点をそろえ、 の先から の先へ引いた矢印が になる。
速さが一定の運動でも、加速度が 0 でないのはどんなときか?
速度の向きが変わるとき(曲がって進むとき)
速度はベクトルなので、大きさが同じでも向きが変われば は 0 でない。一定の速さでカーブを曲がる自動車は、加速度をもっている。
加速度の向きが速度の向きと同じ直線上にあるときと、そうでないときとで、運動はどう違うか?
同じ直線上(同じ向きか逆向き)なら、速さだけが変わる直線運動。同じ直線上になければ、速度の向きが変わる曲線運動
投げ出された物体は、鉛直下向きの加速度を受け続けるので、速度が鉛直でないかぎり曲線を描く。
加速度が一定の平面運動で、時刻 の速度と位置の成分は、どんな式で書けるか?(時刻 0 に原点にあり、初速度の成分は 、、加速度の成分は 、)
方向は 、。 方向は 、
等加速度直線運動の式を、成分ごとにそのまま使う。2 つの方向をつなぐのは、共通の時刻 だけである。
練習問題
根拠: 学習指導要領 物理-(1)-ア-(ア)-㋐
問 1 ある人が、東向きに 進み、続けて北向きに 進んだ。全体で かかった。(1) 道のりと、変位の大きさを求めよ。(2) 平均の速さと、平均の速度の大きさを求めよ。
(1) 道のり 、変位の大きさ (2) 平均の速さ 、平均の速度の大きさ
方針 道のりは通った経路の長さ、変位は出発点から到着点へ引いた矢印である。東向きと北向きは垂直なので、変位の大きさは三平方の定理で求める。平均の速さは道のりを、平均の速度は変位を、時間で割る。
- (1) 道のりは、進んだ長さの合計なので、
- 変位は、東向きの成分が 、北向きの成分が のベクトル。大きさは
- (2) 平均の速さは、道のりを時間で割って、
- 平均の速度の大きさは、変位の大きさを時間で割って、
ここで間違えやすい 平均の速度を道のりから と答えてしまうこと。速度は変位から求める。
問 2 物体が、 軸の正の向きから 軸の正の向きへ 傾いた向きに、速さ で進んでいる。速度の 成分と 成分を求めよ。、 とする。
成分 、 成分
方針 速度のベクトルを対角線とする長方形を考える。 軸となす角が なので、 成分は 、 成分は になる。
- 成分は 。値を入れると、
- 成分は 。値を入れると、
ここで間違えやすい と を逆にしてしまうこと。角をはさむ側の軸(ここでは 軸)の成分が である。
問 3 ある物体の速度は、はじめ 軸の正の向きに だった。 後には、 軸の正の向きに になっていた。この間の平均の加速度の 成分、 成分と、大きさを求めよ。
成分 、 成分 、大きさ
方針 加速度は速度の変化を時間で割ったもの。速度を成分で書き、成分ごとに「あと − はじめ」を計算してから時間で割る。大きさは最後に三平方の定理で求める。
- はじめの速度の成分は 、。あとの速度の成分は 、
- 速度の変化の 成分は、
- 速度の変化の 成分は、
- 時間で割ると、加速度の 成分は
- 同じく、加速度の 成分は
- 大きさは、
ここで間違えやすい 速さの差 から加速度を求めてしまうこと。向きが変わっているので、成分ごとに引かなければならない。
問 4 自動車が、東向きに速さ で進んでいた。カーブを曲がり、 後には、同じ速さ で北向きに進んでいた。(1) この間の速度の変化の大きさと向きを求めよ。(2) 平均の加速度の大きさを求めよ。 とする。
(1) 大きさ 、向きは北西向き (2)
方針 速さは変わっていないが、向きが変わっているので速度は変化している。東向きを 軸の正の向き、北向きを 軸の正の向きとして、成分ごとに「あと − はじめ」を計算する。
- はじめの速度の成分は 、あとの速度の成分は (単位は )
- 速度の変化の 成分は、(西向きに )
- 速度の変化の 成分は、(北向きに )
- (1) 西向きと北向きの成分が等しいので、向きは北西向き。大きさは、1 辺 の正方形の対角線にあたるので
- 値を入れると、
- (2) 平均の加速度の大きさは、速度の変化の大きさを時間で割って、
ここで間違えやすい 「速さが変わっていないから加速度は 0」と答えてしまうこと。
問 5 物体が、時刻 0 に原点を 軸の正の向きに速さ で通過した。物体はその後、 軸の正の向きに大きさ の一定の加速度で運動した。時刻 について、(1) 速度の成分と速さ、(2) 位置の座標を求めよ。
(1) 成分 、 成分 、速さ (2) 、
方針 加速度は 方向だけなので、 方向は等速直線運動、 方向は初速度 0 の等加速度直線運動として、別々に式を立てる。速さは成分から三平方の定理で求める。
- 方向は加速度が 0 なので、速度の 成分は のまま変わらない。
- 方向は 。値を入れると、
- (1) 速さは、
- (2) 方向は等速なので 。値を入れると、
- 方向は 。値を入れると、